今、ペレストロイカについて――ゴルバチョフ元ソ連大統領の特別寄稿

ソ連では、国と世界を変貌させる改革が始まりました。歴史は、7年足らずというその尺度からすれば僅かな期間をペレストロイカに割り当てました。けれども、それに関する議論は、今も熄んでいません。当時何がそして何故起きたのかを詳らかにし、ペレストロイカを理解すること、これは、今日重要かつ必要である、と私は確信しています。

 

 

大改革の背景

 

ペレストロイカは、何よりもまず、20世紀の最後の数十年間に国が直面していた歴史的な挑戦への応えでした。1980年代半ば、国は、自国の発展における困難な時期を歩んでいました。

 

中央集権化された行政指令システムは、国民の発意を縛り、経済を“拘束服”で抑え、それでもやはり発意を現そうとする人々を罰し、厳しく罰したのでした。

 

その結果、1980年代初め頃には、わが国の労働の生産性は、先進諸国と比べて、工業においては5分の2、農業においては4分の1となっていました。経済は、軍事化されており、軍拡競争の重荷を負うのがますます苦しい状態でした。

 

私は、私たちは名誉や栄光のために変革へ踏み切ったのではない、なぜなら、私たちは国民がよりよい生活とより大きな自由に値することを理解していたから、と言うことができます。

 

その一方、私たちは、相互に関連し依存する世界で進行中の全世界的なプロセスの一部としてペレストロイカを見ていました。

 

 

グラスノスチ

 

ペレストロイカの最も重要なツールとなったのは、グラスノスチ(公開性)でした。グラスノスチとは、いったい何でしょう?それは、もちろん、言論の自由です。人々は、検閲や弾圧を怖れずに切実な問題について公然と語り自身の意見を述べる可能性を得ました。けれども、グラスノスチ、これは、さらに国家の行動における公開性でもあり、これは、自らの決定を説明し国民の意見を尊重することを指導部に対して求める要求でもあるのです。

 

グラスノスチは、社会を揺り動かし、国の指導部の目を多くのものに対して開かせました。私たちは、国民がより速やかな進展を欲しているのを目の当たりにしました。1988年、党の会議で、オルタナティヴな原則に基づいた(選択の余地のある)最高権力機関選挙の実施に関する決定が採択されました。これは、民主主義へ向けた極めて重要な一歩でした。

 

当初は、文字通り凡ての人が、変革を支持していました。けれども、その後、大胆とはいえ進化的な変革を目指す路線が、凡ての人を満足させているわけではまったくない、ということが分かりました。大衆においても、指導部においても、いわゆる「エリート」層においても。

 

 

急進派と保守派のはざまで

 

一方では、分離主義者たちと繋がっていた急進派の人々が、大衆とりわけインテリ層の焦燥を感じつつ、「凡てを根底から破壊すること(『インターナショナル』のロシア語歌詞の捩り)」を要求し、一~二年後にはこの国に地上の楽園が訪れるという無責任で実現不可能な約束を大衆に対して行いました。

 

もう一方には、過去に留まり、現実的な変化を怖れ、国民の自由な選択を信用せず、既得の特権にしがみついている、保守派の人々がおり、まさに、彼らが、開かれた政治闘争に敗れ、1991年8月、国の大統領としての私の立場を弱めて数ヶ月後に連邦を崩壊させた急進的な勢力に道を開く結果となるクーデターへ踏み切ったのでした。

 

8月クーデターそして連邦崩壊

 

私は、政治的な手段によって連邦国家の存続を目指して闘っていました。政治的な、という点を、強調しておきます。私にとって、国を内戦の瀬戸際に立たせかねない武力の行使は、受け入れられないものでした。

 

クーデターの敗北において肯定的な役割を演じたロシアのボリス・エリツィン大統領は、裏表のある立場を取っていました。ロシアとウクライナとベラルーシの首脳が連邦の崩壊を宣言したベルベージの森での会議は、秘密裡に準備され実施されました。

 

私は、最大限の経済の脱中央集権化および共和国への極めて幅広い権限の供与に同意する用意がありました。けれども、まったく別の決定が、ロシア議会の拍手喝采のもとで採択されました。その結果、凡ての関係が、そして、連邦国家の一元的な防衛といった極めて重要な財産さえも、潰え去りました。

 

 

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