刑務所がテロリストの「聖地」に――東南アジアに広がるISILの影響とは?

シリアへ向かうIS支持者たち

 

荻上 そうした中で、スマートフォンなどを使って外部のISILと繋がり、具体的な作戦や細かいことも詰めていくわけですよね。

 

竹田 はい。ISの側はシリアにバルン・ナイムという情報担当の若手指導者がいます。彼がFacebookやブログを通じて、連日インドネシアに向けて「シリアに来ないか」と呼びかけているんですね。シリアの首都ラッカがどれほど素晴らしい街か、また多国籍のIS戦闘員が異教徒と戦っていると実況放送を含めながら動画で配信しています。

 

それでインドネシアの若者がスマホを通じて影響を受けるわけです。シリア

の場合、ISの戦闘員は日割りで給料がもらえるとよく言われます。するとシリアにいけばお金儲けができると思う人もいるし、イデオロギー上は死後の世界に憧れる人もいるし、さまざまな動機でシリアに行く。

 

たとえば最近、トルコ政府が200人のインドネシア人に対して入国拒否しました。彼らはトルコのイスタンブールを経由してシリアに向かう途中だったので、テロリストにリンクする危険性があると判断したわけです。非常に衝撃的なのは、実はこのうちの半分は女性や15歳以下の子供でした。

 

なぜ女性が子供を連れていくのか。一つの考えは、夫が単身赴任で既にシリアに行っており、その後を追っかけている。もう一つは、インドネシアにいる未亡人が新しい生活を見出すためにシリアに行く。さまざまな動機がありますが、やはりネット空間で簡単にリンクできてしまう点が大きいのだと思います。

 

 

求められるテロ対策とは

 

荻上 警察を何万人も配置するより、刑務所の周りのWiFiの電源を切ることの方がテロ対策としてはより効果的なのではないですか?

 

竹田 たしかにそうなのですが、目の前の問題をすぐ解決できないのがインドネシアという国なのです。たとえば、ジャカルタでは常に大渋滞です。本来であれば空港からジャカルタ市内まで1時間くらいで行ける距離なのですが、3時間前後かかります。夜に雨が降っていた時のワースト記録は、6時間だったそうです。高速道路が渋滞することは誰もが分かっているわけですから、なぜもう一本作らないのかと思いますよね。それをしないわけです。

 

荻上 それは財政上、厳しいということですか。

 

竹田 財政の問題もあるかもしれませんが、今のままの方がお金を儲けられる人もいて、さまざまな利権があるのだと思います。だから解決しない、もしくはできない。たとえば、ジャカルタの国際空港はすごく古くて、東南アジアの他の近代的な空港と比べると非常に前近代的な感じです。私も最初は古臭いなと思ったのですが、何度も行っている間にこのままでも味があって良いのではないかと思うようになるんです。

 

シンガポールのように全員が近代化を追わなくても良いじゃないか。インドネシアのようにスローペースで、目の前の問題を少しずつ解決していく国もあって良いじゃないかと、交通渋滞にどっぷり浸かって、私自身が変わってきました。それくらい考えないとやっていけません。

 

荻上 なるほど。同じように、テロ対策で分かっている部分に対しても力を注げない面があるわけですね。

 

竹田 今回の事件もそうですが、インドネシアの過激派はJIが壊滅される前から同じ人脈で繋がっているのです。精神的指導者はずっと同じなんですね。過激派の長老、アブバカル・バアシルはJIの精神的指導者であり、バリ島の爆弾テロ事件の時もリーダーでしたから。しかし、テロの実行犯ではないので処刑されないんですね。若手のテロリストを育成し、影響力を行使してテロリストを生み出す。ですから、旧来的なネットワークが続いているのです。その中からいくつかのグループが出来てきます。

 

荻上 そうしたことが分かっていながらも対処できないという現実、歯がゆくもありますよね。

 

竹田 そうですね。現在、インドネシアを含め東南アジア全域でイスラム教徒が多い国はフィリピンとマレーシアです。これらの国でも、ひょっとするとジャカルタのテロ事件のようなことが起きるかもしれないと危惧しています。

 

荻上 ネットワークが国境を越えて広がっていくということですか。

 

竹田 はい。すでに、フィリピンやマレーシアからシリアのISへ渡航する人々が出てきていますから、自分たちの国に戻ってきて事件を起こすのではないかと考えられます。今回の実行犯の場合はシリアに行っていない、ホームグローン型(自国で育った)のテロリストですが。

 

荻上 テロ対策となると単純に何が問題だと還元はできないものの、やはり各国が同時期に、国ごとの固有の課題にしっかり向き合っていかなければ、テロの拡大を防ぐことは難しいわけですか。

 

竹田 そうです。インドネシアが今やるべきことは何かというと、まずは刑務所の管理体制の改善です。これをしっかり取り組まなければなりません。あとはテロリストの出所後のフォローです。現在、こうしたことは行われていないので、受刑者が出所後にまたグループを組んで、さらに過激化してしまう。今回の事件もそうでした。

 

荻上 なるほど。そうした悪い循環を断つことがまずは重要だということですね。

 

 

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