日本とウクライナ――「積極的平和主義」を掲げる安倍政権のウクライナ支援

2018年は、日本とウクライナが1992年に国交を樹立してから、26周年を迎える。昨年2017年は、「ウクライナにおける日本年」とされ、両国の関係は徐々に深まってきている。また、主要外交戦略として「積極的平和主義」を掲げた日本は、ロシアによるクリミア半島の併合とウクライナ東部での軍事活動を受け、ウクライナに対して積極的に政治的かつ経済的な支援を行うようになった。

 

日本がウクライナという遠い国を支援している理由は何なのか、日本とウクライナとの関係の緊密化はグローバルな文脈でどのような意味があるのかと思う人もいるだろう。日本とウクライナとの関係の歴史に触れ、国際政治の文脈において、その二つの質問に答えてみたいと思う。

 

 

100年以上続く日本とウクライナの関係

 

ウクライナは日本人には「穀倉の地帯」や「チェルノブイリ事故があったところ」などとして知られているが、日本人とウクライナ人は20世紀の初めから交流があったことはご存知だろうか。当時のウクライナはロシア帝国の一部であったが、1902年から1934年まで現在のウクライナのオデッサ市には日本領事館があった。

 

また、20世紀の初めにロシア極東に移民したウクライナ人は、満州にも移動し「緑のくさび(緑ウクライナ)」と言う名の植民地を成立させた。そこで日本人との交流が開始され、政治的な理由などから、ウクライナ人の文化的な活動は日本人にとても歓迎された。それに限らず、日本とウクライナには多くの文化交流があった。1910年代から1920年代にかけて、ヴァスィリー・エロシェンコというウクライナ詩人が日本に住んで活躍していた。また、後に日本の第47代総理大臣となる芦田均は、1917年にウクライナを訪れ、「革命前夜のロシア」という回想録を残している。

 

第二次世界大戦後、日本とウクライナとの人的交流はさらに緊密になり、1965年にはオデッサと横浜、1971年にはキエフと京都が姉妹都市となった。1986年にチェルノブイリ事故が起きた後、ウクライナ人は日本の民間基金から援助を受け始め、現在まで続くとても重要な二国間協力が始まった。

 

 

ウクライナ独立後の日本とウクライナとの関係

 

ウクライナは1991年に独立し、1992年に日本と公式に外交関係が成立した。1993年には、在ウクライナ日本大使館が、1994年には在東京ウクライナ大使館が開設された。その当時、日本のウクライナに対する政策は、旧ソ地域における戦略の一環となっており、核兵器の廃棄をめぐる支援と経済援助を主な協力分野としていた。

 

1995年には、クチマウクライナ大統領が訪日し、首脳レベルでの政治的対話が開始された。オレンジ革命を経たユーシチェンコ大統領も2005年に日本を訪れ、ウクライナの民主的なイメージを広めた。1996年には池田行彦外相、2004には川口順子外相がウクライナを公式訪問した。このような交流の結果、二国間関係の基盤が整備され、ウクライナに日本の政府開発援助が提供されるようになった。

 

2006年、日本は「自由と繁栄の弧」という外交の新機軸を発表し、「GUAM(注1)+ 日本」が設立された。その結果、日本とウクライナはともに民主国家として協力する体制がさらに強化された。2006年麻生太郎外相がウクライナを訪れ、2011年にヤヌコビチ大統領が日本を公式訪問し、「グローバルなパートナーシップ」に関する共同声明が署名された。また、東日本大震災と福島第一原発事故が起きると、ウクライナ政府は日本に放射線測定器や防護マスクなどを送り、ウクライナの放射能学者から日本に対して知識の共有が始まった。

 

(注1)ジョージア、 ウクライナ、アゼルバイジャンとモルドバの4カ国による国際機関。

 

 

転機となったクリミア危機

 

このように徐々に深化してきた日本・ウクライナ関係だが、二国間関係が一番緊密になったのは、2014年に勃発したクリミア危機の後である。日本政府はウクライナにおけるロシアの行為を批判し、ウクライナの主権および領土の一体性をサポートした。また、ロシア連邦によるクリミア半島の一時的占領を認めず、ロシアに対する制裁を導入した。

 

さらに、G7でウクライナについての議論をリードし、ロシアを侵略国とする国連総会決議を支援した。具体的には、日本は「ウクライナの領土一体性」に関する2014年3月27日付の国連総会決議、「クリミア自治共和国とセヴァストポリ市(ウクライナ)における人権状況」に関する2016年12月19日付の決議、および2017年12月19日付の改正バージョンを共同提案国として支持した。

 

ウクライナへの侵攻が始まって以来、日本はウクライナに対し、民主主義の強化、国内改革の推進、クリミア半島、ドネツク州、ルハーンシク州 からの国内難民への支援、インフラの改善、産業施設の近代化などを目的として、金融、技術、人道的支援を積極的に行ってきた。2014年以降、日本政府はウクライナに対してクレジットを含めて約18億ドルの支援を提供した。

 

首脳会談に関しては、2015年に安倍首相は初めて日本の総理大臣としてウクライナを訪問し、2016年にウクライナのポロシェンコ大統領は日本訪問を行った。【次ページにつづく】

 

 

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