日本とウクライナ――「積極的平和主義」を掲げる安倍政権のウクライナ支援

両国に大きな意味を持つ日本のウクライナ支援

 

こういった日本のウクライナへの包括的な支援は、とても大切なものだ。まずウクライナにとって、現代の大国の一つである日本の支援を受けるのは、クリミア半島の返還、経済的な回復およびウクライナ東部での人道危機の予防にきわめて大きな意味がある。

 

一方、日本にとっては、ウクライナを支援することに、どうような意義があるのだろう。第一に、それは日本の新しい政策の成果であると言えよう。

 

第二次世界大戦後、日米同盟が成立し、日本は安全保障の対米依存、経済通商の重視および軽軍備の要素からなる吉田ドクトリンを導入した。それは日本の国際社会への復帰と経済発展に大きく貢献したが、国際舞台における日本の存在感の薄さに繋がった。1957年、日本は「国際連合中心」「自由主義諸国との協調」および「アジアの一員としての立場の堅持」という外交の三原則を打ち出した。だが、実際には冷戦が終わるまで、「自由主義諸国との協調」とは対米協調であり、対米関係は日本外交のもっとも大事な課題となっていた。

 

ソ連の解体によって二極システムが崩壊した結果、日本外交の地平が拡大し、日本の首脳は新たな外交の戦略を立てるようになった。そこで、安倍首相がはたした重要な役割を強調したい。2006年に「自由と繁栄の弧」、2013年に「積極的平和主義」というコンセプトが発表され、日本が国際平和に積極的に関与する政策の実現を図るようになった。そうした考え方を背景にして、新たな戦略が実現した結果としてウクライナ支援につながり、日本がグローバル・パワーとしての地位を再確認する機会となったといえよう。

 

第二に、日本はウクライナとの関係の強化によって、ポスト・ソヴィエト地域における政治的なプロセスの理解をより一層深めることになるだろう。関係強化を通じて、ウクライナのヨーロッパとの長い歴史的関係性が明らかになり、日本はウクライナを旧ソ連ではなく、東欧国として扱うことになるに違いない。最近の「深化した包括的自由貿易協定を含むウクライナとEUとの連合協定」や「ウクライナ人のヨーロッパへ行く際の短期滞在ビザの撤廃」は、それに大きく貢献している。

 

また、ウクライナを含めたポスト・ソヴィエト地域における民主化を支援することで、日本は地域全体を安定させる大事な役割を果たしている。途上国における民主主義の定着で中心的な役割を担っているのは、政府開発援助である。

 

2017年に日本の政府開発援助の実施機関である日本国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長は、初めてジョージア、アルメニアとウクライナを訪問し、ジョージアおよびウクライナにJICAの支所が開設されることになった。ポスト・ソヴィエト地域における日本の国家機関のインフラの拡大および民主化の支援、またウクライナとの関係のさらなる強化は、日本の国益にかない、国際社会においてバランスの取れた外交政策を行う能力を確保するだろう。

 

第三に、ロシアによるクリミア半島の併合を受けて、日本は対ロシア制裁を導入し、ウクライナの領土一体性および主権を支援することで、現在の国際秩序を維持した。領土問題を抱えている日本にとっては、武力行使による国境変更を認めないという国際的な立場を成立させることはとても重要だと言えよう。

 

 

グローバルな文脈における二国間関係

 

ウクライナと日本との関係をグローバルな文脈の立場から見ると、以下の意味合いがある。第一に、両国は法の支配、言論の自由、市場経済といった民主主義的な価値観を共有している。とくに、ロシアによるクリミア半島の一時的占領を、法の支配に基づく国際秩序への挑戦とし、その平和的解決に積極的に努力している。

 

第二に、原発事故を経験したウクライナと日本は(また、日本の場合、原爆の経験もあり)、緊密に協力しながら「核なき世界」を達成しようとしている。そして、原発事故を処理するという経験を持っているこの二つの国は、原発事故へのその後の対応を推進するための協力を促進している。

 

第三に、ウクライナと日本はさまざまな国際問題に取り組んでいる。たとえば、ウクライナ外務省は北朝鮮による核実験およびミサイル発射につき、北朝鮮に対する強い非難をいち早く表明し、両国が緊密に連携していくことで一致している。また、ウクライナと日本は、国連安保理改革の実現のため全力を尽くしている。

 

このような理由から、ともに普遍的価値観を重視している日本とウクライナは、両国の国益にもとづく二国間関係の安定的な発展およびさらなる強化に関心がある。政治的な場面での協力を維持しながら、投資、インフラ、農業、省エネ、文化、国際協力など分野での交流がいっそう積極的になり、ウクライナと日本は戦略的なパートナーシップに向かうことになると期待される。それは世界平和の強化にポジティブな影響があり、ヨーロッパとアジア太平洋地域との接近および民族間の国際理解の深化に繋がるだろう。

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

 

シノドスをサポートしてくれませんか?

 

誰でも自由にアクセスできる本当に価値ある記事を、シノドスは誠実に配信してまいります。シノドスの活動を持続的なものとするために、ぜひファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」のパトロンをご検討ください。⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

無題

 

・人文・社会科学から自然科学、カルチャーまで、各界の気鋭にじっくりインタビュー
・報道等で耳にする気になるテーマをQ&A形式でやさしく解説
・研究者・専門家たちが提案する「こうすれば●●は今よりもっとよくなるはず!」

・人類の英知を伝える「知の巨人」たち
・初学者のための「学びなおしの5冊」

……etc.  

https://synodos.jp/a-synodos

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.244 特集:人間が人間らしく生きるために

・黒﨑真氏インタビュー「「非暴力」という抵抗――キング牧師の戦い」

・志田陽子「人権の21世紀――人権とは、螺旋階段の途中にあり続けるもの」

・要友紀子「出会い系/セックスワーク広告サイト弾圧のナンセンスを圧倒する、トランプ政権下のオンライン・セックスワーク・サバイバル」

・齋藤直子(絵)×岸政彦(文)「「Yeah! めっちゃ平日」第十四回」