K-POPのビジネスモデルは今後どうなるのか?  

今回はこれまでとは少し方向を変えて、具体的なビジネスモデルの話をしてみたい。ただし、ここではトヨタやサムソン(三星)、あるいはハイアールのようなマッチョなビジネスモデルではなく、もっと身近なビジネスモデルに目を向けてみよう。最近話題のK-POPアイドルのビジネスモデルである。

 

 

契約をめぐる事務所との対立

 

いま、ここでこの問題を取り上げるには訳がある。昨年は少女時代、KARAらK-POPの女性アイドルグループが大ブームとなり、新たな韓流を巻き起こしたとまでいわれていたが、そのブームを牽引してきたKARAがまさに今、所属事務所との対立で揺れているのだ。つい先日、5人のメンバーの内4人が、所属事務所との信頼関係が失われたとして専属契約解除を申し出(内1人はその後撤回)、その後事態は収束の兆しをみせているものの、なお先がみえない状況にある。

 

K-POPのアイドルグループのメンバーが契約をめぐって所属事務所と対立するという事態は、これまでにもしばしば起こっている。有名なのは東方神起の事例だろう。東方神起の場合には5人のメンバーのうち3人が、事務所との対立から専属契約の効力停止の仮処分を求めて訴え、結果的にこの3人と事務所に残留した2人とにグループが分裂してしまった。また、男性アイドルグループSuper Juniorにおいても、メンバー1人が専属契約の無効を申し立て、昨年末にその申し立てを認める第1審判決が出ている。

 

これらの問題を引き起こす原因としてしばしば指摘されるのが、K-POPアイドルの長期専属契約と、その背後にあるビジネスモデルなのである。それでは一体、このビジネスモデルはどのようなものであり、なぜ上のような問題を引き起こすのだろうか。そして、上のような問題を考えたときに、そのビジネスモデルは今後も維持可能なものなのだろうか。これらの点を考えてみよう。

 

 

K-POPアイドルグループの育成方法

 

K-POPのアイドルグループは、大雑把にいえば以下のようなプロセスで育成される。まず、オーディションで選ばれたり、スカウトされたりすると、当該事務所にまず練習生というかたちで所属する。練習生の期間は歌やダンスなどのトレーニングを受けるが、その期間はかなり長く、6、 7年に及ぶことも珍しくない。この間、トレーニングにかかる費用はすべて事務所が負担する。その上で、グループを結成してデビューさせる。このような長期に及ぶトレーニングによって、たとえば少女時代やKARAにみられるような完成度の高いパフォーマンスを生み出すことができるわけである。

 

もちろん、すべての練習生がデビューできるわけではなく、またデビューしても売れるとはかぎらない。上のように長期間のトレーニングの費用を事務所が負担するために、個々の練習生にかける費用は決して少なくはないが、それらの練習生のなかでデビューして売れるようになるのはごく一部なのである。

 

こう考えてみると、このようなかたちでのアイドルの養成は、青色LEDのようなまったく新しい製品の開発に似た、リスクの大きい投資なのである。どちらも個々のシーズに対して大きな投資を行うが、その投資のなかで何が成功するのかはわからない。

 

投資をした側はそのようなリスクを取って投資を行っているために、投資が成功すれば、そこからこれまでの投資を(失敗に終わった投資の分も含めて)回収しようとするだろう。一方、実際に開発を行った人々は当然、自分の努力の成果を認めてほしいと考えるだろう。この結果、投資をした側と実際に開発した側との間で争いが起こる可能性がある。かつて世間の注目を集めた青色LED訴訟はこのような争いであると理解できる。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.277 

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・平井和也「ジョージ・フロイド殺害事件から考える米国の人種差別問題」
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