HIVと共に生まれる ―― Ekilooto of Uganda

2012年1月23日、特定非営利活動法人エイズ孤児支援NGO・PLAS主催のトークイベント「Ekilooto of Uganda~HIVと共に生まれる~」が開催された。いまエイズ孤児支援ではなにが必要とされているのか。PLAS事務局長の小島美緒氏とフォトジャーナリスト安田菜津紀氏によるトークの模様をお送りする。(構成/出口優夏)

 

 

HIVを取り巻く現状

 

小島 本日は「Ekilooto of Uganda~HIVと共に生まれる~」と題しまして、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんとともに、ウガンダやカンボジアにおけるHIVやエイズ孤児の現状をお話ししていきたいと思います。

 

安田さんはフォトジャーナリストとして、カンボジアやウガンダでHIVと共に生きる方たちの方を熱心に取材されていますね。彼らはいま、どのような状況におかれているのでしょうか?

 

安田 まず、カンボジアの現状からご説明させていただきます。カンボジアは東南アジアの真ん中に位置している小さな国で、90年代後半まで30年近く内戦がおこなわれていました。内戦によって医療システムの崩壊がおこり、また、貧困層では売買春が蔓延した。その影響で、2000年代初頭には東南アジアでもっともHIVの感染率が高い国になってしまったんですね。その後、HIV対策はかなり進んだのですが、すべての問題が解決したわけではありません。

 

たとえば、貧困層は病院に行くお金も手段も乏しいので、HIVによる病気が進行してもギリギリまで我慢せざるを得ません。そして、病院にいくときにはすでに手遅れになってしまっている。取材のなかで出会った40歳のチャムロンさんもそのひとりでした。

 

一人息子のペイくんが3日間寄り添ったかいもなく、入院4日目の朝にチャムロンさんは息を引き取ったのですが、火葬場からチャムロンさんのご遺骨が出てきたときに、おばあちゃんが「息子がこんなに小さくなってしまった」とわーって泣いていたのがとても印象的でした。エイズに蝕まれたチャムロンさんのご遺骨は片手にほんのわずか乗るくらいしか残らなかった。

 

なぜ、対策が進んできたにもかかわらず、こうした状況は起きてしまうのでしょうか。

 

現在、HIVの症状をおさえる薬は安く入手できるようになり、貧困層の方でも購入できるようになっています。チャムロンさんもその薬を受け取っていました。しかし、HIVの薬というのはとても時間に厳しい。薬の種類にも、あるいはウィルスの種類によっても異なるのですが、たとえば、薬を数回、飲み忘れてしまうと、体内で薬に対する耐性がついてしまい、薬が効かなくなってしまうこともあるんですね。チャムロンさんは時計の文字盤が読めなかったため、薬を時間通りに飲むことができませんでした。

 

この背景にはカンボジアの医療の現状があります。カンボジアでは内戦後、国内に生き残ったお医者さんが40人しかいなかったと言われています。お医者さんの数が少なければ、患者さん一人ひとりにかけられる時間が限られてしまう。だから、薬を渡すことができても、患者がしっかり時間通りに飲んでいるかどうかまでチェックすることは難しいんですね。

 

また、最新の薬が送り込まれてきても、お医者さんの知識不足のために処方できないこともあります。「最新の薬があっても使いこなせる人が育っていない」という医療の現状がカンボジアにおける一番の課題ではないでしょうか。わたしたちは支援の方法を考えていかなければなりませんね。

 

つぎにウガンダのことをお話ししていきたいと思います。ウガンダはカンボジアと同じく内戦がつづいており、政情がかなり不安定な国です。1990年代にはHIV感染率が18%に達するときもありました。その後、国をあげて対策に乗り出したこともあり、いまでは感染率が6%まで低下していますが、それでもまだまだ高水準と言えます。

 

ウガンダでは、国がマスメディアやNGOと連携してHIV予防の啓発活動をおこなっている一方で、海外からの支援金を政府が流用するという汚職事件も発生してしまっています。無料で処方されるはずの薬を、病院関係者や運送人などが転売しているという事例も多くある。そのせいで、病院で処方する薬が品切れになってしまうということも起こっているんですね。ウガンダにおける一番の課題はこうした汚職問題とのたたかいだと思います。

 

 

エイズ孤児の現実

 

小島 現在、全世界ではHIVと共に生きる人が3,400万人を超えると言われています。なかには小さなお子さんを持つ親御さんも多い。彼らがエイズを発症して、亡くなったときに取り残されてしまうのがエイズ孤児です。

 

エイズ孤児はさまざまなリスクを抱えています。たとえば、HIVは性交渉で感染するので、片親だけでなく、両親ともエイズで亡くしてしまう可能性が非常に高い。また、HIVの正しい知識が広まっていないため、エイズ孤児は差別され、村八分の状態にされてしまうことも多くあるんですね。このあとは、そういったエイズ孤児についてお話しをしていきたいと思います。

 

まず、プラスがウガンダで事業をおこなっていくなかで出会ったご家族の例を紹介させていただきます。このご家庭では、娘夫婦をエイズで亡くしてしまい、おばあちゃんがひとりで孫たちを養っています。

 

 

小島さん写真

 

 

こういった家族構成は決して珍しいことではありません。ある家庭では13人の子どもをおばあちゃんひとりで育てていることもありました。また、家の前に置き去りにされていたエイズ孤児を引き取って、わが子同然に育てている家庭もあります。

 

このように、エイズ孤児の子どもたちは、それぞれが悲しみや苦しみを持ちつづけながらも、懸命に生きているわけです。

 

 

 

 

シノドスをサポートしてくれませんか?

 

●シノドスはみなさまのサポートを必要としています。ぜひファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」へのご参加をご検討ください。

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●シノドスがお届けする電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー&Facebookグループ交流「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.254 公共性と社会

1.長谷川陽子「知の巨人たち――ハンナ・アーレント」
2.岸本聡子「公共サービスを取り戻す」
3.斉藤賢爾「ブロックチェーンってなあに?」
4.山岸倫子「貪欲なまでに豊かさを追いかける」