安保理改革を要求したサウディアラビアの非常任理事国辞退

衝撃の辞退表明

 

2013年10月18日、サウディアラビア外務省は、サウディアラビア国営通信を通じて、国連安全保障理事会(安保理)の非常任理事国の席への就任を辞退するとの声明を発表した(以下、「辞退表明」と略す)。前日に安保理は、五カ国の非常任理事国の任期満了にともなう改選選挙を実施し、サウディアラビアは初選出されたばかりであった。

 

選挙過程は問題なく進められており、また安保理非常任理事国の席への就任を辞退した前例はなかったことから、国連関係者の間に衝撃が駆け巡った。

 

サウディアラビア外務省は、辞退を表明する10月18日付声明の中で、辞退の理由を説明した。同声明は、安保理の仕組みと二重基準が憲章に定められた国際の平和と安全を維持する義務の遂行を妨げてしまっていると批判した。そしてパレスチナ問題、中東における大量破壊兵器の拡散問題、シリアのアサド政権による殺戮の三つの問題の解決に失敗してきたと批判した。そこでサウディアラビアは、安保理が改革されるまでは、安保理の席に付く意思がないと表明していた。

 

サウディアラビアの辞退表明は、中東における国際紛争の中には、大国の都合によって解決が試みられる「関与される紛争」と「放置される紛争」が二分されてきたことへのアラブの立場からの抗議である、と言い換えることができる。

 

選出決定直後には、アブドゥッラー・ムーアッリミー・サウディアラビア国連大使が、当選に関して、「サウディアラビアにとって歴史的瞬間である……当選は喜びである」との見解を表わしていた。それから、わずか17時間後に辞意表明が発せられたこととなったわけである。中東政治の複数の専門家が、辞退表明の真意に関して「不可解」との見解を示した。

 

辞退表明を行ったサウディアラビアの真意についてはさまざまな憶測が広がっていたが、11月12日にサウディアラビアは、辞退の正式な申し入れに必要な通告文書を国連事務総長に提出した。これにより、サウディアラビアによる辞退の意思は、事実であると確定されることになった。

 

 

立候補し、当選

 

サウディアラビア政府は、とくに2年前から非常任理事国の座を射止めるための準備を開始した。その一環として選挙の一年以上前から、選挙活動を本格化し、当選に備えてサウディアラビアの外交官は準備してきた。

 

それだけに今回のサウディアラビアによる突然の翻意は、いくつかの国や地域機構が称賛や理解を示したにも関わらず、サウディアラビアの行動は予測しがたいと各国外交官や中東政治専門家の間に印象付ける結果となってしまった。

 

サウディアラビアは辞退表明で安保理を批判したが、おそらく国連の諸機関は、サウディアラビアと以前と同様に共同で業務を継続するであろう。国連は批判を受けやすいが、批判者に対して報復的な行動をとることはない。国連諸機関は、各国にメンバーシップの場を提供し、国際協力を推進し続けるだろう。だが辞退表明が安保理非常任理事国の席に穴を空けたことに関する国連関係者や各国外交官の心象は悪い。

 

それでも日本はサウディアラビアと友好関係を必要としている。日本の石油供給源としてサウディアラビアを代替できる国は、当分、見当たらない見込みである。米国がシェールガスやシェールオイルの増産を目指しているが、日本への輸出がどの程度の規模となるかは未知数である。またサウディアラビアと日本の両国政府は、戦略的パートナーシップとして、石油の輸出入のみに留まらない多層的な両国間関係の構築を目指している。

 

そこで以下では、サウディアラビア外交の目的や特徴を読み解くこととする。同国の外交政策を左右する要因は、中東域内情勢と国内政治の両面にある。現在、サウディアラビアは、イランを第一の脅威と認識している。イランがサウディアラビアの周辺国に反サウディ派の組織を拡大しようとしていると怖れている。その企ての一部が、アサド政権への軍事支援や、バーレーンでのデモの扇動であると見ている。またサウディアラビアは、イランによる核兵器開発を阻止するために全力を尽くす方針である。

 

またイランの脅威と同じ程度にサウディアラビア政府が政策立案の際に考慮する要因は、国内と中東域内での名声の維持の問題である。日本は、中東におけるさまざまな紛争が、サウディアラビア政府の安定性に影響するリスクを正確に理解する必要がある。

 

 

 

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