湖の、ひとつひとつが小宇宙――南極の湖で生きる植物たち

2013年8月6日に出版された『すてきな 地球の果て』(ポプラ社)。世界中を旅し、南極・北極に魅せられた研究者・田邊優貴子さんによる本書は、普段私たちが暮らしている世界とはまったく違う世界が描かれている。そこで今回の「高校生のための教養入門」では、植物生理生態学と陸水学を研究されている田邊先生が、なぜ南極に魅かれたのか、そしてどんな研究をされているのかをお伺いしました。ぜひ『すてきな 地球の果て』とあわせてお読みください!(聞き手・構成/金子昂)

 

 

海以外の水のある環境を研究する

 

―― 最初に田邊先生のご専門についてお話をお聞かせください。

 

私の専門は、大きくわけて植物生理生態学と陸水学のふたつあります。

 

植物生理生態学ですが、一口に植物を研究するといってもいろいろな切り口での研究があります。例えば植物生理学は植物学の一分野なんですが、植物の生理機能(植物の内部でどんなことが起きているのか)を調べる分野です。光合成や呼吸はどのようなシステムで行われているのかとか、タンパク質はどんな構造になっているのかとか、環境によってストレスを受けている植物の内部では、なにが破壊され、それがどのように修復されているのかなどといった研究をします。

 

また植物生態学の場合は、この植物はどういうところに分布していて、どういう環境で生きているのか、進化してきたのか、植物が生きている場所と生き方、つまり、植物と環境の相互作用を調べる学問です。

 

植物生理生態学は、生理学と生態学が融合したような分野で、ある環境のもとでの植物の生き方に加えて、そのとき植物の内部ではどのようなことが起きているのかの両方の側面から、全体的に調べる分野になっています。

 

生物の中でも、動物を研究する人たちはその動き(行動)に注目することが多いのですが、植物は生育場所から動けないので、その場の環境にうまく応答したり適応して進化してきたわけです。だからこうやって環境へ応答するメカニズム(生理)とその意義(生態)を明らかにすることが重要なんです。

 

もうひとつの陸水学は、湖やダム、湿地、川、地下水などのような、海を除いた陸上に存在する水のある環境を研究する学問です。その中で、例えば水そのものの物理的な動きを研究する人がいたり、水の化学的な成分を研究する人がいたり、私のように生物や生態系を研究したり、それらを応用してどのようにダムを建造すべきかといった土木的な研究をされている人もいます。いろいろな研究を包括的に扱うのが陸水学という分野なんですね。

 

 

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―― なぜこの分野をご専門にされたのでしょうか?

 

私は大学生のときに世界中を旅していたのですが、その中で何度か尋ねたアラスカで、大自然の風景や植物の急激な移り変わりに心を奪われ、北極をフィールドにして植物を研究したいと思ったんです。でも北極って結構いろんなことがもう研究されているんです。

 

でも南極はまだまだ手つかずなところがあって。「だったら北極ではなくて、南極の湖の植物を研究しよう!」と思ったんです。

 

 

―― そもそもどうして北極の植物を研究したいと思ったんですか?

 

『すてきな 地球の果て』にも書いていますが、小さいころに、極北を取りあげている自然ドキュメンタリー番組をみて、「すごい世界がある!」と驚いてから、ずっと極北の地に行ってみたいと思っていました。

 

小学生、中学生のときは、星も好きだったので、天文学者になるのが夢でした。それが高校生になってから「もしかしたら私は、宇宙のことよりも地球の自然のほうが好きなんじゃないかな」と思い始めます。そして、まだはっきりと夢がわかっていないまま大学の工学部に入りました。

 

そして世界中を旅しているうちに、「私は自然科学の、しかも植物や生物が好きなんだ」とわかったんです。そして大学院の博士課程から植物生理生態の研究を始めました。

 

 

 

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