進歩しない人間だからこそ、歴史に意味がある ―― 「経済学史」とはなにか

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「当然の常識」を武器に

 

―― 最後に高校生にアドバイスがあればお願いします!

 

経済学というのは、とても重要な学問です。「お金の話をするのは嫌だ」とおもっている人もいるかもしれませんが、実際にはみんながお金を稼いで生活していかなければなりません。「平和を望みたいのであれば、戦争の研究をしなければいけない」というように、お金に使われたくないとおもっている人ほど、お金について研究する必要があるとおもいます。

 

それに、経済学は単にお金を扱っているのではなく、人間の持っている自律性と、社会との関わりについて洞察するものです。経済学が言っていることは、世の中には利害があって、それを調整するのが社会の役割であるという当然の常識ですので、社会に出ても役に立つ武器になるでしょう。

 

そして、経済学というのは刻々と進化している学問です。統計やビックデータを使うことで、大きく変わりつつありますし、政策への応用も進んでいます。経済学の可能性はどんどん広がっていますので、大学で勉強するのに値する、面白い学問だとおもいます。

 

経済学史についていえば、歴史が面白いかどうかに左右される部分がありますので、歴史が好きな人にはおススメです。少し地味ですが、ぜひ経済学史も学んでみてくださいね。

 

 

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経済学史がわかる!高校生のための3冊

 

高校生のための3冊というのは意外に難しい注文です。このサイトを読むような高校生ならば、すでにかなり関心があるでしょうから、以下に挙げるような本は読んでいるかもしません。もしそうでなければ、経済学史のいろいろな姿を示す本を選びましたので、ぜひ読んでみてください。編集部からは、自著の推薦もよいというありがたい申し出もありましたが、ここは禁欲します。

 

 

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アダム・スミスといえば、誰もが名前だけは聞いたことがあるはず(聞いたことがない人はこの際に覚えておきましょう)。「経済学の父」ともいわれる大経済学者ですが、その主著『国富論』や、もう一つの本『道徳感情論』を読んだという人は少ないはず。一人の経済学者の著作を、時代背景を踏まえて著作を丹念に再構成するタイプの正統的な学風ですが、読みやすく書かれています。また、意外なことにこういう読み方は、現代にとっても活かすことができるようなヒントをたくさん提供してくれます。そのあとには、たとえば井上義朗『二つの「競争」―競争観をめぐる現代経済思想』(講談社現代新書、2012 年)が現代にまで至るさらに広い展望をあたえてくれます。

 

 

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経済学史というよりは、(ある種の)社会科学への入門書です。かつては、それこそ中学生くらいまでに読む必読書に挙げられていたとおもいます。ただ、戦前の1937年に書かれているので、ところどころ違和感をおぼえるのは仕方がないですね(経済的に少し没落しているはずの主人公の家にはお女中さんがいます。これはこれで興味深い事実です)。

 

けれども、マルクスのマの字も出さずに、見事なマルクス経済学への入門書になっているのは、さすが岩波書店を代表した名編集者です。もうすでに読んだという人は、マルクスの『共産党宣言』や『経済学批判』の「序言」などを読んだ後で、この本を改めて読むとよいでしょう。私が一番感心したのは、粉ミルクのもとをたどればオーストラリアに行きつくというくだりですね。貿易を通じて見も知らぬ人々が結びつき、世界が一つになって行くということを雄弁に語っています。

 

 

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スミス、マルクスとくれば、ケインズといきたいところ。ここでは少し視点を変えてシュンペーターとフィッシャーという、ケインズの同時代に生きた経済学者をとりあげましょう。90年代から日本経済が長期にわたって停滞していることについては、皆さんもご存じだとおもいます。この本では、日本経済について二つの見方を提示して、その源を経済学史に遡りながら整理し、望ましい処方箋について考えています。著者は国際経済学が専攻で、この本以降、次々と著作を発表していますが、経済学史の使い方、という意味で大変面白いとおもいます。また、2007-8年からの経済危機でも、この1930年代の大恐慌の時代は注目されています。なお、よくとりあげられるケインズとハイエクについては、間宮陽介『増補ケインズとハイエク』(ちくま学芸文庫、2006年)、ニコラス・ワプショット『ケインズかハイエクか』(新潮社、2012年)などがあります。しかし、この問題を考えるのに一番刺激を与えてくれるのは、ポール・クルーグマン『さっさと不況を終わらせろ』(早川書房、2012年)でしょう。

 

(2013年7月13日若田部昌澄先生研究室にて)

 

 

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