どうして「ルールは守って当たり前」? ――現代の生き方を批判的に考える

生き方、あり方に疑問をもつこと

 

―― うーん、難しいですね……児玉先生は、倫理学を勉強することにどんな意味があるとお思いですか?

 

模範的な解答をすると、まず批判的な思考を身につけるという哲学全体の目的があると思います。社会の価値観だとか道徳というのをそのまま受け入れるのではなくて、それを批判的にみる能力を身につけることが非常に大きな意味だと思います。

 

これは大学全体の役割でもあると思いますが、社会をよくしていくためにも社会のあり方を客観的にみつめる能力を持つことは非常に重要でしょう。その際に批判的思考、つまり論理的に考えること、きちんと筋道を立てた議論を自分一人でも他人と一緒でもできることは、とくに道徳や倫理の問題について考えるときに重要になる。結論ありきではなくて、推論するという力を身に付ける意味があるのでは、と思いますね。

 

いまは「批判的思考」という言葉が英米圏でよく使われるようになっていますが、ラッセルの時代には「懐疑」という言葉がよく使われていました。「穏健な懐疑的思考が重要だ」とラッセルも言っているんですけど、現存のものをそのまま受け入れるのではなくて、やっぱりそれを吟味する、一度疑った上で受け入れるかどうかを決めることは大切だと思います。

 

例えば代理出産について、すぐ「けしからん!」ということは簡単でしょう。でもなぜ「けしからん!」なのかを吟味しないといけない。なぜなら社会全体で「けしからん!」と決めてしまったら、代理出産という方法を使えない人がでてきてしまいます。本当に、代理出産にアクセスできない様にすべきなのかを考えないといけないんです。

 

これが批判的な思考の重要なところです。批判というと、なんでもかんでもケチをつけると思われがちですが、あるものをそのまま受け入れるのではなくて、その背後にある理由というのをよく考えるということなんです。

 

 

―― ツイッターを見ていると、「批判」ってつまり、喧嘩することなのかと思わせがちな気がするので、なるほどと思いました(笑)。最後に高校生にメッセージをお願いします!

 

うーん……そうですね……いま非行少年の研究を京都府警と一緒にやっているので、「万引きをしないでください」というメッセージが最初に思い浮かびました(笑)。あとは「自転車を盗むのはやめてください」とか(笑)。

 

 

―― な、なるほど(笑)。他にはありますか?

 

やっぱり、貧しい国に対してどれほどのことをする義務があるのかだとか、動物を食べてもよいのだろうかとか、正義って何だろうとか、そういった自分の生き方とか社会のあり方に根本的な疑問を持つような人は、倫理学でちょっと勉強してもらいたいと思います。

 

最初に言ったみたいに、倫理学というのは、思想史を知識として身につけるのではなくて、われわれの現代の生き方というのを批判的に考えるというところがあります。自分の生き方とか社会のあり方を考えるというと、別に他の学問でもいいんではないかと言いたくもなるところはありますが、それでも、もし哲学的な議論に関心があれば、倫理学を勉強してもらえたら嬉しいですね。

 

 

倫理学がわかる! 高校生のための入門書3冊

 

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応用倫理学の入門書としては今日でも最初に読むべき本。一見なんの役にも立たないと思われる哲学が、代理出産や死刑廃止論など、現代社会の問題を考えるうえで役に立つことがわかるだろう。

 

 

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少し前に流行ったので記憶にある人も多いかと思うが、政治哲学・倫理学の入門書。米国で起きている社会問題を通じて、功利主義や義務論などの規範理論的な思考を身に付けられるだろう。

 

 

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功利主義を中心にした倫理学入門書。「少数者を犠牲にする思考法」と考えられがちな功利主義についてより深く考えることで、倫理学をするために必要な批判的思考が身に付けられるかもしれない。

 

(2013年9月7日 新宿にて)

 

 

 

 

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