異なる人びとのイメージを、ひとつに重ねあわせる方法論――ミリの世界から日本列島改造論まで

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いろいろな人のアイディアが一緒になる楽しさ

 

―― 藤村さんにとって建築の楽しさとはなんですか?

 

いろいろな人のイメージが集まって、ひとつのモノになっていくところですね。

 

ある集合住宅のプロジェクトに取り組んでいた時、若い女性の設備設計者から「私、一度屋上から地下までストンと排水設備を通したいんだよね」というリクエストを出されたときは、意匠担当の私と構造担当の2人で打ち合わせしながら、その人の夢をかなえるべく(笑)、設備を最優先して平面計画や構造計画に取り組むという経験をしました。通常は平面が最初で、次に構造を決め、設備は後回しになるのですが、建築の長期間の持続可能性を考えると設備の維持管理が鍵になるから、設備を最優先にして建築を構成するのはとても合理的です。

 

これは一例ですが、建築は誰かひとりのイメージがそのまま出来上がるというよりは、いろいろな人のイメージが重なってものができあがっていく。そこにはいろいろな人のアイディアが一緒になるという楽しさがあります。映画の製作チームとか、チームスポーツとかの楽しさに似ていると思います。

 

 

―― 反対に嫌になること、辛いことってありますか?

 

それは現場ごとに毎回ありますね……。大なり小なりトラブルもあるんですよ。お金も絡むので。例えば基礎を作るために地下を掘ったら、想像していなかった埋設物が見つかった。その除去には数百万かかってしまう、とか。近隣からクレームがでている、とか。そうしたトラブルをひとつひとつ消していって、くたくたになって、ようやくクレームが全部なくなったときに、仕事が終わるんです。

 

建築はパッと結果が出て、パッと評価されるような仕事ではなくて、泥臭くて終わりがはっきりしない仕事なんです。問題が起きたら全部建築家のせいになりますし。キツくて辞めてしまう人も多いです。学生をみていると、学校の課題すら出せない人もいて。現場はお金と人の命を預かっていますから、プレッシャーに潰されてしまう人もいます。それをいかにポジティブに乗り越えて、経験を積めるか、ですね。

 

 

―― 藤村さんが普段生活していて「これ、建築学っぽいな」って思う出来事ってありますか?

 

いろいろありますよ。普段から意識するようにしているので。机や椅子といった家具を並べるときとか。

 

ああ、あとは集合写真ですね。集合写真って、集合しているように見える写真と、なんとなくばらばらと集まっているだけの写真があるんですよ。私はどのような秩序でものを並べるかに普段からこだわっているので、まず身長順に並べて、それからこの人あっちに、あの人をこっちにと並べ替えて、集合している感じのある集合写真に仕上げます(笑)。

 

建築はそういうところがありますね。要素は変わらないけれど、配列を変えることで、秩序を生む。それによってなにかが伝わったり伝わらなかったりする。

 

 

ミリの世界から日本列島改造論まで、スケールを横断する

 

―― 最後に高校生に向けてメッセージをいただけますか?

 

自分が高校生のときは、バブルは崩壊していたものの、まだいろいろ夢の見られる世界だったのですが、今は目標が持ちにくい時代なのではないかと思います。でも、実はいま建築学科の人気が上がっているんですよ。東日本大震災の影響で、建築を通じて社会に役に立ちたいという人が増えている。

 

高校生向けの模擬授業をときどきやるんですけど、「細かい作業ばかりやっていると思ったら社会全体を考える仕事なんですね」というリアクションを良くもらいます。しかも建築には住宅から国家まで、スケールを横断してものを考えるスケーラビリティがあるんですよね。

 

先ほど名前をだした伊東豊雄さんは、面積でいうと120平米ほどの自邸を設計して学会賞を取られました。次に八代市立博物館、これは3000平米くらい。さらにだいたい2万数千平米のせんだいメディアテークを設計している。10年おきくらいに手がける建築のスケールが10倍に拡大していく。でも、スケールはまったく違うけれど、考えていることはずっと一緒なんです。

 

私もふだん住宅を設計しながら、日本列島改造論とか東南アジア全体を考えたと思うと、鶴ヶ島市のことを考えたり、ここの枠は9mmにするか、12mmにするか悩んだりする。そういうスケールを横断しながら、全体を考える構築的な思考は建築学的な思考なんだと思いますね。

 

 

建築学がわかる! 高校生のための3冊

 

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安藤忠雄さんは旅を語りながら、世界の有名建築を紹介してくれるので、入門書としてお薦めしています。本書は1992年の出版で、安藤さんの旅についてのエッセイが集められたものですが、世界の有名建築の魅力や背景を知ることができます。私も高校生の頃、安藤さんの本を読みながらル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライトなど、いろいろな建築家の名前を覚えました。

 

 

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五十嵐太郎さんは建築史を出発点としながら建築批評家として現代建築について広く論じていらっしゃいます。現代建築を知る上で必要な「ダーティリアリズム」とか「レム・コールハース」などの用語や人名についての知識を一通り網羅できます。建築学科の学生にも、現代建築の動向についてひと通り知るなら、まずはこの本をお薦めしています。

 

 

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東日本大震災を受けて、これからの建築家がどう変わって行くのかを論じるのかを考えるために、ヒントを示していると感じられる20組の建築家、社会学者、研究者の皆さんにインタビューしたものです。「建築家」という存在の定義が時代ごとに変わって行くことがよくわかるのではないかと思います。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.265 

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・結城康博「こうすれば介護人材不足は解決する」
・松浦直毅「アフリカ」
・山岸倫子「困窮者を支援するという仕事」
・出井康博「「留学生ビジネス」の実態――“オールジャパン”で密かに進む「人身売買」」
・穂鷹知美「ヨーロッパのシェアリングエコノミー――モビリティと地域社会に浸透するシェアリング」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(9)――「シンクタンク2005年・日本」第一安倍政権崩壊後」