「いいとこ取り野党」がなぜ現れないのか

―― 「庶民には恩恵がない」という論調は多いのですが、そういうときに問題にされるのはおおむね給料であって、雇用統計などは視野に入っていない印象がありますね。

 

「庶民」って誰なんですか? と聞きたいです。どの階層を指して「庶民」と言っているのか。長く続いた不況のなかで、いったい誰が「庶民」と呼ばれるべきなのでしょうか。

 

たとえば世論調査を見ると、おおむね7割くらいの方が消費税の再増税に反対しています。年収でいえばだいたい800万円未満の世帯の方たちだと思われますが、この層には反対する明確な理由があります。本ではグラフで示していますが(180ページ)、消費税の負担割合がこの線でぐっと高まるからなんです。さらに300万円を下回ると負担率は跳ね上がる。誰が「庶民」なのかはイメージの問題ではないんです。

 

 

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メディアや知識人層の考える「庶民」と、現実の庶民に乖離があるように感じられてなりません。庶民のリアリティを抜きにして「大義」で政権を批判するのは、不毛な状況としか思えません。解散総選挙を仕掛けられて、準備さえしていなかったというのは、ある意味でおこがましい話です。政権を奪取する気持ちはあるんですか、と聞きたくなります。

 

私自身、民主党からの依頼で仕事をしたこともありますし、野党の応援をしたい気持ちもあります。日本の政治の問題は、強い野党、政権を取りうる強さがあってしっかりと政権運営できる野党の不在です。民主党が一度政権を奪取しましたが、その時の失望感がいまの状況を作ってしまっています。自分たちのサバイバルの問題で「大義」を口にするのではなく、国民のための「大義」に立ち戻ってほしいと思います。

 

 

交渉としての政治と、払うべき対価

 

―― 増税延期で争点が消えてしまった格好ですが、延期そのものについてはどのように評価されていますか?

 

景気判断条項の削除をバーターにして成り立っていることと、自民党と公明党との合意が軽減税率によってなされた側面がありうることには注意が必要です。

 

公明党の選挙ポスターには「いまこそ、軽減税率実現へ。」とありますが、軽減税率の非合理性は本でも指摘したとおりです(187ページ)。政治とは交渉であるとはいえ、そこまでしないと延期すらできないのかと非常に暗澹たる気持ちになりました。

 

軽減税率は適用する品目を誤ると、たくさん消費をする高消費者への補助になってしまいます。ただ、軽減税率がすべて問題だと単純に片付けられない側面もあって、これは交渉次第で変わりうる余地があります。たとえば「生鮮食品」を対象にしていまうと非常に不明瞭になりますが、仮に「米・味噌・塩・醤油」を軽減税率対象とし、あとは一切認めないということになれば、影響は最低限に抑えられます。生きていく限り絶対に必要で、誰もが不満を言わないような品目に限定することが、おそらく現実解になっていくのだと思います。

 

増税が延期されたことへの対価、政治的な代償はそれなりのものがあると思います。その対価が国民経済生活に望ましくないものであるならば、それをできる限り小さいものにしていくことが必要で、そのためにはそれをやろうとしている人たちに政治力を与えてあげることが必要なんだと思うんです。

 

 

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今回の政治劇で、増税勢力がたくさんいることは明白になりました。その勢力に対抗するために国民の力を借りたいというのが、解散の真意なのだと思います。争点がなくなったあとの解散は事情がわかりにくいとは思いますが、それでもあえて解散しなければならなかった理由は、抵抗勢力との闘いにあるのだと思います。首相が過半数を勝敗ラインに設定したことも話題になっていますが、極端にいえば、自民党から増税派を一掃したらそれくらいの数になることも覚悟しているのではないでしょうか。

 

景気条項削除や軽減税率を批判するのは簡単なのですが、現実解としての妥協だった可能性を、解散という現実と合わせて理解すべきなのかも知れません。延期したことのメリットをどうやって守り、活かしていくのか、仮に現政権を信任するのであればそれを要求していく必要があります。

 

逆に信任しないのであれば、社会保障と税の一体改革の枠組みを変える提案をできる政党を選びたいと思いますし、アベノミクスを強化し改善するような提案に期待します。

 

(2014年11月21日 三菱UFJリサーチ&コンサルティングにて収録)

 

■あわせて読みたい

 

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