古くて新しい、在日コリアンへのレイシズム

レイシズムとまとめサイト

 

――Twitterの調査だけではなく、大学生へのアンケートも行われていますが、全体の研究を通して意外だったとおもった点はありましたか。

 

驚いた点はなく、割と実感に沿う結果だったとおもいます。2ちゃんねるの利用と排外主義についての研究などはされていましたが、本では「2ちゃんねるまとめブログ」についても調査しました。

 

 

――レイシズムとどのような関係があるのでしょうか?

 

まとめブログは「新しいレイシズム」とコリアンへの否定的な感情に、2ちゃんねるは「古いレイシズム」と関係がありました。つまり、2ちゃんねるとまとめブログは、レイシズムの異なる側面に効果を与えているわけです。

 

これは、2ちゃんねるに掲載される情報と、まとめブログの内容が違っていることが一つの原因でしょう。まとめブログでは、広告のクリック数に応じた収入が得られるため、より面白くみえるように編集しています。そうすと、コリアンの情報は凝縮され、みんなが批判しているように提示されます。そうすると、否定的な感情と「新しいレイシズム」を肯定する形で出てくるのかもしれません。

 

よく、インターネットでの在日コリアンについての話題は「ネタ」だと言う人もいます。あんなのは嘘だと知っているけど、面白いからやっているんだと。でも、みんなが言っているということ自体が、それを信じるに足りる根拠になることがあります。

 

誰かに他の誰かを嫌わせたいとき、合理的な根拠を示さなくても「みんな、この人のこと嫌いだよ」と言うだけでいいじゃないですか。論理的に道筋を示して主張するよりも、10人の人が根拠のない「事実」に言及する方が信じられることだってある。

 

現にまとめブログは、2ちゃんねるの投稿を取捨選択して、「みんなが同じようなことを言っているよ」という形で提示して見せるじゃないですか。人間はそういうものに影響されてしまいます。「どうせまとめブログだから信用できない」とか「これは遊びだ」とおもっていてもです。

 

 

――Twitterの分析をされていましたが、やはりSNSの使用時間が長いとレイシズム的な傾向が強まるのでしょうか。

 

Twitterの使用時間の長さと、レイシズムの関連性は見いだせませんでした。単に時間的制約の問題化もしれませんが、Twitterの利用時間が長ければ長いほど、2ちゃんねるを利用していない傾向が出ています。

 

また、Twitterでは、自分の仲間内であったり、思想の近い人の投稿をみることになるので、思想が強化される可能性があります。ですから、レイシズムが強い人はより強まり、弱い人は弱まる。それを平均すると効果が見られないのかもしれません。

 

 

――本を読むと「こういう属性の人がレイシストです」と言うことに、非常に禁欲的だなと感じました。よく、「ネトウヨは低収入で~」みたいな話が聞こえてきますが、そのような点は意識されたのですか。

 

たぶん、売れる本にしようとしたら、そういうふうに煽情的にしたほうがよかったのかもしれません。そっちの方が経済的に合理的なんですけど……。でも、いまおっしゃったみたいに、貧しい人が偏見を持ちがちかというと、そうとも言い切れないんです。偏見や差別の強化につながる保守的イデオロギーには、右翼的権威主義と社会支配志向とがあります。

 

右翼的権威主義は、権威者に盲目的にしたがう、権威に背くものには攻撃する、伝統と慣習に固執するといった傾向です。この権威主義の場合、知的能力の低い人の方が比較的高いんです。曖昧なことを曖昧なまま受け入れられないことが関わっています。

 

一方で、社会的支配志向は、社会を競争の場と考え、集団の優劣をつけ、格差の存在を是認する弱肉強食の世界観です。これは、地位が高い人の方が比較的高いんですね。ぼくの学生時代の東大生でも「だって俺たち努力してきただろう。だから見返りを得る権利がある」と主張する人は少なくなかったです。

 

特にインターネットの使用時間が長ければ長いほど、社会的支配志向が強いことが今回は分かりました。一方で、インターネットの使用時間と右翼的権威主義との関連性はみられませんでした。実際に、「ネット右翼」と呼ばれるような人々は尊王史観や天皇に関する発言をほとんどしていません。

 

アメリカの場合では、インターネットの使用と排外主義に負の相関があるようです。日本とは逆ですね。2ちゃんねるのような、日本語のインターネットのローカルな文化が関連しているのかもしれません。

 

 

レイシズムを解剖して

 

――読者の方からどのような感想が届きましたか。

 

出す前は、もしかしたら、レイシズムの脅威に現に晒されている人たちは失望するのではとおもっていました。マイノリティを勇気づけたり直接的に手を差し伸べるような本ではないからです。

 

でも、科学的にやっていることを評価してくれる人が多くて、ほっとしています。ぼくたちの仕事は、何が事実で何が事実じゃないのかをきちんと分けることです。極力感情を抑えて学問に対して誠実にやっていく。「絶対にお前の味方だ」というところから出発しないから、優しくないのかもしれませんが、仕事が違うとおもっています。控えめな結論しか出していないんですが、他の人の研究の土台にしてほしいですね。

 

それと、「日本を愛しているなら批判するな」という人もいますが、同意できません。たとえば、自分のことを可愛がってくれる祖父がいたとしても、もし祖母に暴力を振るっていたら、いくら大好きでも批判するべきです。

 

ちなみに、「わざわざこんな炎上するようなテーマをやらなくても」と言う方もいます(笑)。たしかに、私の研究は現に起きていることについてのものなので、本当はもっと抽象的な理論の検証をしたいとか、それも大胆な理論を提唱したいといった気持ちもあります。この分野を他の人が代わりに研究してくれないかなって思わないこともない。ネット上で嫌なことも言われますしね。

 

でも、自分のやっている問題に、自分が気がついてよかったとはおもっています。科学はやっぱり、人類全体のためになるとおもっている。本ではレイシズムが低減する可能性についても触れています。本当は自分がこんな研究をしなくてもいい世の中に早くなってほしいんですけどね。

 

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください。

 

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

シノドスの運営について

 

シノドスは日本の言論をよりよくすることを目指し、共感してくださるみなさまのご支援で運営されています。コンテンツをより充実させるために、みなさまのご協力が必要です。ぜひシノドスのサポーターをご検討ください。

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

98_main_pc (1)

 

 セミナー参加者募集中!「対話/ダイアローグから見た精神医学」植村太郎(12月16日16時~18時)

 

 

無題

 

vol.233 公正な社会を切り開く 

 

・ジェームズ・ミニー氏、鈴木啓美氏インタビュー「もっと楽しいお買い物を目指して――フェアトレードの魅力」

・【「民主」と「自由」――リベラルの再生へ向けて――】古川江里子「大正デモクラシーと吉野作造 ―大日本帝国憲法下での民主主義的政治の試みが現代に問うもの」

・【知の巨人たち】重田園江「ミシェル・フーコー――なぜ『絶望系』なのに読んでしまうのか」

・阪井裕一郎「学びなおしの5冊 <家族>」

 

vol.232 芸術にいざなう 

 

・吉澤弥生氏インタビュー「人をつなぐ芸術――その社会的評価を再考する」

・【現代演劇 Q&A】長瀬千雅(解説)「時代を捕まえるダイナミクス――現代演劇事始め」

・【今月のポジ出し!】橋本努「タックス・ヘイブン改革 香港やシンガポールにも圧力を」

・増田穂「『知見』が有効活用されるために」

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.233 特集:公正な社会を切り開く

・ジェームズ・ミニー氏、鈴木啓美氏インタビュー「もっと楽しいお買い物を目指して――フェアトレードの魅力」

・【「民主」と「自由」――リベラルの再生へ向けて――】古川江里子「大正デモクラシーと吉野作造 ―大日本帝国憲法下での民主主義的政治の試みが現代に問うもの」

・【知の巨人たち】重田園江「ミシェル・フーコー――なぜ『絶望系』なのに読んでしまうのか」

・阪井裕一郎「学びなおしの5冊 <家族>」