グーグルマップは私たちの社会を広げたのだろうか?

ポケモン以外はいない地図?

 

――本書は「Pokémon GO」日本リリース以前に刊行されていますが、Pokémon GOの登場により、地図と人間との関係はバージョンアップしたと感じますか?

 

グーグルマップをベースにした現実世界の地図上に、ポケモンのような現実には見えないものを出現させるわけですから、地図とゲームの融合という観点からみて、新しい可能性を感じます。ポケモンGO以前に流行したIngress(イングレス)でも同様ですね。

 

ぼくが注目しているのは、地図とゲームの融合によって、自分が見るはずのなかった地図を見る可能性があるということです。グーグルマップでは、自分の見たいものだけを見てしまう。地図に対する視野や想像力が狭まってしまう恐れがありました。

 

一方、ポケモンGOのようにGPSと連動したゲームをプレイすると、訪れることのなかった多様な場所に出かけるようになると同時に、今まで見ることのなかった多様な地図を見るように仕向けられます。その結果、グーグルマップで狭まりがちな視野もおのずと広がっていく可能性があります。

 

 

――たしかに、ポケモンGOをしていると「こんなところに、お寺があったのか!」と近所でありながらも行ったことのない場所をみつけたり、ちょっと足をのばして散歩してみようかと思ったりします。

 

しかし、現状では、イングレスもポケモンGOも、地図そのものを読ませるようなゲームにはなっていません。というのも、ゲームに使われている地図はグーグルマップのデータをベースにしてはいるものの、ゲームに不必要な道路以外の情報は完全に省略されています。地図としてはあまりに「のっぺらぼう」で情報量が少なすぎる。

 

それに、グーグルマップとは違って、自分が移動しないかぎり、地図も自由に動かすことができないので、自分の居場所の周辺しか見えません。その意味で、グーグルマップ以上に自己中心的で、移動に特化した地図になっています。これはもったいないなと思います。

 

ゲームをプレイするだけであれば、余計な地図情報はむしろ邪魔かもしれませんが、せめて地名やランドマークの名前でも記載してほしいですね。また、基本的には歩いて移動しながらプレイするものが主流ですが、家にいても地図そのものを動かしながら遊べるゲームなど、地図の想像力を広げていく方向性のゲームも期待しています。

 

 

「見たいものが増える」「見たいものをずらす」

 

――グーグルマップのこれからの可能性について、注目している機能はありますか。

 

現実的には、ローカルな空間をより詳細にみせる機能が発達していくと思います。それから、今後はユーザーの検索履歴や行動履歴を解析して、地図が自動的に最適化される機能がより強化されるでしょう。Amazonの「閲覧履歴からのおすすめ」のようなイメージですね。グーグルマップがユーザーを先回りする。そうすると、「見たいものしか見ない」自己中心的な地図の見方がより誘発されてしまうことになります。それに、「見たいものしか見ない」というのは、人間の合理的な行為として仕方のないことでもあります。

 

ですから、ぼくは「見たいものを増やす」ことを提唱したいと思います。その一つとして注目しているのが「レイヤー」とよばれる機能です。今のところグーグルマップには、衛星写真、道路の混雑状況、地下鉄の路線図、地形図といったレイヤーがあって、それぞれのレイヤーを選択すると、地図がそれに合わせて変化するようになっています。

 

つまり、通常のグーグルマップの上に、色んなテーマの地図を重ねることができるような機能なんです。そういったレイヤーをもっと増やしていくことによって、「見たいものしか見ない」ユーザーに、「見たいものが増える」きっかけを与えると思うのです。

 

たとえば、いま「グーグル・クライシスレスポンスhttps://www.google.org/crisisresponse/japan」というサイトでは、グーグルマップをベースにした「災害情報マップ」と「防災マップ」が公開されています。このようなレイヤーをグーグルマップのサイトやアプリ内に組み込めば、もっと多くの人が日頃から手軽にアクセスできるようになるでしょう。

 

それに加えて、古地図や観光マップなどもグーグルマップにレイヤーとして重ね合わることができれば、可能性はより広がります。それぞれのレイヤーのあいだを簡単に行き来できるようになれば、グーグルマップを移動のためのナビゲーションとして使いながら、レイヤーをボタン一つで切り替えるだけで、それほど無理なく多様な地図に触れることができるようになるのではないでしょうか。

 

多様な視点が用意されることで、ユーザーも目的地への移動のために断片的に地図を見るだけではなく、そこに厚みや深さを見出すことができるようになると思っています。

 

 

――「『シンゴジラ』でゴジラが通った道レイヤー」などがあったらおもしろそうですね。観光などにも生かせそうです。

 

そうですよね。ポケモンGOでもあらためて気づかされましたが、人が多様な地図に開かれていくうえでは、そういったエンターテインメント的な要素が鍵になる気がします。また「見たいものをずらす」ことの重要性も感じています。旅先でも結局は、自分の現在地を探索するだけになってしまいがちです。そういうときに、自分で主体的に地図をズームアウトしてみる。自分の見たいものの外側に意識を向けて、見たいものをずらしてみる。それだけでも視野が広がると思います。

 

地図をズームアウトすることは普段の生活ではほとんどありません。でも、旅に出ることでズームアウトの欲望が駆り立てられる可能性があります。さっき行った場所と、いまの場所はどういう位置関係にあるんだろう。今はこの県のどのあたりにいるんだろう。そんな風に、ちょっとは地図への関心が向きやすくなると思います。

 

だれもが「自己中心的」な地図を持ち歩けるようになり、いままでよりも地図を見る機会は増えたからこそ、地図本来のポテンシャルを生かすような使い方ができるようになればいいですよね。

 

 

AWS Access Key ID: AKIAJSA5SEKND2GVG7TA. You are submitting requests too quickly. Please retry your requests at a slower rate.

 

知のネットワーク – S Y N O D O S –

 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.260 

・吉永明弘「都市に「原生自然」を残す――人新世の時代の環境倫理学」
・藤重博美「学び直しの5冊――「相対的な安全保障観」を鍛えるための読書術」
・赤木智弘「今月のポジだし――AIが支配する社会を待ち続けて」
・竹端寛「「実践の楽観主義」をもって、社会に風穴を開けていく」
・伊吹友秀「エンハンスメントの倫理」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(4)――東京財団退職後」
・加藤壮一郎「デンマーク社会住宅地区再開発におけるジェーン・ジェイコブス思想の展開」