どうして妻は不機嫌なんだ?――産後に冷え込む夫婦の愛情

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家族の「55年体制」を終わらせよう

 

―― そういうご夫婦が、先ほどお話になっていた、産後に落ちた愛情が回復するご夫婦なのかもしれませんね。

 

そうだと思います。

 

実は「産後クライシス」って言葉って、「あさイチ」での特集と朝のニュースの2回しか使っていないんですね。それでも放送後に定着するようになって、多くの場面で使われるようになりました。これって、それだけ「産後クライシス」に問題意識を持っている方が多いということだと思います。

 

出産が女性を大きく変化させること、そしてそれに気づかない男性はいまに始まった話ではありませんし、男性が一生懸命働いていることだって昔からの話です。「産後クライシス」自体は以前からあったことなんですね。それじゃあいまになってどうして「産後クライシス」が注目されるようになったのか考えてみました。

 

私は家族の「55年体制」を終わらせるべきだと思ってるんですけど、結婚することや子どもを持つことの価値が高度経済成長を支えて来たモデルと大きく変わってきているんだと思います。

 

昔は結婚することや子どもを産むことって一種の義務みたいなところがあったと思うんですね。でも内閣府の調査をみても「子どもが欲しい理由」で「結婚して子どもを作るのは人間として自然だから」という回答は、年齢が若くなるにつれて少なくなって、「子どもがかわいいから」という回答が増えているんですね。

 

子どもを産むかどうかは夫婦で決めるようになっているってことですよね。産後クライシスを体験した女性に聞くと「二人で育てるはずが、育児も家事もまったく夫がしない」って言うんですね。

 

ただNPO法人tadaima!の2013年の調査によると、「家計貢献度が低い方が家事をすべきか」という質問に対して、男性の8割が「そう思わない」「あまりそう思わない」と答えているんですね。若い世代はちょっとずつ男性の意識も変わりつつあるのかもしれません。

 

実はこの取材を始めるとき、私は「産後クライシスは女性がつらい思いをしているから起きているんだ」と考えていたんです。でも、一緒に取材をした20、30代の男性スタッフが、自分たちのどういう行動がよくないのか質問してくるんですね。

 

先ほどの「55年体制」とも関係すると思うのですが、いまの若い男性は、仕事を頑張れば頑張るほど将来が豊かになるとは限らない時代で、家族との生活をしっかり充実させたいと思う様になっているんじゃないでしょうか? だからこそ、いま「産後クライシス」という言葉に大きな反響があった。

 

でもまだまだ上の世代の価値観に縛られてしまっていて、「55年体制」が生き残ってしまっている。そのせいで男性は早く帰れないとか育休が取りにくいとかつらい思いをされているんじゃないかなあと思いますね。

 

 

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これからの夫婦生活のために

 

―― 家族を大切にしたいと思っているのだけれど、どうして妻が不機嫌なのかわからないというのは不幸なことですね。ちなみに産後クライシスによって愛情が冷え込んでしまったご夫婦が、再び仲を取り戻すことってできるんですか?

 

それは私もとても気になっているのですが、いまのところどうすれば回復するかはわかりません。家族の誰かが病気になるとか事故に遭うとか、そういう危機が生じたときに、改めてお互いの愛情に気がつくということはありましたが……。

 

 

―― そうですか……。だとしたら、よりいっそう、これから産後クライシスを迎えるご夫婦やいままさに迎えているご夫婦にぜひお読みいただきたいですね。内田さんはこの本をどんな方に読んでいただきたいですか? やはり若い男性でしょうか?

 

番組放送後も、そして出版した後も、「妻が不機嫌な理由がわかった」という声が男性からたくさん寄せられたんですね。「いま妻の隣で正座して番組をみています」とか(笑)。

 

でも、なにより読んでもらいたいのは女性の皆さんなんです。育児や家事でたいへんな女性たちは、きっともやもやとした不満とか将来の自分への不安を抱えていると思います。だけど、そのもやもやがどこからくるのかがわからないと、夫に伝えることができませんよね。ですからこの本を手に取ってもらって、自分のもやもやを言語化してもらって、その後にパートナーに渡してもらえたら嬉しいです。

 

あとはなにより私たちよりも上の世代に読んでほしいです。いま若い男性はなかなか育休がとれなかったり、あるいは社会制度が整っていなかったりします。でも理解のある上司がいれば、育休も取りやすくなるかもしれません。結婚祝いや出産祝いにこの本を渡してくださってもいいと思います。「俺のようにはなるなよ!」って(笑)。影響力の大きな上の世代が変わっていけば、社会の制度も少しずつ変わっていくかもしれません。

 

この本を読めばすぐに夫婦間の問題が解決されるわけではありません。私も坪井ディレクターも、パートナーといつもいい関係でいるわけじゃないです。子どもが成長すれば直面する問題は変わっていきますし、両親の状況やお互いの価値観にも変化があります。そうしたなかで、お互いの思っていることを話しあうことができて、そしてこれからの家族のあり方を考え関係を築く、そのきっかけにこの本がなったらとても嬉しいです。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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