2015.01.26
新たな成長パターンを模索する中国――新型都市化からシルクロード経済圏まで
中国経済が現在、曲がり角にさしかかっている。このことは多くの人が認識しているだろう。「影の銀行」による信用膨張、急速な高齢化の進行、深刻化する格差問題や環境問題、バブル崩壊の危険性など、さまざまな問題やリスクの存在が指摘されている。もちろん、経済格差などの問題はこれまでにも存在してきた。しかし、長期間にわたって継続してきた年間10%前後の経済成長が、さまざまな矛盾が顕在化するのを先送りにしていたといえよう。それが、経済の減速が明らかになったため、上記のような問題に対する懸念も一気に吹き出してきたのである。
そんな中、2015年の経済運営方針を決定する中央経済工作会議が、2014年の年末、12月9日から11日にかけて北京で開催された。その主な内容は新華社通信によりリリースされたが、中国経済が「新しい常態」と表現される安定的成長段階に入ったことが強調され、市場メカニズムを重視した改革の継続や、投資に依存した粗放的な成長路線からの転換を説くものだった。
これに呼応するように、年明けの1月20日に政府は、2014年のGDP成長率が目標の7.5%に満たない7.4%になる見込みだと発表した。そして3月に予定される全人代(全国人民代表大会)では、経済成長の目標が7%に引き下げられるのではないか、という見方が有力になっている。
同会議では、「積極的な財政政策と穏健な金融政策」というこれまでのマクロ経済政策の堅持や、金融面を始めとする一層の規制緩和・経済改革の推進が打ち出された。その一方で、「一帯一路」、「京津冀協同発展(北京・天津・河北省エリアの一体化を通じた発展)」、「長江経済ベルト(沿海部から内陸部にいたる長江流域の主要経済都市相互の連携を深める)」などといった、今後の新たな成長のエンジンになると目されるいくつかの地域発展戦略が提起された。
このうち、とくに国内外で注目を集めているのが、「一帯一路」というキーワードで示される経済発展戦略である。これは、中国から中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタンを経由してオランダまで伸びる「シルクロード経済ベルト(一帯)」および、インドネシアから、インド、スリランカ、ケニア、ギリシャを経てオランダにいたる「21世紀海のシルクロード(一路)」という、中国を中心とした新たな経済圏建設の方針を総称したものである。
2014年11月に開催されたAPECの席上で、習近平国家主席自身により「シルクロード経済圏」の構想が提起され、注目を集めたのは記憶に新しい。とくに中国政府が重点を置いているのが、インフラ建設の遅れた「シルクロード経済ベルト」を縦断する高速鉄道の建設である。おりしも12月30日、国有の大手車両メーカーである「中国北車」と「中国南車」が合併し、世界最大規模の車両会社「中国中車股份有限公司」が誕生するという方針が正式発表された。この巨大な車両会社は、海外メーカーに比べ半分近くという価格を武器に、これまでも積極的に新興国に売り込みをかけてきた。
この「一路一帯」構想を資金面で支えるのが「中国版マーシャルプラン」である。言うまでもなく「マーシャルプラン」とは、第二次大戦後戦争で深刻な被害を受けた欧州各国が経済崩壊の危機に瀕したとき、復興とソ連の共産主義勢力の欧州への浸透を防ぐために米国が実施した欧州復興計画のことだ。「シルクロード経済圏」を支える中国版マーシャルプランも、中央アジアにおける石油利権の確保や国内のイスラム系少数民族への抑え込み、さらにはインド洋諸国で港湾インフラを支援することによってインドを牽制し(「真珠の首飾り」戦略)、海洋への勢力を拡大する、といった政治的目的が見え隠れする。
中国が中心となって設立されるアジアインフラ投資銀行構想や、400億ドル規模の新たな「シルクロード基金」を設立したというニュースと合わせ、21世紀の超大国を目指す中国の野心を示したもの、というのが一般的な見方かもしれない。12月20日の大メコン川流域(GMS)経済開発サミットの席上で李克強首相は、ベトナム、カンボジア、ミヤンマー、ラオス、タイの5カ国に対して、メコン川流域の道路や鉄道などのインフラ整備に30億米ドルの借款と援助を行うことを表明したが、これもそのようなアジアの経済秩序を中国資本によって打ち立てる試みとして理解できるだろう。
「シルクロード経済圏」あるいは「中国版マーシャルプラン」という用語が真っ先に呼び起こすのは、そういった地政学的な関心であろう。しかし、以下ではあくまで、それが中国の今後の経済成長パターンにとってどのような意味を持っているのか、という点に絞って考えたい。
「投資過剰経済」からの脱却
たとえば、中国の大国意識を体現したかのような「一帯一路」構想が、それまでの拡張路線を改め「新常態」への適応を説いた中央経済工作会議において提起されたのはなぜだろうか? この疑問に答えるために重要なのが、ここしばらくの中国経済を特徴づけてきた、国内の「投資過剰」問題への視点である(丸川=梶谷、2015)。
さて、中国経済が減速し始めたことのひとつの象徴が、昨年夏以来の不動産市場の低迷である。2014年に入って、それまで右肩上がりがつづいてきた不動産市場の価格に低迷が生じていることはよく知られている。国家統計局は毎月、全国70都市の住宅価格の統計を発表しているが、4月にはまだ過半の都市で値上がりがつづいていたのが、5月になると一転して36都市で前月に比べて値が下がった。それが6月には55都市、9月、10月はともに69都市となり、ほとんどの都市の住宅価格が下落傾向を示している。12月の全国70都市の新築住宅価格の平均値は前月のマイナス0.4%、前年同月比ではマイナス4.3%となった。
中国経済はこれまで、成長を固定資産投資に依存する「投資過剰」ともいうべき状況を呈してきた。たとえば、リーマンショック前までの第一段階では、労働者への賃金支払いを圧縮して旺盛な設備投資を行ってきた。中国では戸籍制度による自由な労働力移動の制限を背景に、とくに農村から都市に出稼ぎに来ている非熟練労働者(農民工)の賃金水準が工業部門の限界労働生産性を大きく下回る状況が持続していた。
安価な労働力の利用により、都市の工業部門では資本蓄積や技術進歩が生じ生産性が向上するが、このことにより国有部門などの正規労働者と農民工との賃金ギャップはますます拡大する。同時に、マクロの労働分配率が低下し、社会保障制度の不備を背景に家計の貯蓄率が上昇する。膨れあがった家計の貯蓄は、資本市場への政府の介入により、一部の国有部門における固定資産投資へと「動員」される。このようなメカニズムによって、近年の中国では、部門間の格差拡大と過剰な投資が並行して進んだ。
ただし、上記のようなロジックは、「民工荒(農民工の不足)」といわれる非熟練労働不足の結果、各地で最低賃金が上昇し、労働分配率が改善したリーマンショック後の状況下では成り立たない。労働分配率の上昇は資本分配率の低下を意味するので、資本係数(資本ストックとGDPの比率)が大きく変化しないという前提では資本収益率の低下をもたらす。通常であればこれは、投資を減少させるはずである。しかし、現実には2009年以降はむしろGDPに占める総資本形成の比率が大幅に伸び、ほぼ50%近くと驚異的な数字を記録している。
このような第二段階の「投資過剰経済」の主役は、リーマンショック後の大規模な景気刺激策、ならびにそれを受けて活性化した地方政府主体の投資行動だった。景気を刺激するための投資事業は、その大半が地方政府に丸投げされたが、地方債の発行が自由に出来ず、銀行からの政府の借入れは厳しく制限されているため、「融資プラットフォーム」と呼ばれるダミー会社を通じて資金を調達し、都市のインフラやマンションなどの建設を大々的に行った。
同時に中国人民銀行は、大胆な金融緩和によって地方政府の資金調達をサポートし、それによって生じる土地や不動産価格の上昇期待がさらなる投資の呼び水となった。収益性が低下しているにもかかわらず、民間資本も含めた高投資が持続したのは、それがキャピタルゲインへの期待に支えられていた、すなわち資産バブルの発生と切り離せないものだったからだ。
このような背景を踏まえれば、「投資過剰経済」からの脱却を説いているはずの中央経済工作会議で、「一帯一路」が提起されたことの意味も自ら明らかになるだろう。「一帯一路」構想およびそれを資金面で支える「中国版マーシャルプラン」は、過剰な国内資本や外貨準備をいってみれば「海外に逃がし」、従来の投資依存型の経済成長パターンの中で顕在化した供給能力の過剰を緩和するという側面も持っている。だからこそこの構想が今回の中央経済工作会議において、国内投資依存型に替わる新たな成長モデルとして強調されているのだ。
課題山積の新型都市化政策
現在のところ、不動産の価格低下は比較的緩やかに進んでいる。また、11月の利下げがきっかけとなった株価の上昇がみられることや、資金移動にはまだ多くの制約が存在することを考えれば、今後の政策運営によって、バブルのソフトランディングは十分可能だと思われる。
懸念されるのは、影の銀行を通じて「融資プラットフォーム」に流れ込み、地方政府の実質的な債務になっている貸出が不良債権化することだが、これもいざとなればプラットフォームの債務を国の債務として整理し、国債発行などで穴埋めするという「防衛」手段が存在する。
ただし、バブルが本当にソフトランディングできるかどうかは、これまでの投資主導型の成長パターンが持続不可能になった後に、新しい成長パターンを見つけ出すことができるかどうか、という点にかかっている。
すでに述べたように、シルクロード経済圏構想は積極的な資本輸出によって、国内で供給された財のはけ口を海外市場に求める、というものである。だが一方で、政府はこれまでむしろ内需、とくに消費需要の拡大に期待をかけていたはずだ。習近平政権の成長戦略の目玉であったはずの、新型都市化政策はその代表的なものである。この二つの戦略は相互に矛盾しないのだろうか。
中国では、都市化政策のことを「城鎮化」と表記する。中国語で「都市化」を意味する言葉には「城市化」と「城鎮化」の二つがある。このうち「城市化」は、広大な国土にどのように大都市を配置するか、という国土開発戦略を表す用語として用いられる場合が多い。それに対して「城鎮化」は、農村と都市の格差問題を解決し、都市における農民工の厚生水準を高めるといった、中国独自の文脈における公正さの追求、というニュアンスが込められている。
このため、「城鎮化」の実施に当たっては、もともと人口の集中する沿海部の大都市に人口を集めるというより、内陸部の中小都市のインフラや社会保障の整備などに重点が置かれることになる。さらに、そのような「農民の市民化」を通じた中間層の創出によって、投資主導型の経済に変わる、国内需要の拡大を目指すという意味合いもある。これは、大都市の規模拡大を抑制し、急速な人口流入による混乱を避けようという毛沢東時代以来の中国政府の方針を反映したものだ(岡本、2014)。
農村と都市の格差解消に関して、習近平政権は制度的な改革の方針を明確に示してきた。たとえば、2013年11月の第三回共産党中央委員会全体会議(三中全会)において、農民の土地などに対する財産権を強化し、都市と農村で統一化された建設用地の市場を創設するという方針が決定されていた。そこには、農地の開発利益を地方政府が独占してきた従来の構造にメスを入れ、農民の財産権を強化し、市場取引を通じて利益を分配しようという明確な姿勢がみられる。
さらに国務院は2014年7月30日に、「戸籍制度改革をさらに推進するための意見」と題した文書を発表し、農村と都市の戸籍の区分を廃止していく方針を正式に示した。同文書では、農業戸籍(いわゆる「農村戸籍」)と非農業戸籍(いわゆる「都市戸籍」)の区分を廃止し、これまでも一部の都市で導入されていた、都市と農村で共通の居住証により住民を管理する制度を導入する方針を示した。
これは、農村など他地域から都市に流入してきた人々に対し、一定の条件を満たせば当該都市の居住証を発行するというもので、それにより当該都市での居住や就業が保証されるだけではなく、教育や医療、年金といった社会サービスを受ける権利が得られるようになる。
同文書はまた、都市の規模に応じて、居住証取得の条件をかなり具体的に示している。たとえば、県レベル以下の中小都市であれば、定住だけで戸籍取得の条件が満たされる一方で、500万人以上の大都市の戸籍を得るためには、安定した職業と住居を得て社会保険制度に加入し、一定の年数その年都市に居住する必要がある(表参照)。
これらの方針は、中小規模の都市に農村人口を吸収し、社会保障の充実など中間層の創設によって内需の拡大を目指すという、これまでの都市化の方針と歩調をそろえたものと評価できよう。
都市居住証発行の要件
出所:”China’s Hukou Reform Plan Starts to Take Shape,” CHINA REALTIME, Aug 4, 2014などより著者作成。
ただ、このような都市化の推進は、国内のインフラなどへの投資拡大を必要とする。この意味で、海外に資本を輸出し、国内財の輸出拡大を図るものである「中国版マーシャルプラン」との間に、「資金の奪い合い」が生じる可能性も懸念される。また、上海交通大学の黄少卿副教授は、国内の過剰な生産能力の「はけ口」を海外に求めることで、本来淘汰されるべき企業が延命し、生産効率性が低下する可能性を指摘している(「絲路基金起歩」『新世紀』2014年第46期)。
国内消費が順調に伸びてくれるのならば、それに越したことはない。しかし、さまざまな報道、あるいは専門家の話から総合的に判断する限り、都市化政策はどうも当初のような効果を期待できそうにない。最大の問題は、都市化政策は、それが実施される地域で独自に進められており、それらの地方ごとの都市化政策の整合性がどうも取れていない、というところにある。
たとえば、都市化政策と並行して進められている都市-農民の戸籍改革について、大都市を中心にその実態と問題点が報告されている。上海市の事例を見ると、市外から流入してきた住民が所得する居住証には、個人の技能や学歴・納税状況・居住年数などによるポイント制が導入されており、住民が得られる権利もポイントによって厳然たる格差が存在している(「上海市居住証積分管理試行辨法公布」、2013年6月19日)。
一例を挙げれば、上海市の一般居住証を持っている人は養老保険や医療保険に加入し、子女に上海市の中等教育を受けさせることができるが、上海の大学を受験させることはできない(厳、2014)。すなわち、都市の発展にとって有用な技能や学歴を持っている「人材」であれば、市民として認めてさまざまな権利を認めるが、そうではない者に対しては限定した権利しか与えないのだ。このため、戸籍改革が新たな「身分制度」を生み出すのではないかという批判が絶えない。
2014年9月にNHK-BSで放送されたドキュメンタリーWAVE「1億人が漂流する~中国・都市大改造の波紋~」は、このような都市化政策が抱える矛盾点をよく捉えたものだった。番組の舞台となった河南省鄭州市では、農民工に居住証を与える代わりにスラムから追い出して再開発を行う、という改革が行われている。番組は、農民工にとって居住証を手に入れることは、社会保障や教育などの権利を手にする一歩になるが、同時に社会保険の負担も大きくなるためその取得に躊躇する、という農民工の心情を描いていた。
また2014年7月30日に中国CCTVで放送された「新聞1+1」という番組によれば、社会科学院の調査でも、農民工の75~80%が農村戸籍から都市戸籍に変わりたくない、と回答しており、とくに「土地を手放しても都市戸籍を取得したい」と回答したものは10%に満たなかった(「“城市”的戸口与“農民”的土地」)。
これは端的に言って、農民工の送り出しを行う地域と、受け入れを行う地域の改革が噛み合わないために生じている現象だといえるだろう。農民と都市住民の間にある、社会保障や住宅に関する差別をなくすための戸籍改革は、内陸部農村の農民工の送り出し地域でも盛んに行われている。これらの農村では、年々手厚くなる政府からの補助金によって、農民の収入、および農地の収益性は以前に比べてかなり上昇している。
すなわち、農民工にとっては、政府から与えられた土地の請負権さえ手放していなければ、出稼ぎを終えて帰った後に生まれ故郷の村、あるいは新型都市化によって成立した小都市で、都市住民と同じ社会サービスを受ける道が開けつつある。
既にみたように、都市住民になったときに得られる権利や生活の条件は、地域ごとの経済状況によって大きく異なる。上海のような大都市で戸籍を得ても、高い家賃と社会保険の負担にあえぎながら狭いマンションで暮らしていかなければならないのに対し、故郷に帰ればもっと豪華なマンションに住めて、土地の権利も手放さず、悠々自適で暮らせるかも知れないのだ。
少なくとも、生まれ故郷の改革がどうなるのか、状況を見極めなければ出稼ぎ先で戸籍を取得するのはリスクが大きすぎる、ということになる。さらには、現在の中国の社会保障、とくに年金制度は、地域ごとの経済状況の違いの大きさから、いまだポータビリティが十分ではない。それゆえ、大都市で戸籍を取った後に後悔してやっぱり故郷に帰ることにしたとしても、大都市で払いこんだ年金保険料は掛け捨てになる可能性が高い。
かといって慌てて故郷に帰ったとしても、大都市のように比較的高賃金の仕事がすぐに見つかるとは限らない。要は、農民という「身分」を捨てて大都市の住民になる、といった重大な選択を行うには、制度改革の方向性に関する不確実が大きすぎるのだ。農民工の少なくない部分がそれまで住んでいたスラム地区(城中村)を立ち退かされ、ホームレス同然の暮らしになっても居住証の申請をしようとしないのはそのためである。
以上のように、新型都市化政策には、現在までのところ課題が山積みであり、少なくともすぐにこれまでの投資主導型に変わる新しい成長パターンの柱になるようなものではないことが、次第に明らかになってきた。
たとえば、農村近郊の中小都市では、新たに都市戸籍を取得した人々の需要を当て込んだマンション建設が相次ぎ、明らかな供給過剰となっていた。しかしこのところの不動産価格の下落に伴い、中国政府は、住宅の供給過剰が特に深刻な中小規模の都市における低所得者向けの住宅建設をストップする方針を明らかにしている(「住建部部長:高庫存三四線城市不再新建安置房」)。昨年秋のAPECにおける習近平の発言以来、資本輸出型の成長パターンともいうべきシルクロード経済圏構想が大きくクローズアップされてきたのも、こうした国内事情と無縁ではないだろう。
では、こうした構想により、中国は新たな経済成長のパターンを創出できるのだろうか。それは中国資本によりインフラ建設を行おうとする周辺諸国の経済成長が軌道にのるかどうかに依存しており、未知数だと言うほかはない。
ただ、その動向を占う上では、国内金融システムの透明化、対外開放の動向なども重要な要素である。すでに早期創設の方針が示されている預金保険制度や預金金利の完全自由化といった国内金融改革の進展、さらには一部に「期待外れ」の評価もある上海自由貿易試験区の動向にも改めて注目が集まろう。
いずれにせよ、シルクロード経済圏構想に代表される中長期の経済発展戦略は、成長率の低下が避けられない情勢となった中国経済の将来を占う上で、極めて重要な意味を持っている。その動向を見極めるためには、「超大国」としての対外膨張的な側面にのみ目を奪われるのでなく、今後の都市化政策の進展など、国内の成長戦略との兼ね合いに絶えず目を配っておく必要があることを、改めて指摘しておきたい。
■参考文献
岡本信広(2014)「中国の都市システム-都市規模を抑制するのは合理的か?」ERINA REPORT No.121
厳善平(2014)「中国における戸籍制度改革と農民工の市民化-上海市の事例分析を中心に」『東亜』5月号
丸川知雄・梶谷懐(2015)『経済大国化の軋みとインパクト』 (超大国・中国のゆくえ4)東京大学出版会、近刊
サムネイル「上海の夜 Shanghai Night」Yuya Sekiguchi
プロフィール
梶谷懐
神戸大学大学院経済学研究科教授。博士(経済学)。専門は現代中国の財政・金融。2001年、神戸大学大学院経済学研究科博士課程修了。神戸学院大学経済学部准教授などを経て、2014年より現職。主な著書に『現代中国の財政金融システム:グローバル化と中央-地方関係の経済学』(名古屋大学出版会、 2011年)、『「壁と卵」の現代中国論』(人文書院、2011年)、『日本と中国、「脱近代」の誘惑』(太田出版、2015年)などがある。