2019.11.27
ヒュッゲ(Hygge)とは何か?――デンマークが幸せの国と言われる理由
はじめに
北欧諸国は「幸せ(Happiness)の国」と世界的に認識されている。とくにデンマークは、2012年に始まった世界幸福度報告(World Happiness Report, 2012-2019)で、毎年トップ3にランクインしており、これまで2度(2013、2015年)、世界一幸せな国の称号を得ている。日本は2013年の43位が最高位である。
また、その文化に根付く「ヒュッゲ(Hygge)」が幸せに関係していると世界的な注目を集めている。2016年には、イギリスのオックスフォード辞書が選ぶ「世界の今年の言葉(Word of the Year by The Oxford Dictionaries)」の最終選考に残り、2017年よりその辞書に掲載されている。日本でも様々なメディアで、幸せな生活を送るために着目すべきライフスタイルとして取り上げられている。
しかし、離婚率が毎年45%以上(2018年は46.51%※1)、アルコール中毒や鬱病患者をみかけることが稀ではないデンマークで生活していると、幸せな国といわれていること、その理由であるヒュッゲがブームとなっていることに対する違和感を無視できない。
そこで、最新の幸福度報告(Helliwell et al., 2019)により、デンマークが幸せな国と言われる理由を確認するとともに、ヒュッゲとは何か、またデンマーク人によるヒュッゲと幸せの関係について考察する。
※1 Statistics Denmark:https://www.dst.dk/en
世界幸福度報告でデンマークが幸せの国と言われる理由
「幸せ(もしくは幸福):Happiness」という言葉の定義は多様で一義ではない。デンマークを幸せの国とした世界幸福度報告で、幸せをどのように定義しているのか確認する。
世界幸福度報告は、Ernesto Illy Foundationの協力のもと、国際連合の持続可能開発ソリューションネットワーク(United Nations Sustainable Development Solutions Network)が2012年以降毎年発表している(2014年を除く)、世界157か国の3年間の平均幸福度の不平等さのばらつきを分析した報告書である。この報告では、主に生活評価(life evaluations)、幸せ(well-being)に関する肯定的な感情(positive affect)と否定的な感情(negative affect)の3点について、回答者が主観的に評価した結果をまとめている。
生活評価の測定には、6つの基本変数についてキャントリルの梯子(Cantril ladder)を使用している。これは、考え得る最悪の生活を0、最良の生活を10とし、回答者自身の現在の生活を11段階に当てはめ評価する。使用されている6つの基本変数と確認内容を表1に示す。
国別幸福度の順位は、上記6つの基本変数の各梯子スコアの他、各変数の梯子スコアへの影響度を足し合わせ、その合計値が多い順に並べている。つまり、この6項目の総合ポイントの総計と項目間のつながり度合いの強い国を「幸せな国」と定義している。2019年の結果は、デンマークはフィンランド(スコア7.769)に続き第2位(同7.6)であった。日本は58位(同5.886)であった(図1)。
この結果から、デンマーク人は生産性と人生の選択の自由度が高く、社会的繋がりが強い、他者への奉仕精神のある、汚職のないクリーンな社会で生きている寿命が長い幸せな人々だという印象を受ける。しかし、各基本変数を見ると、必ずしもそうとは言えない。
ポイントの詳細が確認できないためランキング順位での検討となるが、汚職・腐敗のなさ(3位)、社会的支援の存在(4位)、人生選択の自由度の高さ(6位)は世界上位10位に入っているものの、金銭的寛大さは22位、国民一人当たりのGDPは14位、健康寿命は23位という結果だった。健康寿命だけで見ると、日本の方が長い(2位)。
また、この報告では、「幸せ(well-being)」に関する補足変数として、調査前日終日の感情を平均して評価する、肯定的な感情と否定的な感情の調査をしている。肯定的な感情では、「幸せ、笑い、楽しいといった感情があったか」を、否定的な感情については、「悲しい、心配、怒りといった感情があったか」を0から1の間で評価している。
前日に肯定的な感情が占めていた国のトップ3はパラグアイ(総合63位)、ソマリア(同112位)、アイスランド(同3位)であり、デンマークは、24位、日本は73位だった。対して、前日に否定的な感情が占めていた国のトップ3は台湾(総合25位)、シンガポール(同34位)、アイスランド(同3位)であり、デンマークは26位と14位の日本よりも低い(前日に否定的な感情については、国の順位が高いほど、否定的な経験が少ない)。個人の調査前日の状況による質問だが、デンマーク人が平均的に、つねに肯定的な感情で暮らしていないことが読み取れる。
世界幸福度報告は、政治的・経済的にみた資本主義的充実度を幸せと定義、評価した結果であり、個人の感情について定義したものではない。しかし、この報告上の幸せの定義には含まれないが、人間の幸せにつながる活動における幸せな感情は、補足変数にあるように無視することはできない。
デンマーク政府が主張する幸せの理由と実際
世界幸福度報告の結果を受け、デンマーク外務省は自国PRページ※2上で、「幸せは社会的平等と共同体意識に深く関わるものであり、デンマークはその両者を実現した福祉国家である」と述べている。そして「なぜデンマーク人は幸せなのか?(Why are Danish people so happy?)」と題し、デンマークが福祉国家である4つの理由を挙げている。PR用ではあるが、デンマーク人が主張する幸せであることから、この内容を確認していく。
※2 デンマーク外務省:https://denmark.dk/people-and-culture/happiness
理由1:高額な納税に基づく福祉システムの充実
デンマーク政府によれば、デンマーク人の多くが「人は可能なかぎり労働するべきであり、公益のために納税する義務を果たすべきである」と確信しているという。そして、25%の付加価値税(VAT)や150%の新車の車両登録税といった高額な納税により、人々は充実した社会的支援を受けられるとしている。支援事例には、医療費の大部分が無料、大学の学費無料、育児助成金の支給、高齢者の年金支給とヘルパーの無料自宅派遣の他、社会セイフティー・ネットが確立されており、若年者、年配者および病人を支援するだけでなく、就職支援として失職者に最長2年間の失業保険の支給がある。
実際には上記以外にも、公立の就学前クラス(1年間)と初等および中等教育(9年間)の学費無料等がある。これらの社会的支援は、CPR番号※3と呼ばれる国民識別番号を保有していれば、永住権を持たない外国人にも適応される。また、デンマーク在住3年半未満のCPR番号を保有する外国人であれば、5年間のデンマーク語学習支援を受けられる。提携校の授業料と語学習得試験料の一部を負担してもらえるこの支援は、2018年1月以前は、学習開始後3年間は全て無料だった。
これら多数の公的支援を維持するためには、相当の税収が必要になることは言うまでもない。デンマーク統計局のデータ※4を確認すると、成人(18歳以上)人口および租税額(taxes and duties)は2008年以降2018年まで上昇傾向にある。この10年間の成人一人当たりの納税額も上昇傾向にあり、一人当たりの税負担が年々大きくなっている。
また、デンマークの税率は年間収入によって異なり、給与所得や社用車への課税は3段階に分かれる。年間収入0~46,200DKKは8%、それ以上では自治体によって異なり、コペンハーゲンの場合、年間収入46,200~558,043DKKは41%、年間収入558,043DKK以上は56%である(Deloitte, 2019)。収入の大きい者がより多く納税負担を強いられるシステムとなっている。
日本から見ると、デンマークは税負担が大きいが、ライフワークバランスを実現している印象が強い。2018年の1人当たりの年間平均労働時間を見てみると、OECD平均で1734時間、日本は1680時間に対し、デンマークは1392時間と短い(OECD, 2018)。
しかし、全デンマーク人の労働時間が短いわけではなく、年間収入額が高い高額納税者ほどハードワーカーであり、ライフワークバランスなど無いに等しいことも多い。これは企業のマネージャー以上、とくにマネジメントレベルの人に見られ、帰宅後も家族との食事、団欒、家事の後や、長期休暇中の滞在先で仕事をしていることもある。そのため、自分自身や家族との時間を優先することを理由に、プロモーションを断る者もいる。
デンマークでは、長時間労働をすればその分給与に反映されるということはない。ポジションが上がるほど責任や負担が大きくなるため高額な給与を得られるが、結果を出さなければ何時でも解雇される。
その一方で、難民としてデンマークに移住し、納税額が低いものの、社会的支援により生活が保障され、自国では不可能だった教育を受けられる人々もいる。そのため、税金の負担額が年々増える高額納税者の中には、自分たちの社会的負担の大きさに対し不満を持つ者もいる。
※3 CPR番号の取得には、デンマークに3か月以上滞在し、EU外市民であれば居住許可を持ち、実際に共住する住処と有効な住所があることが必須である。
※4 Statistics Denmark:https://www.dst.dk/en
理由2:信頼・信用(Trust)を重視した文化・社会と、他国と比較した場合の安全性(Safety)の高さ
デンマーク政府は、個人的な関係だけでなく、ビジネスや政治すべてにおいて、「信頼・信用」がデンマーク文化・社会の重要な要素であると述べている。人間関係において各自が正直であることが期待されており、ビジネスや政府職員の汚職・腐敗が稀であるという。また、デンマークは、他国より昼夜「安全」で、周囲の人々の目も行き届いており、8歳程度の子供でも一人旅や公共交通機関を利用でき、赤ん坊を日光浴のために屋外の乳母車に寝かせたままにしていても問題はないとしている。
実際に、信頼と信用の重要性を目にすることは多く、例として就職活動では、縁故や個人的な知り合いによる繋がりや、過去に当該企業に勤務した経験を重視されることが多い。個人のネットワークを広げることが重要で、求職者向けの講座もある。
国際的にもデンマーク公的機関の信頼性への評価は高い。Transparency Internationalが13の調査と専門家による査定に基づき、180カ国・地域の公的機関の腐敗度を、0点(高い腐敗度)から100点(非常に清潔)までの点数で測る腐敗認識指数(Corruption Perceptions Index)があるが、2018年は88点で世界1位となった(日本は73点で18位)。デンマークは、2012年以降2016年までつねに首位を保ち、2017年にはニュージーランドに続く2位となっている(Transparency International, 2014 & 2018)。
しかし、この2017年、IT企業のCEOが市の課長に金銭を贈与、デンマーク国税庁が詐欺師とチベット支持者のデモのために120億DKKを支払うといった事件が起きている。また、企業による海外政府への賄賂の問題が複数発生している以外にも、デンマーク最大の銀行Danske Bankが顧客の個人情報の漏洩を起こした他、同エストニア支店がマネーロンダリングに関与していた問題も起きている。
安全性の面でも、デンマークの世界的な評価は比較的高い。経済平和研究所(Institute for Economics & Peace)が示す世界の戦争、内戦、殺人事件、暴力事件、兵器の輸出入に関する23項目について調査・算出した世界平和度指数(Global Peace Index)で、2019年はアイスランド、ニュージーランド、ポルトガル、オーストリアに続く第5位であった(日本は9位)(The Institute for Economics & Peace, 2019)。
日常では、政府の事例のように、親がカフェ店内でお茶を飲んでいる間、赤ん坊が屋外のベビーカーで寝ている姿を頻繁に見る。しかし、一部の地域では、ギャングの抗争や宗教に起因する発砲事件も起きており、すべての地域が安全とはいえない。
理由3:日々の忙しさから離れ、生活の中で良いものを楽しむヒュッゲ
デンマーク政府は、ヒュッゲは「シンプルで良い人生の一部を、自分の大切な人々と過ごすこと」と定義している。例として、寒い冬は屋内で友人たちと温かい飲み物を飲みながらゲームや会話を楽しみ、屋外では自然の中を歩きながら動植物と寒さの関係に思いをはせ、夏はサマーハウスの庭で、地産地消のホームパーティーを開催することをあげている。多くの場合、家族や友人と共にいることでヒュッゲに過ごせるが、自分一人でも、気に入った本やテレビ番組を見ながら過ごせば、それもヒュッゲだという。
ヒュッゲという言葉は、19~20世紀にかけて、ノルウェー語の動詞「慰める(to console)、元気づける(to encourage)」を起源とし、デンマークの社会的エトスとして確立された(Levisen, 2012)。18世紀のノルウェーでのヒュッゲは、1)安全な住まい、2)快適かつ嬉しい経験(とくに自宅や家族との)、3)子供など他者への思いやり、4)他者が親しみやすく癒され、信頼・信用を得やすい文明化された行動様式、5)華麗でもスタイリッシュ過ぎもしない、きちんと掃除され手入れの行き届いた家のことであった(Linnet, 2011)。
後にHansen(1976)は、「ヒュッゲは、リラックスした精神状態で、快適で幸せかつ安全な状態になること及びあらゆる小さな楽しみの中で当面の状況を自由に楽しむこと(hygge is to be in a state of pleasant well-being and security, with a relaxed frame of mind and open enjoyment of the immediate situation in all its small pleasures.)」と定義している。
ヒュッゲブームの発端となった英語での意味を辞書で確認すると、「デンマーク語で、温かい居心地の良い快適で安全な状態のことであり、ろうそくの灯火、パンを焼くこと、家族と自宅で過ごすといったシンプルな行動から発生する/a Danish word for a quality of cosiness (= feeling warm, comfortable, and safe) that comes from doing simple things such as lighting candles, baking, or spending time at home with your family※5」や「幸福を感じられる温かく穏やかな様になる資質/the quality of being warm and comfortable that gives a feeling of happiness※6」としている。
ヒュッゲの本来の意味は、幸せの理由2に通じる肉体的・精神的な安全性や他者との信頼・信用関係のことを指しており、他者とのコミュニケーションにより成り立つ快適で心地よい状況であった。そのため、デンマーク政府も支持している「一人ヒュッゲ」は、より拡張された寛容的なヒュッゲの解釈だと言える。デンマーク人に確認すると、一人ヒュッゲに対する支持は分かれた。
※5 ケンブリッジ辞書電子版:https://dictionary.cambridge.org/
※6 オックスフォード辞書電子版:https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/
理由4:各自が持つ自分が生きたいと思う人生を選択できる権限
デンマーク政府によると、幸せと権限を持っていること(empowerment)は深く関係しており、デンマーク社会において、人々は自分が望む人生を選択できることから、国民の人生の満足度は高いという。
Bjørnskovら(2009)は、競争を促し、平等な機会と経済的自由を可能にする政策と制度を実施することは、全体的な福祉に対し有益であるという。デンマークの労働市場は、「フレキシキュリティー(Flexicurity)モデル」と呼ばれ、基本的に終身雇用制度はないが権利保障が手厚く、労働者は比較的頻繁に転職することができ、企業も比較的簡単に解雇することが可能である(Aasen et al., 2016)。つまり、平等な成功機会と十分な経済機会がある社会的流動性の高い国であるといえる。デンマークが世界幸福度報告で1位となった2015年の転職率は約7%で、EU内で2番目に高い数値となっていると同時に、雇用率も73.5%とEU平均65.6%よりも高い(Aasen et al., 2016)。
この2015年、デンマーク統計局は18歳以上の成人に対し、生活の質(Quality of life)に関する調査を行い、42,500人の回答を得た(図2)。生活の質とは、OECDの「各人の自分の人生や経験に対する人々の感情的な反応に思う、様々な評価、肯定、否定を含めた健やかな精神状態」を意味している。
この調査の回答者は、①近頃、自分の人生に、どの程度満足しているか(図2:青色)、②今後5年間において、自分の人生に、どの程度満足できると思うか(図2:緑色)という2つの質問に、0(満足していない)から10(満足している)の11段階で答えている。図2より、デンマーク人は、長期的な感情的幸福を評価した場合、自分の人生を総じて肯定的に捉えており、とくに若年者ほど将来に対し肯定的な感情を持つ傾向にある。これには、理由1の社会保障の充実、理由2の信頼と安全な文化・社会が関係していると思われる。
以上より、デンマークという国は様々な問題や課題があるものの、その国民は政治的・経済的だけでなく個人の感情面でも、長期的に幸せと感じられる人々であることが分かる。違いはあれども根本的に同質の常識やモラルに基づいた文化や価値観を持ち、その文化・社会を基盤とする様々な政策・制度を持っていることが、幸せを形成できる理由であると考えられる。
デンマーク人の幸せ(Lykke)とヒュッゲ(Hygge)
歴史的に見ると、1960年代のデンマークは自殺や憂鬱と結びつけられ、他の北欧諸国も含めて自殺研究の対象となっていた。しかし現在では、デンマーク人の幸せ(Danish happiness)は、英語国際メディアにより過去と対比され注目されている(Levinsen, 2014)。しかし、我々は、英語圏もしくは英語を通したデンマーク人の幸せ(happiness)について触れてきたが、デンマーク語からは検討していない。
英語のhappinessにピタリと合致する言葉が、デンマーク語にはない。Levinsen(2014)は、世界幸福度報告の「前日に肯定的な感情(=幸せ)が占めていたか」という質問に対するデンマーク人の評価が低い理由は、言葉の捉え方の違いにあるのではないかと述べている。この質問のデンマーク語版では「lykke(=日々の幸福/everyday well-being)」と翻訳されており、デンマーク人にとって「昨日、何か非常に素晴らしい(fantastic)ことはあったか」と聞かれていることになる。
Linnet(2011)によると、lykkeはヒュッゲと並べて考えられることが多く、どちらも文化的理想を指しているという。人々が自分の心の内を見つめ、外部の競争をもたらすヒエラルキーに背を向け、それを注目に値しないものであると宣言することになる。また両概念は同じ文化価値の複合体として扱われ、lykkeは個人の中で、ヒュッゲは社会形態の中で実現する傾向にあるとしている。この考えに従えば、一人ヒュッゲはデンマーク的ヒュッゲではないと言える。
つまり、ヒュッゲは平等主義、家庭主義、中流階級的生活、精神世界への関心といったスカンジナビアの文化と日々の生活において起こるものであり、様々な方法で、社会階層や競争、市場に反す一時的なシェルターを必然的に作り上げる活動である。これは、デンマーク社会の一端にある、排他的な文化でもある(Linnet, 2011)。
物質的な充実を求める資本主義の競争関係を否定し、相関的な平等主義を実現することで、個々の心の安全と快適さを追求するヒュッゲと、自己の心の中を見つめていく内向的な文化的活動が、デンマーク人の幸せとなっていると考えられる。厳しい自然の中で安全で快適に生きていくための知恵と言えよう。
おわりに
すべてのデンマーク人が本当に幸せかは分からない。ただ、彼らの多くが将来に希望を持てる生活を送っているということは、幸せの国と言えるのかもしれない。デンマーク人のヒュッゲは、彼らにとって幸せの一部であり、厳しい自然の中で安全に生きるための知恵と努力の積み重ねによってできたものだといえる。ヒュッゲがブーム化しているのは、現在の競争社会において疲弊してしまった人々が、自分を守る方法を探した結果なのかもしれない。
日本にも生きていくために引き継いできた知恵と努力の歴史と結果がある。その中に、デンマークとの共通点も多い。しかし、デンマーク人と大きく異なるのは、他者と自分との関係性を見る目と、社会の一員としての義務と権利の実現の仕方だろう。
幸せは誰かに与えられるものでも、自然と発生するものでもない。幸せは、自他の関係性を見つめると同時に、自己の考え方や感じ方から見つけだし、つくり上げていくものなのではないだろうか。ヒュッゲをブームにするのではなく、日本人の知恵と良さを見直す鏡とし、個人の幸せと社会に果たす責任の上での幸せを同時に満たす方法を考える参考にしてはどうだろうか。
Reference
・Aasen,F, Leszczuk, J., & Pojar, S. (2016). Tackling Denmark’s Post-Crisis Labour Market Challenges. European Economy Economic Brief, 13.
・Bjørnskov, C., Dreher, A., Fischer, J. A.V., & Schnellenbach, J. (2009). On the Relation between Income Inequality and Happiness: Do Fairness Perceptions Matter?. CEGE Discussions Paper, No. 91.
・Deloitte. (2019). Working and living in Denmark Tax 2019, Denmark
・Hansen,J.F. (1976). The Proxemics of Danish Daily Life. Studies in Visual Communication, 3 (1), 52-62.
・Helliwell, J., Layard, R., & Sachs, J. (2019). World Happiness Report 2019, New York: Sustainable Development Solutions Network.
・Institute for Economics & Peace. (2019). Global Peace Index 2019: Measuring Peace in a Complex World, Sydney: Available from: http://visionofhumanity.org/reports.
・Levisen, C. (2012). Roots of Danish sociality: Hygge as a cultural keyword and core cultural value. Cultural Semantics and Social Cognition: A case study on the Danish universe of meaning. Berlin: Mouton de Gruyter. 80-114.
・Levisen, C. (2014). The story of “Danish Happiness”: Global discourse and local semantics. International Journal of Language and Culture, 1 (2), 174–193.
・Linnet, J.T. (2011). Money Can’t Buy Me Hygge: Danish Middle-Class Consumption. Social Analysis, 55 (2), 21-44.
・OECD (Organisation for Economic Co-operation and Development). (2018). OECD Data – Hours worked: Available from: https://data.oecd.org/emp/hours-worked.htm
・Transparency International. (2014 & 2018). Transparency International’s Corruption Perceptions Index: Available from:
https://www.transparency.org/cpi2018 & https://www.transparency.org/cpi2014/results
・Statistics Denmark. (2015). Available from:
https://www.dst.dk/en/Statistik/emner/levevilkaar/livskvalitet/livskvalitet
プロフィール
内田真生
日本で重工メーカー、ビジネスコンサルティング会社勤務後、2014年~2017年オールボー大学Master in Problem Based Learning in Engineering and Science )でProject/Problem-Based Learning (PBL)を研究。現在、デンマークにて、PBLを活用した大人の教育方法を研究中。