安倍内閣のエネルギー・原発政策

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2030年の原発依存度は15%程度か

 

表1からわかるように、「40年廃炉基準」を厳格に運用した場合には、2030年末の時点で、現存する48基のうち30基の原子力発電設備が廃炉となる。残るのは、18基1891万3000kWだけである。この18基に建設工事を再開した中国電力・島根原発3号機と電源開発(株)・大間原発が加わったとしても、2030年の原子力依存度は、2010年実績の26%から4割以上減退して、15%程度にとどまることになる。

 

 

表1 「40年廃炉基準」が適用された場合の2030年末時点での原子力発電所の運転状況

出所:電気事業連合会編『電気事業便覧 平成22年版』(日本電気協会、2010年)にもとづき筆者作成。 注:最大出力は、2010年3月末時点での数値。

出所:電気事業連合会編『電気事業便覧 平成22年版』(日本電気協会、2010年)にもとづき筆者作成。
注:最大出力は、2010年3月末時点での数値。

 

2030年の原発依存度15%程度という見込みについては、2012年の総合資源エネルギー調査会基本問題委員会において、経済産業省資源エネルギー庁が示した試算が参考になる。

 

表2に示したこの試算によれば、原子力発電所の稼動年数を40年とした場合、2030年における原発依存度は、稼働率が70%の場合には既存原発だけで13%、それに加えて島根原発3号機が運転を開始すると14%、さらに大間原発が運転を開始すると15%となり、稼働率が80%の場合には既存原発だけで15%、それに加えて島根原発3号機が運転を開始すると16%、さらに大間原発が運転を開始すると17%となる。

 

つまり、「40年廃炉基準」が効力を発揮すると、2030年における原発依存度は15%前後となるわけである。なお、2030年の電源ミックス全体は、原子力15%、再生可能エネルギー(水力を含む)30%、火力40%、コジェネ15%となるのではなかろうか。

 

 

表2 稼動年数を40年とした場合の2030年における原子力発電の規模

出所:資源エネルギー庁『原子力発電比率について(これまでの議論を受けて)』(2012年4月)。 注:1.「比率」は2030年の予想総発電電力量(1兆kWh)に対する割合。 注2.「新増設1基」は中国電力・島根原子力発電所3号機の稼動を、「新増設2基」はそれに加えて電源開発(株)・大間原子力発電所の稼動を、それぞれ想定している。

出所:資源エネルギー庁『原子力発電比率について(これまでの議論を受けて)』(2012年4月)。
注:1.「比率」は2030年の予想総発電電力量(1兆kWh)に対する割合。
注2.「新増設1基」は中国電力・島根原子力発電所3号機の稼動を、「新増設2基」はそれに加えて電源開発(株)・大間原子力発電所の稼動を、それぞれ想定している。

 

原発をめぐる世論の「混乱」を読み解く

 

原発再稼働をめぐる現在の世論は、一見、混乱しているようにみえる。

 

原発のあり方について、中長期的な見通しをたずねると、世論調査で多数を占めるのは「将来ゼロ」であり、「即時ゼロ」や「ずっと使い続ける」は少数派である。「将来ゼロ」とは、「当面はある程度原発を使う」ことを意味する。

 

一方、より短期的な見通しにかかわる原発の再稼働の賛否についてたずねると、世論調査で多数を占めるのは「反対」であり、「賛成」ではない。「再稼働反対」とは、事実上、「原発即時ゼロ」につながる意味合いをもつ。

 

つまり、原発をめぐる世論は、中長期的見通しと短期的見通しとでは矛盾した結果を示すという、不思議な現象がみられるわけである。この現象について、どのように理解すれば良いのだろうか。

 

筆者(橘川)の理解によれば、世論の真意は、どちらかと言えば「当面はある程度原発を使うことはやむをえない」という点にある。しかし、安倍内閣が進める原発再稼働のやり方には納得できない。

 

2014年4月に閣議決定した新しいエネルギー基本計画で電源ミックスを明示することを避けた点に端的な形で示されるように、論点をあいまいにし、決定を先送りして、こそこそと再稼働だけを進める。このような政府のやり方に対して、「当面はある程度原発を使うことはやむをえない」と考えている国民の多くも反発を強めており、再稼動の賛否のみを問われると、「反対」と答えているのである。

 

 

迫る最終期限のCOP21

 

政治家や官僚は、しばしば、原発再稼働の先行きが不透明だから、電源ミックスの策定は時期尚早だと言う。事実上、問題を原子力規制委員会に委ねているわけであるが、これは、おかしなことである。

 

規制委員会は3条委員会として設立されたのであり、その根幹にあるのは、原子力規制政策とエネルギー政策は切り離して、それぞれ独立させるという大原則である。規制政策は規制政策として、エネルギー政策はエネルギー政策として、別個に確立されなければならない。

 

規制委員会の動向をみきわめてから電源ミックスを決めるとする政治家や官僚の主張は、規制政策とエネルギー政策を混同させるものであり、両者の相互独立という大原則から逸脱したものだと言わざるをえない。

 

筆者自身は、いわゆる「40年廃炉基準」の存在を考慮に入れると、2030年の電源ミックスにおける原発依存度は、3.11前と比べてほぼ半減し、15%程度になると考えている。

 

また、使用済み核燃料の処理問題の解決は困難であるため、現在、原発建設に熱心な新興国を含めて、原子力は人類全体にとって、今世紀半ばごろまでの過渡的なエネルギーにとどまると見込んでいる。その意味で、我々は、「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を真剣に議論すべき時期に来ている。

 

このように、原発・エネルギー政策のあり方をめぐっては、様々な考え方がありえよう。ただし、いろいろな意見があることに、たじろいでいてはいられない。電気料金再値上げの動きが顕在化しているが、すでにエネルギーコストの増大が日本経済全体に大きな打撃を与えている現実に目を向けるならば、もはや、一刻の猶予も許されない。

 

今、大切なことは、あいまいな形で問題を先送りするのではなく、意見をぶつけ合ったうえで現実的・建設的な選択を行い、できるだけ早く、電源ミックスを含むきちんとした形で原発・エネルギー政策を決定することである。

 

原発・エネルギー問題に関して政治のリーダーシップが機能しない直接的な理由は、政治家が選挙を気にせざるをえないからである。したがって、今回の総選挙と来春の統一地方選挙が終わるまで、電源ミックスの策定は先送りされるのではないか。

 

一方で、温室効果ガス排出量削減の2020年以降の具体的枠組みを決定するパリでのCOP21(第21回国際連合気候変動枠組み条約締約国会議)は、来年11月末に迫っている。その5ヵ月前の6月には、COP21へ向けた実務的な検討が始まる。それまでに原発依存度を含む電源ミックスを決めなければ、わが国は、2020年以降の温室効果ガス排出量削減目標を国際社会に明示することができなくなる。残された時間は、けっして長くはない。

 

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