定数格差とねじれ国会

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定数格差の現状

 

定数格差の指標として通常使われるのは、最大最小比といわれる数値です。定数格差に関する判決において「定数格差3倍以上は・・・」といわれるときに用いられる定数格差は、議員定数を選挙区人口で割った数値について、選挙毎に最大と最小の比を算出した値を言及したものです。一人一票原則が最大限尊重されるなら、最大最小比は1に落ち着きます。この最大最小値を用いて、衆参両院の定数格差の変化を示したのが図1です。なお参議院については選挙毎の改選議席分を対象としており、非改選議席の定数格差については無視しています。

 

 

図1 最大最小比で見た衆参定数格差

図1 最大最小比で見た衆参定数格差

 

 

1947年4月に新憲法による最初の選挙が行われて以来、1970年代半ばにいたるまで、一票の格差はとくに衆議院と参議院選挙区で拡大をつづけました。その理由は高度成長によって、農村から都市へ急速な人口の移動が起こったことです。公職選挙法は5年毎に行われる国勢調査の結果を反映させるかたちで定数再配分がなされることを定めていますが、少なくとも1960年代半ばまで定数再配分は一切なされていません。

 

1962年、米国連邦最高裁で定数格差是正につながる判決が下され、一人一票原則が連邦下院や州議会で適用されはじめました。これをきっかけに、日本でも定数格差訴訟の件数が増加していきました。1976年4月に下された最高裁判決において、最大最小比で4.99倍に広がった衆議院定数格差(1972年総選挙)が違憲と判断されました。

 

参議院については、総定数が少ないことや、半数改選であるなどの制約条件があり、選挙区での定数格差は92年には6.59まで拡大しました。これも最高裁が1996年9月に違憲状態との判決を下しています。

 

衆議院では中選挙区制の時代に1964年、75年、86年、92年小規模な定数是正もしくは選挙区割り変更がなされました。94年の選挙制度改革の副産物として、大規模な定数格差是正がなされました。つづいて2002年に選挙区割りが変更されました。

 

参議院では92年選挙のあとに7つの選挙区で8増8減の定数格差是正がなされ、2000年、2006年に小規模の定数再配分がなされました。この効果もあり、最大最小比で見た定数格差は5倍程度で安定しています。

 

しかし、定数格差の指標として最大最小比を用いることには大きな限界があります。まず第一に、外れ値の影響を受けやすいことです。ひとつでも例外的に過大代表されている選挙区があれば、他の選挙区での人口が平等であったとしても、外れ値を拾ってしまいます。

 

二つ目の限界は、1996年以降、並立制で行われている衆議院選挙や、全国区・比例区が選挙区での選挙と組み合わさるかたちでつづいてきた参議院のように、複数の選挙制度が共存している選挙制度での定数格差の度合いを比べることが困難なことです。図1には、並立制導入後の衆院比例ブロックの定数格差を示していますが、ブロック間には格差はほとんどありません。いうまでもなく、かつての参議院全国区、現在の比例代表区は全国一区であり、定数格差は存在しません。

 

そこで定数格差の全体的な傾向を把握するためには別の指標を用いる必要があります。不平等の指標にはジニ係数などがありますが、ここでは便宜的に、ルーズモア・ハンビー指標(LH指標)を「定数格差指標」として用います。この指標は、各選挙区の人口比と議席比の乖離を絶対値として算出し、全選挙区の数値を足しあわせてパーセント表示したもので、表計算ソフトで簡単に計算できます。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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