増加する「非正規公務員」とはなにか?

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非正規公務員問題は、私たちの社会を映す鏡

 

――給与や勤務条件は、どうなんですか。公務員って、給与は法律で決められますから、民間労働者のような格差はなく、平等なのでは?

 

残念ながら、ここにも実態と印象のずれが生じています。

 

2012年で比較してみると、一般行政職の正規公務員の平均年収総額は624万3437円です(注6)。これに対し、事務職の非正規公務員の年収は、市区町村の臨時職員が159万6218円で4分の1に過ぎません。市区町村の臨時職員の平均週勤務時間は36時間30分、常勤の正規公務員は38時間45分。その差は、週2時間15分、1日27分だけです(注7)。それでいてこの賃金格差です。

 

(注6)総務省「平成24年度地方公務員給与実態調査」によると、平成24年4月1日現在の一般行政職の平均給料月額は33万1189円、平均諸手当額は8万0081円。年間の一時金は給料月額の3.95月として130万8197円が支給されたものとして推計。

 

(注7)総務省「臨時・非常勤職員に関する調査結果について(平成24年4月1日現在)」より計算。

 

先ほど、非正規は正規を代替し、同じ仕事を引き継いだと指摘しました。ほぼ同じ勤務時間で、同じ仕事をしているのに、給与は正規公務員の4分の1という状況が放置されているのは、賃金格差というより「賃金差別」だといえるかもしれませんね。

 

 

――差別ですか……。

 

そうです。差別です。それも雇用形態の差異を装った「間接差別」というものです。

 

非正規公務員は全国に60万人いるとお話しました。このうち45万人は女性です。彼女たちの多くが年収200万円未満のワーキングプア水準で働いている。

 

男女間の賃金格差は、性別に着目し異なる取り扱いをする「直接差別」に対し、一見、性別に関係のない取り扱いであっても、運用した結果、男女どちらかに不利益が生じる場合があり、これは間接差別といわれています。

 

日本の民間企業の正社員における男女間賃金格差は、30%弱です。これに対し公務員では正規公務員における男女間賃金格差は15%ほどです。ですから公務員は男女間賃金格差が少ないといわれてきた。ジェンダーフリーだと。

 

ところがです。男性が多数を占める一般行政職の正規公務員と女性が大半を占める非正規公務員の賃金格差に着目すると様相が異なる。比較可能な統計(注8)で、時間給で比較すると、男性正規公務員100に対し、臨時職員34、非常勤職員49となるのです。

 

(注8)総務省「臨時・非常勤職員に関する調査結果について(平成20年4月1日現在)」と総務省「地方公務員給与実態調査(平成20年4月1日現在)」より推計。

 

繰り返しますが、臨時職員、非常勤職員といわれる非正規公務員の大半は女性です。ですから、男性正規公務員の2分の1から3分の1という、これほどまでの賃金格差は、雇用形態の差異を装った「間接差別」なのです。

 

 

――最後に、今後の方向性について、お話いただけますか。

 

『スーパーの女』という映画をご存知ですか。今は亡き伊丹十三による脚本・監督の作品です。20年前の1996年に公開されました。あるスーパーマーケットで働いていた主婦パートの女性が、売り場改革を進め、幼馴染の経営するダメスーパーマーケットを立て直していくというストーリーです。

 

スーパーマーケット業界というのは、従業員の7割がパートといわれる非正規労働者なんです。そのスーパーマーケット業界では、20年前に伊丹監督が描いたことが本当に起こっている。つまりパート労働者が売り場の責任者になって、品揃えをし、生鮮食品の研究をし、発注もしたりしているんです。

 

パート労働者はスーパーマーケット業界で基幹化し、正社員と同様の働きをし、同時にそのようなパフォーマンスを期待されている。

 

この段階になると、賃金などの処遇に関して格差が生じていると正規労働者との間で軋轢が生じる。場合によっては職場が深刻な状況に陥る。そこで気の利いた使用者は、パートの処遇を改善し、定着を促し始めるようになる。一部は、無期雇用の正社員や限定正社員となる。そうしないと店が回らないからだし、客が寄り付かないような職場になってしまうからです。

 

こんなことをいうと、身分が保障された公務員に怒られるかもしれませんが、公共サービス分野も、スーパーマーケット業界並みのことを考えていく時期にさしかかっていると思います。

 

だって、非正規公務員をあてにしないと仕事が回らない、仕事に最も精通しているのは非正規公務員という段階にあるからです。

 

基幹化した職員に相応しい処遇と雇用の安定が求められているのだと思います。逆に、そうしないと、市民の生活のセイフティーネットである公共サービスは、持続できないでしょうね。

 

もし、そんなことになったら、ただでさえ足りない公共サービスがますます不足し、政府への不信、公務員不信が高まり、「小さな政府」へさらに突き進み、公共サービスを本当に必要とする人々が放置され、格差という社会の亀裂が深まることになるでしょう。

 

非正規公務員という問題は、私たちが作りあげてしまった社会を正直に映しているのだと思いますよ。

 

 

―― 上林さん、本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

(このインタビューは、筆者自身によるものです)

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