世論調査の現状をデータで整理する

政策はどのように聞かれているか

 

政策について聞くものも一部にはある。ただしそれらは次のようなものである。

 

 

「菅内閣は、デフレや円高など、今の経済情勢に、適切に対応していると思いますか、そうは思いませんか。」(読売12月)

 

「政府は来年度税制改正で、法人税の実効税率を5%引き下げることを決めました。あなたはこれを評価しますか、しませんか。」(日経12月)

 

「行政のムダを減らす取り組みの一環として、菅内閣は事業仕分けをしています。事業仕分けによって行政のムダが削減できると期待しますか。期待しませんか。」(朝日11月)

 

 

つまり、政府の政策について回答者がどのように感じているか、評価しているか、聞くものである。

 

個人的には、これではあまり的確な分析はできないと考える。たとえば法人税率5%引き下げを評価しない理由は「引き下げるな」なのか、「もっと引き下げろ」なのかわからない。有権者のどのような意見や感覚が、政党の支持や不支持に関係しているのか、これでは分析できないからである。それでも、新聞記事では「○○が要因となったようだ」と要因を指摘しているようだが。

 

いずれにせよ、政策について聞くなら、有権者がどう考えているのかを中心に聞いたほうが、よりマシな分析ができるだろう。

 

 

質問内容の季節変動

 

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表3は、月別に先ほどの3項目の割合を示している。参院選前後は消費税、年初と9月の民主党代表選前は小沢一郎氏、4、5月は普天間、10、11月は尖閣と外交安保関係の質問が大きなシェアを占めている。つまり、何か事件が起きたら、それに反応して調査をしているのである。

 

典型的な例をみてみよう。読売新聞の10月の世論調査では、政党支持などの必須項目と、先に示した「優先的に取り組んでほしい課題」の質問を除くと11問の質問がある。この11問のうち、9問が外交・安保関連の質問、残り2問は検察の問題となっていた。

 

外交安保も重要であることは間違いないが、現代日本社会には政治的解決が求められている重要な課題がたくさんあるはずである。それなのに、来年度予算に向けてさまざまな動きが起きている時期に、こんなことばかり聞いているわけである。

 

このように、政治部が大事なネタだと思っている一方、有権者は大して重視していない、関心を示していないような事柄についてやたら聞いているのが、現代の政治部主導の世論調査の実態なのである。

 

 

2011年、世論調査の課題

 

ここで紹介したようなデータを、ある会合で示し、こんな一過性の役に立たない調査をするよりも、もっと政策的なことがらを聞いたほうが賢い分析ができるし、世の役に立つのではと指摘したところ、その場にいた新聞記者からは、政策について聞いたって毎回同じような答えしか返ってこないし、と正直な感想をもらった。つまり、そのときどきに問題となっているような事柄への反応、びっくりするような数字や数字の動きこそ、彼らがもとめているものなのである。

 

ただ、こういった調査ばかりすることが一体何の役に立つのかということは、考えたほうがよいだろう。極端な数字が出やすい一過性の調査を繰り返すことで、逆に世論調査への不信感も高まっているように思う。「小沢氏辞職すべき○○%」のような情報を、新聞の読者や有権者が欲しているとは思えない。彼が辞めようがどうしようが、われわれの生活は変わらないのだから。

 

おそらく2011年も政局の迷走は続くだろう。それによって必要な政策が先延ばしにされて被害を受けるのは、われわれ有権者である。世論調査が、政局に乗るための道具として利用されつづけるか、有権者の意向を政治に伝える経路として復権するか、今後も注意して見ていきたい。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.272 

・荒木啓史「遺伝か環境か?――ゲノム科学と社会科学の融合(Sociogenomics)が教育界にもたらすイノベーション」
・神代健彦「道徳を「教える」とはどのようなことか――「押しつけ」と「育つにまかせる」の狭間を往く教育学」
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