そもそも「放射能を測る」ってどういうこと?

福島第一原子力発電所の事故以来、「放射能を測る」という言葉をテレビや新聞、雑誌などで頻繁に見かけるようになりました。しかし、そもそも、「放射能を測る」とはどういう意味なのでしょうか?まずはここから考えてみましょう。

 

 

放射能と放射線

 

放射能とは放射線を出す能力のことです。焚火や暖炉の火によく例えられます。火は、近くにいる時には暖かいけれど、距離が遠ざかるほどに暖かくなくなっていきます。このとき、火が熱を発する能力が「放射能」に、発せられる熱が「放射線」に当たります。

 

放射能の単位は「ベクレル(Bq)」、放射線の量の単位は「シーベルト(Sv)」と言います。どちらも、よく耳にする単位となりました。

 

「ベクレル」とは、どれくらい放射線を出す能力を持っているかを表す単位です。放射性物質の原子核は壊れる時に放射線を出します。1秒間に何個の原子の原子核が壊れて放射線を出すかという数を表すのがベクレルです。放射性物質は、原子核が壊れて別の元素に変化していくので、次第に放射線を出す能力を失っていきます。もとあった原子の半分が壊れた状態になるまでの時間を「半減期」と呼び、ヨウ素の放射性同位体であるヨウ素131が8日、セシウムの放射性同位体であるセシウム134が2年、セシウム137が30年などとなっています。たとえば、セシウム137は最初の30年間で半分になり、さらに30年経つと最初あった量の四分の一(半分の半分)になります。

一方の「シーベルト」は、放射線による被曝量を人体への影響の大きさとして表す単位です。放射性物質が出す放射線にはアルファ線、ベータ線、ガンマ線があります。その種類や放射線のエネルギーの大きさは放射性物質の種類によって決まっていて、人体への影響が異なります。また、放射性物質から離れれば影響は小さくなります。そのため、放射能を表すベクレルだけでは、人間に対する影響の大きさはわかりません。シーベルトは人間が受けた放射線の量を人体への影響の大きさとして表現する単位で、放射線の種類や放射性物質の違い、外部被曝と内部被曝の違いなどを取り入れたものです。どんな放射線による被曝であれ、シーベルトで表される量が同じなら人体への影響は同じと考えることができます(実際には、シーベルトという単位で表される放射線の量にはいくつかの種類があります。ここでの説明は新聞などにもっともよく出てくる実効線量のことで、体全体への影響を表します。ほかに同じシーベルトという単位で表される甲状腺等価線量などもメディアで見ることがありますが、このふたつは違うものなので直接比較することはできません)。

放射線の強さは「1時間当たり何シーベルト(Sv/hと書きます)」で表されることが多く、これは、その強さの放射線を1時間浴びるとそれだけの放射線量になるという意味です。30分しか浴びなければ放射線の量は半分ですし、2時間なら2倍になります。このSvとSv/hの違いは、特に原発事故直後のメディアでは頻繁に混同されました。

 

 

測るものが違えば装置も方法も違う


放射能を測りたいのか、放射線の強さを測りたいのか、被曝量を知りたいのかなど、目的によって、測る装置や方法が違ってきます。

昨年の3月11日の事故以降、それまで放射線とは無縁だった多くの人が、小さな放射線測定器を手にしました。その多くはガイガー・カウンターと呼ばれる簡易装置で、放射線を検出する部分にGM管(ガイガー・ミュラー管)を用いているためその名があります。

ガイガー・カウンターはGM管に飛び込んできた放射線の数を数える装置で、多くは放射線の強さをcpm(count per minute)の単位で表示します。cpmは1分間あたり何個の放射線が飛び込んできているかという数のことです。ベータ線に対して感度が高くガンマ線に対しては感度が低いのが普通なので、ベータ線が多い環境では主としてベータ線の数を測りますが、アルミ板などでベータ線を遮って、透過力の強いガンマ線だけを測ることもできます。

外部被曝の程度を知るために空間線量(その場所に一定時間いた場合どの程度被曝したか)を測定する場合は、ガンマ線の線量率(マイクロシーベルト毎時:μSv/h。μは100万分の1です)を測るのが適しています。ガンマ線は遠くまで飛ぶうえ、体の中へも透過するので、人体への危険度が高い放射線です。各地のマイクロシーベルト毎時の値がニュースなどで頻繁に発表されるのはこのためです。

それにはガンマ線のcpmをμSv/hに変換する必要がありますが、ガンマ線のエネルギーは放射性物質の種類によって違うので、多くの場合、セシウム137からのガンマ線だと仮定して変換しています。市販のガイガー・カウンターの中には、cpmを表示せず、線量率(μSv/h)だけを表示するものもあるようです。機種によってはガンマ線だけを測定するためにベータ線を遮蔽する必要がありますが、これをしなかったために、思ったより高い値が出て混乱を招いた例も少なからず見られました。

ガンマ線の線量率をより正確に測定するためにはシンチレーションカウンターなどの高価な測定器が必要となります。シンチレーションカウンターでは各ガンマ線のエネルギーも測定できるので、放射性物質の種類も知ることができます(ただしそのためには、どのエネルギーの放射線が検出されたかを表示するスペクトル表示の機能が必要で、シンチレーションカウンターでもその機能がないものもあります)。

また、装置自体を正しく補正しておく必要があります。この作業を「校正」と呼びます。これは、例えば容器に入れた砂糖の重さを計る際、最初に容器だけを乗せて目盛りをゼロに合わせる作業をするのと同じようなものです。既に放射線強度がわかっている線源を測定して、調整します。機械は時間が経つにつれてずれていくものなので、定期的に校正する必要があります。しかし、個人が既に値がわかっている線源で校正できる機会はほとんどないので、官公庁から発表された空間線量のデータと比較して、自分の測定値にどの程度ずれがあるのかを知っておくのも役立ちます。

 

 

 

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