2016.04.11

まず顔を洗うべし!――最新・花粉症対策

久住英二×成田崇信×荻上チキ

科学 #荻上チキ Session-22#花粉症

いよいよ花粉症シーズンの到来! 花粉症はどのようなメカニズムで発症するの? 簡単にできる対策は? 最先端の治療法は? なにを食べればいいの? 花粉症にまつわるありとあらゆる疑問に、医師の久住英二氏と管理栄養士の成田崇信氏が答えます。TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」3月17日放送分より抄録。(構成/山本菜々子)

■ 荻上チキ・Session22とは

TBSラジオほか各局で平日22時〜生放送の番組。様々な形でのリスナーの皆さんとコラボレーションしながら、ポジティブな提案につなげる「ポジ出し」の精神を大事に、テーマやニュースに合わせて「探究モード」、「バトルモード」、「わいわいモード」などなど柔軟に形式を変化させながら、番組を作って行きます。あなたもぜひこのセッションに参加してください。番組ホームページはこちら → http://www.tbsradio.jp/ss954/

花粉症到来!

荻上 暖かい日が続くと、花粉症の人にとっては、むずむず、くしゅくしゅ、じゅるじゅる、涙ぽろぽろという状況であった方も多いと思います。私もその一人です。リスナーの方も花粉症の方が多いようですね。沢山メールをいただいています。

「私は軽い花粉症という感じです。今日は目がかゆかったです、日本では杉の花がすごいですが、花粉症って日本だけなんでしょうか。日本以外の国でも花粉症で悩む方はいらっしゃるのでしょうか。」

「5歳の娘が去年からこの時期になると涙目になり鼻水が出るようになりました。いわゆる花粉症は何歳ごろからなるものなのでしょうか。また、なにか医療機関で検査してもらえるのでしょうか。」

そこで今夜は花粉症のメカニズムとその治療、花粉症をはじめとするアレルギー治療についてお話を伺っていきます。今日のゲストは医師の久住英二さんです。よろしくお願いします。

久住 よろしくお願いします。

荻上 久住さんは花粉症ですか?

久住 花粉症ですよ。家の玄関を出るとき、花粉の壁を感じます。自分が花粉症であるからこそ、鼻水や目のかゆみのつらさが非常に共感できますので、一生懸命治療しようと思っています。

荻上 久住さんはいつごろから花粉症になられたのでしょうか。

久住 東京に出てきて数年たった、2001年頃からですかね。私の地元は田舎で、車のボンネットに花粉が積もって黄色く見えるほどでしたが、その頃は花粉症なんてどこの国の話だよと思っていました。しかし、東京にきて花粉症になりました。

荻上 東京に来ると花粉症になるとよく聞きますね。関連はあるのでしょうか。

久住 私の場合、花粉症と大気汚染物質の両方が悪さをしているのだと思います。一般的に「花粉症」とは言いますが、花粉だけではなく、化学物質と花粉が一緒になることで反応が起きやすくなる複合的なものだと考えています。

花粉にちょっかい

荻上 花粉症のメカニズムを教えてください。

久住 花粉症はアレルギーですが、「アレルギー」は本来無害なものに対して体が免疫反応を起こしてしまうことを指します。一言で「アレルギー」といってもいくつかの種類があります。花粉症はⅠ型アレルギーに分類されます。Ⅰ型の特徴はアレルゲンが身体に入るとすぐに反応が出ることです。

アレルゲンが入ってくると、肥満細胞からヒスタミンという物質が放出されます。(肥満細胞といっても肥満には関係ありません。ヒスタミンを蓄えた小袋がいっぱいつまっているので、肥満細胞というネーミングになったそうです)

そうすると、花粉症の場合は、鼻水が出たり、粘膜がむくんで鼻がつまったり、気管支ではぜんそくが起きる。食事アレルギーでは、ピーナッツやソバのアレルギーでは強い反応であるアナフィラキシーショックが起きて、死に至る場合もあります。

荻上 免疫が過剰に反応していると聞いたことがあります。

久住 そうですね。花粉症は免疫力が落ちているのではなく、免疫がやらなくてもいいことまでやっているため、過剰に反応している状態だと言えます。なぜ過剰な反応が起きるのかについては、詳しくはまだわかっていない部分が多いです。

荻上 免疫力は「つければいいもの」という印象がありますが、花粉症についてはそう単純ではないのですね。

久住 免疫を高めるといいますが、免疫細胞が活発になっている状態は、インフルエンザに罹ったときのような状態です。過剰に働くと、自己免疫疾患、例えばリウマチのように自分の身体を壊してしまいます。免疫は高まらなくていい、適切に働いてもらうのが一番です。人間の免疫システムは非常に強いのですが、花粉にまでちょっかいを出しているのですね。

花粉と排気ガス

荻上 リスナーからこんなメールが来ています。

「花粉症は誰でもなるのでしょうか。花粉と排気ガスが結び付くとなると聞いたことがありますけど、私にはよくわかりません。眼鏡に沢山花粉が付着しますが平気です。免疫があるのかな」

久住 誰でもなり得ますが、発病する方としない方がいます。体質と、環境と、様々な要素が関係するのだと思いますが、その理由について、詳しくは分かっていません。

荻上 「何歳ごろから花粉症になるものなのでしょうか」

久住 実は症状を感じ始める前の、子どもの時から反応は起きているんですね。0歳の赤ちゃんでも花粉症になる場合はなります。

子どもへの花粉症対策ですが、アレルギーの治療は症状のコントロールが目的です。ですから、ちょっと鼻水が出たり目がかゆいからといって薬を飲む必要はありません。もし、目の周りを掻いて赤くなっている状況や、鼻がつまって口呼吸になって、つらそうな状態でしたら、治療してあげたらいいと思います。

荻上 遺伝はありますか?

久住 やはり、親が花粉症やアレルギーがあると子どもも発病しやすいというデータがあります。

荻上 このような質問も来ています。「肥満や飲酒が症状を悪化させると聞いたことがあるのですが、花粉症には現代病や贅沢病の側面も存在するのでしょうか。花粉症そのものが昔からあったと記憶していますが、国民全体に蔓延しているのは近代になってからなんじゃないかな」

久住 そうですね。社会構造の変化によって花粉症が増えていることもあるでしょう。たとえば、都市化が進み、アスファルトに囲まれているため、花粉が吸収されづらい状態のところに人が沢山住むようになりましたし、大気汚染との複合によって発症されている方もいます。それから、ストレスを強く感じているときは炎症が強くなります。

荻上 こんなメールも来ています。「日本だけなんでしょうか。花粉症って」

久住 世界中にあります。日本の杉に反応していた場合、海外に行くことで症状が軽くなることはあるでしょう。

荻上 これからの社会構造の変化によって、アレルギー反応が出るか出ないかが決まってくると。

久住 そうですね。アレルギーの不思議な点は、沢山浴びているからといって発症するとは限らない点です。たとえば、舌下免疫療法という治療法があります。毎日、杉のエキスを舌の下にためて飲み込む。何年か続けていると、身体がスギ花粉に反応しなくなるのです。身体にアレルゲンが沢山入ると反応しなくなり、少し入ると反応するのです。

ですから、杉が多いところで育った人は、スギ花粉を大量に摂っているでしょう。地場の野菜などは花粉が沢山ついているでしょうから、自然に舌下免疫療法と同じような効果が得られている可能性がある。あくまで仮説ですが、花粉を多くとっているという点で、花粉症が田舎の方では問題にならない可能性があります。

kusumi

花粉症の薬

荻上 花粉症の薬によって相性はあるのでしょうか。

久住 花粉症の薬は、「抗ヒスタミン剤」といって、このヒスタミンの作用を邪魔するものです。ですから、花粉症に限らず、ダニのアレルギーや食事アレルギーなどにも効き目のある薬です。いわゆるかゆみ止めとしても使われています。

抗ヒスタミン剤の特徴的な副作用は眠気です。昔からある抗ヒスタミン薬はすごく眠い。実際に、市販されている睡眠改善剤の成分は抗ヒスタミン薬です。それは眠くもなるでしょうし、口もかぴかぴに乾きます。

最近、メインで使われるのは第二世代の抗ヒスタミン薬です。これは、ヒスタミンの働きを抑える力をなるべく残したまま眠気を出にくくした薬なんです。とはいえ、それぞれの薬によって強さや服用する回数が違いますから、ピークの時は強いものがいいとか、今年は弱い薬にするとか、細かく使い分けられたら一番いいのですが、頻回に通院することになり、現実的じゃありませんね。

ですから、ベースの薬をずっと飲みつつ、症状が強いときに点鼻薬などや、漢方薬を足すことで、かなり快適になるのではないでしょうか。

荻上 花粉症のシーズン前に薬を飲んでおくといいという話を聞きますが。

久住 症状がはじまる前に薬をもらいにいきました、と言う人が多いです。正月明けくらいでしょうか。でも、鼻の中をみるとすでに腫れている場合が多いですね。だんだん腫れてきて、鼻が詰まってしまう前に、最初の段階からブロックしておくと、ピーク時には楽に過ごせると思います。

荻上 点鼻薬はどうですか。

久住 点鼻薬は、副腎皮質ステロイドの入ったものが有効です。ステロイドは、アレルギー反応を抑える非常に良い薬ですが、飲み薬として飲むと骨粗鬆症や月経不順、高血圧、糖尿病などの副作用が出るため、花粉症治療として内服するには強すぎる薬です。点鼻薬は、鼻の粘膜表面にしか作用しませんから、効果は強く、かつ全身への副作用が出ませんので、非常に有効だと思いますね。

市販の薬で気をつけなきゃいけないのは、血管収縮薬(塩酸トラマジリン、硝酸ナファゾリン、硝酸テトラヒドラゾリン、塩酸オキシメタゾンなど)です。すぐに鼻の通りがよくなるんですが、慢性的に使っているとその薬物のある状態がノーマルになり、その薬がなくなるとすぐに鼻が詰まるようになります。ですから、点鼻薬を買う時はこの成分が入っていないものを選ぶといいと思います。

荻上 病院から処方される薬と、市販との処方の違いはどこでしょうか。

久住 最近は OTC 薬で、処方薬と同じ中身の抗アレルギー剤が販売されるようになりました。たとえばアレグラやアレジオンをお医者さんでもらっても薬局で買っても効果は一緒です。忙しくてお医者さんにかかれない方には福音だろうとおもいますね。

荻上 対症療法ではなく治療法を知りたい方も多いと思うのですが、舌下免疫療法以外の治療法はあるのでしょうか。

久住 根本的に体のアレルギー反応をなくすのは難しい。一過性に症状を抑えるのであれば、鼻の粘膜を焼くレーザー治療があります。ただし、これは粘膜が再生したらもとに戻ります。運転手さんのように、職業上の理由で眠気を催すような薬が絶対飲めないような方にとっては有効でしょう。

また、後鼻神経切断術という鼻の神経を切る手術もありますが、受けたことのある方は、あまり拝見しません。鼻水が出ない弊害がないとは限りませんから、まずは薬を飲んでみることが第一歩ですね。薬はやめるとすぐにもとに戻せますから。

荻上 薬だったら飲むのが面倒だったり、忘れる人がいるかもしれませんね。

久住 いやー、それが、症状のつらい人は飲み忘れる方は少ないんですよ。高血圧やコレステロールのように自覚症状のない薬は飲み忘れてしまう方が割といらっしゃるのですが、花粉症でつらい方はだいたい飲んでいます。

まずは顔を洗うところから

荻上 「アレルギー性鼻炎で毎年花粉症に悩まされていて、物知りな妹の旦那様に相談したところ、簡単な花粉症対策を教わったのでおすすめします。ぬるめのシャワーを鼻の穴めがけけて顔にかけると、8割方の花粉が洗い流されてだいぶ楽になりますよ」

とのことですが、効果はあるのでしょうか。

久住 ぬるめのシャワーである必要はありませんが、私は男性の患者さんによく「外出から戻ったら顔を洗ってください」と言います。目の周りや鼻の周りには花粉がついています。よく炭鉱の労働者の写真をみると、鼻の周りが炭塵で黒くなっていますよね。顔の周りについている花粉もビジュアル化するとああいう感じになっています。それを洗い流すと吸入する花粉の量が減るのでけっこう楽になります。さらに、シャワーを鼻の穴の中まで入れるのは効果的ですね。

女性だと化粧されているので、洗顔は難しいですね。化粧されない方は是非。また、鼻うがいで鼻の中についている花粉も洗い流すのもいいでしょう。

荻上 「現在花粉症ではないのですが、年齢が増すにつれて症状が出やすいと聞いたことがあります。今度花粉症にならないためにできる対策はあるのでしょうか」

久住 対策は難しいですね。年齢が増すにつれて症状が出やすいわけではなく、花粉を浴びている人のうち、一定の割合の人が花粉症になる。それが年間で累積していると考えればと思います。花粉症に成人になった、だけであり、年齢が増しても発病しない人も居ますから。どういう生活をしていればならないのか。確実に言えるのは、南太平洋どまんなかの、回りに木も何もない小島に引っ越していただければと思うんですが。

荻上 amazonから本が買えませんね。

久住 なにしろ、食糧も海で釣らないといけませんし、嵐もきます。だから、現実的には難しいですね。あえて申し上げるとするならば、健康的な生活をする以上の対策はないと思います。

荻上 健康っていうのは、朝早く起きて、三食ちゃんと食べて……だめだ。

久住 本来なら、夜遅くまで仕事しないほうがいいんですが、なかなか難しいですよね。

荻上 さて、2通続けてメールを紹介します。

「花粉症について素朴な質問なんですが、花粉症対策によく聞く、○○を食べると花粉症がよくなる、○○を飲むと花粉症の症状が緩和されると聞くのですが、実際に特定の食べ物や飲み物を摂取することによって花粉症が治ったり症状が緩和したりするのでしょうか。

「ネット情報を頼りに、甜茶を飲んだり玉ねぎを食べたりヨーグルトを食べたりチョコ食べたり、いろいろやっているんですが、なかなか効かないですね。あれって色々やりすぎるとそれぞれがかち合っちゃうんですかね。」

久住 薬物治療を超えるような効果が科学的に証明された食べ物はないと思います。たとえば、ヨーグルトは身体にいいですが、毎日ヨーグルトを買うのと薬で治療するのとどっちが経済的か。薬ではなく食べ物でなんとかしたい方が非常に多いのですが、花粉症に効くチョコを毎日食べていたら別の問題が必ず起きますよね。

どうせ、ヨーグルト食べるんだったら、身体にいいヨーグルトにしてみたらいいかもしれませんというレベルであって、普段ヨーグルトを食べていない方が花粉症の時期だけヨーグルトを食べると劇的によくなる、という話ではありません。

食事とアレルギー

荻上 ここから、管理栄養士の成田さんにアレルギーと食事についてお話を伺えればと思います。そもそも、花粉症を気にする方というのは、どのような情報を参考に食品を選べばいいのでしょうか。

成田 普段の生活で、栄養失調や肥満など問題がないのであれば、特に食生活を変える必要はないと思います。

荻上 野菜が不足しがちだとか、必要な栄養素がこれ一本で……とかありますが、どうですかね。

成田 本当に不足しているのであれば、いいと思います。いまどきの野菜ジュースだと成分だけじゃなく、ちゃんと野菜を絞って飲みやすくしたものがある。ですので、栄養がけっこう取れます。でも、野菜ジュースには糖分が多い場合もありますので、普段から野菜をしっかり食べている人であれば、わざわざ取らなくても大丈夫だと思います。

荻上 食育や食に関心のある方は、いろいろと試されたりすると思います。注意点はどこでしょうか。

成田 先ほど久住先生が、身体が元気であれば、花粉症の反応が起こりにくいと言っていました。昔なかったアレルギーが出てきて、「化学物質のせいだ」と言われることがありますが、それを信じてしまうとかえって栄養バランスを崩してしまうことがあります。

たとえば、成長期の子どもはタンパク質が大人より必要です。その時期に、卵がアレルギーになりやすいというイメージで避けてしまうと、必要な栄養が取れなくなって、かえって免疫機能が落ち、いろんな病気を招いてしまう可能性があります。ですから、特定の食品を食べないでおこうとか、そればっかり食べるような事態は避けたほうがいいですね。

荻上 よく、「化学調味料が」と怒ってテーブルをひっくり返したりするグルメ漫画がありますが……。

成田 そういうマンガはエンターテイメントとして面白いですが、化学物質を避けて不健康になるのは本末転倒だと思います。

化学物質や食品添加物にいいイメージを持っている人が少ないので、自然食品よりもネガティブな部分に注目されます。ところが、安全性に問題が見つからず今でも使われている。そう考えると、使いすぎてよいことはありませんが、意外と危険なものではない。

荻上 自然食で元気に、だったり、白砂糖は毒だと言ったり。

成田 こういう場合、一つのものを悪く言うために、ただ悪く言うだけでなく、これをしましょうと代わりのものを出します。それはどちらかというと偏っているものが多い。「○○は悪い」と言って止めるのにはさほど害が出ないのですが、その代りのものばかり食べることで、食事が偏る可能性があります。

たとえば、卵アレルギーをもっている人に、「安全で食品添加物を使っていない鶏が生んだ卵なんで安心して食べられます」と宣伝していたものがあります。ですが、食品中のタンパク質がアレルゲンとなって、体に悪い影響を与えるものですから、自然や天然というのは関係ないのですね。天然だからと安心して食べてしまい、かえってアレルギーを悪化させてしまうこともあり得ます。

荻上 少し話はずれますが、「抗がん剤は毒だから玄米を食べろ」というような必要なものを奪うパターンもありますよね。その食べ物自体が悪いわけじゃないけれど、治療からは遠のいてしまう。

成田 玄米を単独で食べている分には悪いものではないですが、必要な治療の機会をつぶしてしまうことは避けたいですよね。

荻上 どういった情報を私たちは頼りにした方がいいのでしょうか。

成田 意外とバカにされがちですが、厚生労働省の提供しているものには信憑性の高いものが多いです。たとえば、厚生労働省のページに行き「花粉症」と検索すれば、花粉症に有用な情報がひっかかってきます。

荻上 食事の分野はみなさん関心があるからこそ、偽科学が入りやすくなるので注意をしなければいけないですね。

成田 そうですね。まずは、厚生労働省のページを読んでいただいて、それとあまりにもかけ離れている情報は疑ってみてください。そこと見解が一致しているようなページをみながら、自分なりに読みやすいページを探していくのがいいと思います。

荻上 食に関する知識の身に着け方から気を付けたほうがいいですね。成田さんありがとうございました。

今の成田さんのお話は、「今まで生きてきたのだから、その食べ方でたいてい正しいので無理やり変える必要がないのでは」というものでしたね。

久住 私もそう思います。検診で太りすぎだったり高血圧なのであれば是正の必要があるのですが、バランスよく野菜を食べている方が極端に走る必要はない。

まぁ、玄米が体にいいかと言われると栄養はある。白米と玄米を比べると、玄米にした方が糖尿病のリスクが下がります。ですから、玄米にもいい食べ方があるのですが、玄米以外食べちゃダメ、だと危険です。

また、赤身の肉と大腸がんの関係性は指摘されています。赤身肉というのは豚や牛の肉のことですが、これを絶対食べないようにしたら、タンパク質不足になります。タンパク質不足ですと、最近お年寄りの間で問題になっているサルコペニア。筋肉が少ないから転倒しやすくなりようなことが起こります。

要するに、極端が良くないのですね。いろんな食べ物のメリットデメリットがあるのでそれをバランスよく組み合わせることが必要です。私たちは豚や牛でないので、豚だけ牛だけのたんぱく質ではアミノ酸のバランスがおかしくなります。ですから、いろんな食べ物を食べる必要がある。

アレルギーの関連でいくと、よく「うちの子は卵アレルギーがあるので、ほかのアレルギーもあるか調べてほしい」と言います。でも、それはダメです。検査というのは、本当は反応しないのだけど、検査では+に出る、またその逆ということがあります。ですから、広く検査して、反応が出たものを食べないようにするとバランスがくずれる食生活になる。ですから、広く片っ端から調べるのは止めるべき、とアレルギー学会からも勧告が出ています。

荻上 アレルギーの情報の取り方についてはいかがでしょうか。

久住 今の成田さんのお話のように、厚生労働省のサイトもありますし、製薬会社もアレルギーに対する情報を提供しています。製薬会社の場合は、薬を買ってほしいからというバイアスのかかった情報であることを考えた上でみる。また、日ごろからなんでも相談できるお医者さんがいることも重要だと思いますね。

荻上 ありがとうございます。今日のゲストは医師の久住英二さんでした。

Session-22banner

プロフィール

成田崇信管理栄養士

1975年、東京生まれ。管理栄養士、健康科学修士。病院、短期大学などを経て、現在は社会福祉法人に勤務。ペンネーム・道良寧子(みちよしねこ)名義で、主にインターネット上で「食と健康」に関する啓蒙活動を行っている。共著書に『謎解き超科学』(彩図社)。

この執筆者の記事

久住英二内科医、血液専門医

医療法人社団鉄医会(ナビタスクリニック新宿・立川・川崎)理事長。一般社団法人医療ガバナンス学会理事。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)プログラムオフィサー。1973年新潟県長岡市(旧三島郡和島村)生まれ。1999年新潟大学医学部卒業し、国家公務員組合共済組合虎の門病院で臨床研修の後、血液内科を専攻。おもに造血器悪性腫瘍に対する臍帯血ミニ移植の臨床研究に従事。2006年から2016年まで東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム部門に客員研究員として活動した。主な分野は「いのちの授業」など医療情報の分かりやすい解説や、駅ナカクリニックでの実体験に根ざした医療提供体制についての研究、またワクチン問題についても取り組んでおり、ワクチンの日本導入が遅いというワクチンギャップ、日本のワクチン行政の不備がもたらした風疹の大流行、反HPVワクチン運動に立ち向かうなど、積極的に活動している。趣味はラグビーで、東京ドクターズラグビーフットボールクラブに所属し、泥にまみれて楕円球を追いかけている。

この執筆者の記事

荻上チキ評論家

「ブラック校則をなくそう! プロジェクト」スーパーバイザー。著書に『ウェブ炎上』(ちくま新書)、『未来をつくる権利』(NHKブックス)、『災害支援手帖』(木楽舎)、『日本の大問題』(ダイヤモンド社)、『彼女たちの売春(ワリキリ)』(新潮文庫)、『ネットいじめ』『いじめを生む教室』(以上、PHP新書)ほか、共著に『いじめの直し方』(朝日新聞出版)、『夜の経済学』(扶桑社)ほか多数。TBSラジオ「荻上チキ Session-22」メインパーソナリティ。同番組にて2015年ギャラクシー賞(ラジオ部門DJ賞)、2016年にギャラクシー賞(ラジオ部門大賞)を受賞。

この執筆者の記事