まず顔を洗うべし!――最新・花粉症対策

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まずは顔を洗うところから

 

荻上 「アレルギー性鼻炎で毎年花粉症に悩まされていて、物知りな妹の旦那様に相談したところ、簡単な花粉症対策を教わったのでおすすめします。ぬるめのシャワーを鼻の穴めがけけて顔にかけると、8割方の花粉が洗い流されてだいぶ楽になりますよ」

 

とのことですが、効果はあるのでしょうか。

 

久住 ぬるめのシャワーである必要はありませんが、私は男性の患者さんによく「外出から戻ったら顔を洗ってください」と言います。目の周りや鼻の周りには花粉がついています。よく炭鉱の労働者の写真をみると、鼻の周りが炭塵で黒くなっていますよね。顔の周りについている花粉もビジュアル化するとああいう感じになっています。それを洗い流すと吸入する花粉の量が減るのでけっこう楽になります。さらに、シャワーを鼻の穴の中まで入れるのは効果的ですね。

 

女性だと化粧されているので、洗顔は難しいですね。化粧されない方は是非。また、鼻うがいで鼻の中についている花粉も洗い流すのもいいでしょう。

 

荻上 「現在花粉症ではないのですが、年齢が増すにつれて症状が出やすいと聞いたことがあります。今度花粉症にならないためにできる対策はあるのでしょうか」

 

久住 対策は難しいですね。年齢が増すにつれて症状が出やすいわけではなく、花粉を浴びている人のうち、一定の割合の人が花粉症になる。それが年間で累積していると考えればと思います。花粉症に成人になった、だけであり、年齢が増しても発病しない人も居ますから。どういう生活をしていればならないのか。確実に言えるのは、南太平洋どまんなかの、回りに木も何もない小島に引っ越していただければと思うんですが。

 

荻上 amazonから本が買えませんね。

 

久住 なにしろ、食糧も海で釣らないといけませんし、嵐もきます。だから、現実的には難しいですね。あえて申し上げるとするならば、健康的な生活をする以上の対策はないと思います。

 

荻上 健康っていうのは、朝早く起きて、三食ちゃんと食べて……だめだ。

 

久住 本来なら、夜遅くまで仕事しないほうがいいんですが、なかなか難しいですよね。

 

荻上 さて、2通続けてメールを紹介します。

 

「花粉症について素朴な質問なんですが、花粉症対策によく聞く、○○を食べると花粉症がよくなる、○○を飲むと花粉症の症状が緩和されると聞くのですが、実際に特定の食べ物や飲み物を摂取することによって花粉症が治ったり症状が緩和したりするのでしょうか。

 

「ネット情報を頼りに、甜茶を飲んだり玉ねぎを食べたりヨーグルトを食べたりチョコ食べたり、いろいろやっているんですが、なかなか効かないですね。あれって色々やりすぎるとそれぞれがかち合っちゃうんですかね。」

 

久住 薬物治療を超えるような効果が科学的に証明された食べ物はないと思います。たとえば、ヨーグルトは身体にいいですが、毎日ヨーグルトを買うのと薬で治療するのとどっちが経済的か。薬ではなく食べ物でなんとかしたい方が非常に多いのですが、花粉症に効くチョコを毎日食べていたら別の問題が必ず起きますよね。

 

どうせ、ヨーグルト食べるんだったら、身体にいいヨーグルトにしてみたらいいかもしれませんというレベルであって、普段ヨーグルトを食べていない方が花粉症の時期だけヨーグルトを食べると劇的によくなる、という話ではありません。

 

 

食事とアレルギー

 

荻上 ここから、管理栄養士の成田さんにアレルギーと食事についてお話を伺えればと思います。そもそも、花粉症を気にする方というのは、どのような情報を参考に食品を選べばいいのでしょうか。

 

成田 普段の生活で、栄養失調や肥満など問題がないのであれば、特に食生活を変える必要はないと思います。

 

荻上 野菜が不足しがちだとか、必要な栄養素がこれ一本で……とかありますが、どうですかね。

 

成田 本当に不足しているのであれば、いいと思います。いまどきの野菜ジュースだと成分だけじゃなく、ちゃんと野菜を絞って飲みやすくしたものがある。ですので、栄養がけっこう取れます。でも、野菜ジュースには糖分が多い場合もありますので、普段から野菜をしっかり食べている人であれば、わざわざ取らなくても大丈夫だと思います。

 

荻上 食育や食に関心のある方は、いろいろと試されたりすると思います。注意点はどこでしょうか。

 

成田 先ほど久住先生が、身体が元気であれば、花粉症の反応が起こりにくいと言っていました。昔なかったアレルギーが出てきて、「化学物質のせいだ」と言われることがありますが、それを信じてしまうとかえって栄養バランスを崩してしまうことがあります。

 

たとえば、成長期の子どもはタンパク質が大人より必要です。その時期に、卵がアレルギーになりやすいというイメージで避けてしまうと、必要な栄養が取れなくなって、かえって免疫機能が落ち、いろんな病気を招いてしまう可能性があります。ですから、特定の食品を食べないでおこうとか、そればっかり食べるような事態は避けたほうがいいですね。

 

荻上 よく、「化学調味料が」と怒ってテーブルをひっくり返したりするグルメ漫画がありますが……。

 

成田 そういうマンガはエンターテイメントとして面白いですが、化学物質を避けて不健康になるのは本末転倒だと思います。

 

化学物質や食品添加物にいいイメージを持っている人が少ないので、自然食品よりもネガティブな部分に注目されます。ところが、安全性に問題が見つからず今でも使われている。そう考えると、使いすぎてよいことはありませんが、意外と危険なものではない。

 

荻上 自然食で元気に、だったり、白砂糖は毒だと言ったり。

 

成田 こういう場合、一つのものを悪く言うために、ただ悪く言うだけでなく、これをしましょうと代わりのものを出します。それはどちらかというと偏っているものが多い。「○○は悪い」と言って止めるのにはさほど害が出ないのですが、その代りのものばかり食べることで、食事が偏る可能性があります。

 

たとえば、卵アレルギーをもっている人に、「安全で食品添加物を使っていない鶏が生んだ卵なんで安心して食べられます」と宣伝していたものがあります。ですが、食品中のタンパク質がアレルゲンとなって、体に悪い影響を与えるものですから、自然や天然というのは関係ないのですね。天然だからと安心して食べてしまい、かえってアレルギーを悪化させてしまうこともあり得ます。

 

荻上 少し話はずれますが、「抗がん剤は毒だから玄米を食べろ」というような必要なものを奪うパターンもありますよね。その食べ物自体が悪いわけじゃないけれど、治療からは遠のいてしまう。

 

成田 玄米を単独で食べている分には悪いものではないですが、必要な治療の機会をつぶしてしまうことは避けたいですよね。

 

荻上 どういった情報を私たちは頼りにした方がいいのでしょうか。

 

成田 意外とバカにされがちですが、厚生労働省の提供しているものには信憑性の高いものが多いです。たとえば、厚生労働省のページに行き「花粉症」と検索すれば、花粉症に有用な情報がひっかかってきます。

 

荻上 食事の分野はみなさん関心があるからこそ、偽科学が入りやすくなるので注意をしなければいけないですね。

 

成田 そうですね。まずは、厚生労働省のページを読んでいただいて、それとあまりにもかけ離れている情報は疑ってみてください。そこと見解が一致しているようなページをみながら、自分なりに読みやすいページを探していくのがいいと思います。

 

荻上 食に関する知識の身に着け方から気を付けたほうがいいですね。成田さんありがとうございました。

 

 

今の成田さんのお話は、「今まで生きてきたのだから、その食べ方でたいてい正しいので無理やり変える必要がないのでは」というものでしたね。

 

久住 私もそう思います。検診で太りすぎだったり高血圧なのであれば是正の必要があるのですが、バランスよく野菜を食べている方が極端に走る必要はない。

 

まぁ、玄米が体にいいかと言われると栄養はある。白米と玄米を比べると、玄米にした方が糖尿病のリスクが下がります。ですから、玄米にもいい食べ方があるのですが、玄米以外食べちゃダメ、だと危険です。

 

また、赤身の肉と大腸がんの関係性は指摘されています。赤身肉というのは豚や牛の肉のことですが、これを絶対食べないようにしたら、タンパク質不足になります。タンパク質不足ですと、最近お年寄りの間で問題になっているサルコペニア。筋肉が少ないから転倒しやすくなりようなことが起こります。

 

要するに、極端が良くないのですね。いろんな食べ物のメリットデメリットがあるのでそれをバランスよく組み合わせることが必要です。私たちは豚や牛でないので、豚だけ牛だけのたんぱく質ではアミノ酸のバランスがおかしくなります。ですから、いろんな食べ物を食べる必要がある。

 

アレルギーの関連でいくと、よく「うちの子は卵アレルギーがあるので、ほかのアレルギーもあるか調べてほしい」と言います。でも、それはダメです。検査というのは、本当は反応しないのだけど、検査では+に出る、またその逆ということがあります。ですから、広く検査して、反応が出たものを食べないようにするとバランスがくずれる食生活になる。ですから、広く片っ端から調べるのは止めるべき、とアレルギー学会からも勧告が出ています。

 

荻上 アレルギーの情報の取り方についてはいかがでしょうか。

 

久住 今の成田さんのお話のように、厚生労働省のサイトもありますし、製薬会社もアレルギーに対する情報を提供しています。製薬会社の場合は、薬を買ってほしいからというバイアスのかかった情報であることを考えた上でみる。また、日ごろからなんでも相談できるお医者さんがいることも重要だと思いますね。

 

荻上 ありがとうございます。今日のゲストは医師の久住英二さんでした。

 

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