南相馬市立総合病院の内部被ばく検査から

南相馬市立総合病院では、2011年7月11日より、ホールボディーカウンター(以下WBCと呼びます)による住民の方々対象の内部被ばく検査を開始しました。これまで3台の検査機を使って検査をしてきました。当初は安西メディカル社および富士電機社製のWBCを用いておりましたが、今現在はキャンベラ社製のFast scanというWBCを用いて、一日あたり110人のペースで検査が進んでいます。

 

 

WBCによる内部被ばく検査

 

これが、鳥取県からお借りした1台目のWBCです。車載型でした。安西メディカル社製。2011年の7月から8月まで稼働していました。

 

 

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左が2台目のWBC。富士電機製。2011年8月から9月末まで稼働していました。右が3台目のWBC。キャンベラ社製。2011年9月26日から稼働しており、現在も稼働中です。

左が2台目のWBC。富士電機製。2011年8月から9月末まで稼働していました。右が3台目のWBC。キャンベラ社製。2011年9月26日から稼働しており、現在も稼働中です。

 

来院していただいた検診者の方はまず身長体重を計測します。セシウムやカリウムの計測後、それらを体重あたりいくらになるのか計算したり、身長が130cm以下の場合は台を用いて計測したりする必要があるためです。その後、日常生活に関する問診票の記入していただきます。どのような生活、特にどのような食品を摂取している方の内部被ばくが多いのかを出来るだけ早く調べるためです。

 

そして着替えていただいた後、体表面が放射性物質により汚染されていないかをガイガーカウンターでチェックします。体表面が放射性物質によって汚染されている場合は、内部被ばくを過大評価してしまうためです。その後WBCの中に入っていただき、検査を行います。検出器と遮蔽板の間はやや狭い空間ですが、そこにただ立っているだけで済み、検査自体は2分で終了します。来院から検査が終了するまで約30分ほどでしょうか。

検査の結果は南相馬市のホームページ(http://www.city.minamisoma.lg.jp/shinsai2/kensa/hibakukenshinkeka2.jsp)にも公開されています。

 


セシウム検出率は減少

明らかになったことの一つは、「時間経過とともに、セシウムが検出される人の割合が下がってきている」ということです。小児を対象にした2011年9、10月の時点での検査では、約半数が検出限界以下であったのに対して、今年3月時点の検査でのセシウム検出率は、子供で1%未満となりました。現在南相馬市の多くの子供で、セシウムの検出をしなくなってきているということです。

大人でも同様の傾向が見られます。大人を対象にした場合、2011年10月には約半数が検出限界以下でしたが、2012年1月には約9割が検出限界以下になっています。セシウムが検出される人の割合が減ってきており、これはセシウムが徐々に排泄されて行くことを示しています。

上記は完全に同一の人間でのセシウム量の変化ではありませんから、まだ体内に溜まってくる時期ではないと言う批判があり得ます。ある程度以上の慢性的な摂取をしてしまっている人もいますから、今後検出率が上がってくる可能性は無論あります。

 

検出限界は2分間のスキャンで、Cs134で220Bq/body、Cs137で250Bq/body程度です。排出されているという事実に加えて、既に南相馬市民の体内のセシウム量は、1960年頃の大気中核実験直後の日本人成人男子の平均値よりも低くなっている方がほとんどということになります。

 

 

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セシウム137自体の半減期は30年ですが、体内に取り込まれた場合、尿や便を通じて排泄されます。生物学的半減期といいますが、成人で70-100日、1歳で10日とかなり幅があります。成人より小児の方が、男性より女性で排泄速度が早く、一家全員を計るとご家族の中でご高齢の男性のみが検出してしまうことを頻繁に経験します。上図でも、検出する大人の多くは高齢男性ですし、検出する子供のほとんどは小学生ではなく中学生です。

 

 

「一家で私と妻と子供たちが検査を受けた。家族の皆同じように避難して、同じように生活していたのに検査結果が異なるのはなぜか?」

 

 

よく聞かれる質問ですが、これは、その方だけ内部被ばくをしてしまっていたということを示している訳ではありません。大なり小なりみな内部被ばくしてしまっていたが、若い方や女性はより半減期が短いため、より短期間に検出されない程度にまで減少していたということを示しているだけです。通常、同一の家族間では高齢であるほど、男性の方が高い値が検出されます。家族間に大きな差があるときを除き、このような家族間の差は不自然なことではありません。

しかしながらその逆の場合は注意が必要です。例えば旦那さんが検出限界以下であるのに、旦那さんより若い奥さんが検出されてしまうような場合です。この場合は、事故直後により多く被ばくしてしまったか、その後の生活での慢性被ばくがより多い可能性があります。日常生活での余分な内部被ばくが無いか、そしてその原因が仕事や食事と考えるなら、どのようにすればその影響を軽減できるのかを話しながら,今後の生活について相談する必要があります。

 

 

 

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