南相馬市立総合病院の内部被ばく検査から

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慢性的被ばくは低く抑えられている

 

二つ目は、「慢性での被ばく(検査直前の数ヶ月での被ばく)がかなり低く抑えられている=日常生活での慢性被ばく量はかなり少ない」ということです。先ほど2012年3月の検査で小児の約99%が検出限界以下であったと報告しました。このことは、これらの小児での、検査直近での内部被ばく量が、検出されるレベル以下に抑えられていたことを示しています。

器械の検出限界レベル以下の慢性的な被ばくを否定できるものではありませんが、今現在の南相馬での日常生活が、大きな内部被ばくをもたらすものではないことがわかってきています。この結果は、南相馬市で実際に診療している我々にとっても非常に勇気づけられる情報でした。

しかしながら、今後値が増えないとも限りません。ウクライナやベラルーシでも、下記のように事故後ある程度の時間の経過後、セシウム摂取量が増えたことが言われています。ここは食品の流通体制や生活様式が全く異なる日本ですが、今後の慢性的な被ばくを抑えるために定期的な検査が必要です。

 

 

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WBCの検査は、1度の結果で何かが言える訳ではなく、継続的な検査を行うことで初めて大きな力を持ちます。今後も定期的に検査を行い、体内の放射能量が増えてこないことを確認する必要があります。

 

 

生物学的半減期の速度からのズレ


三つ目は、「放射能の値の下がり具合が良い人と悪い人がいる」ということです。再検査にて予想される生物学的半減期よりも減少具合が悪い人がちらほら出始めているということです。つまり、現在もある一定量の慢性的な内部被ばくを続けている人がいるということです。

南相馬市立総合病院での同一の方々での検査結果が以下になります。大人子供併せて181名の方々の結果が公表されています。2名を除きほとんどの方で減少傾向でした。ではこの値の下がらなかった2名の方のみがある一定の慢性的な内部被ばくを続けているのかというと、そうではありません。セシウムはその後の摂取が無ければ、生物学的半減期に示される速度で減少します。

 

 

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繰り返しになりますが、半減期は成人で3-4ヶ月、6歳で1ヶ月、1歳で10日程度です。再検査は、初回から約3-4ヶ月後に行われているので、成人であれば初回から半分程度に減少していることが予想されるはずです。しかしながら、半分にならない方がいます。これらのグラフを見ていただいてわかるように、値が下がっている人の中でも、下がりが良い人(グラフの傾きが急な人)と悪い人(グラフの傾きが緩やかな人)がいます。

 

生物学的半減期の速度で減少していないということは、いくらかのペースで食品、水、空気などから慢性的に摂取してしまっているということです。今後、慢性的にセシウムの摂取を続けた場合、体内量は毎日の摂取量にあわせて、平衡状態に達します。摂取してしまう量と、排泄される量が同じとなるような値で、平衡状態になってしまうということです。

もちろん器械自身の測定誤差もあります。同じ人を同じように計測しても、値が2、3割程度ぶれることはよくありますが、それを差し引いて考えても、再検査を行った方の1割弱で値の下がりが悪いような印象です。今後このような方々に適切に介入して行く必要があります。

 

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では、このような値の下がりが悪い方々が、慢性的にどれくらいのセシウムを摂取してしまっているかを試算しているのが、下記の図です。下がりの悪い方で1日あたり数Bq程度、最大でも1日10~20Bq程度の摂取なのではないかと考えています。コープ福島で公表された陰膳検査の結果(http://www.fukushima.coop/kagezen_news/kagezen/index.html)では、100家庭中90家庭で1Bq/kg以下、最大でセシウム137で6.7Bq/kgだったそうなので、大きくは矛盾しないように思っています。

南相馬市立総合病院で下がりが悪い方のほとんどは、家庭菜園で採れた食べ物を摂取していますか? という質問に「はい」とお答えの方ばかりです。もちろん作る食べ物の種類によりますし、家庭菜園のすべてが良くないというつもりは毛頭ありません。しかしながら、セシウムの摂取リスクの高い行為であることは確かだと思っています。

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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