科学政策と参議院選挙

第22回参議院議員通常選挙が終わり、一週間がたちました。民主党の過半数割れという事態が生じていますが、本稿ではその政治的な意味の是非には触れません。「事業仕分け」という一大イベント後、はじめての大規模な国政選挙ということで、その行方には注目していました。

 

 

「一番じゃなきゃダメですか?」

 

もっとも注視した人のひとり、仕分けの立役者ともいえる蓮舫行政刷新担当相は、東京選挙区でダントツの強さをみせての当選をはたしました。毀誉褒貶を受けながらも、結果的に、その功績は好意的に受け取られたといえるでしょう。

 

彼女を一躍有名にし、本人の著書のタイトルにまでなった「一番じゃなきゃダメですか?」。

 

この言葉の矛先が向けられたのは、科学研究予算に対してでした。個人的には、彼女がこの言葉に込めて問うた、「国の予算を使ってでも、一番を取らなければならない理由を明確にするべきだ」という点に関しては、国費を使う研究者が心に留めておくべき、重要な指摘だったと思っています。

 

そんな仕分けでの出来事をよそに、先日の惑星探査機「はやぶさ」の一件もあり、科学研究についてはずいぶんと世論の追い風をうけているように思えます。当の蓮舫氏自身が「はやぶさ」を称え、科学予算の重要さをコメントしたことも報道されています。

 

 

日本の「お家芸」ともいえる「無理」

 

たしかに「はやぶさ」の帰還は快挙でしたし、運用担当者の機知や努力は賞賛に値すると思います。それでも、「はやぶさ」自体は故障に故障を重ね、当初の予定していた運用から考えれば、その達成状況はいまひとつだったといえるでしょう。

 

4発のロケットのうち3発は故障し、小惑星イトカワの粉塵を回収するために射出された弾丸の状況も、リアルタイムでモニターすることができませんでした。ミッションの途中ではこうした事実が報道されたものの、いざカプセルの帰還という段になると、マスメディアでは失敗すらも美談に組み込まれてしまいました。

 

そもそも、打ち上げ当初から、このロケットの設計自体には無理があったといいます。かつて宇宙機構の的川泰宣名誉教授が朝日新聞の取材に答え、「ロケットの能力の都合上、はやぶさの重量は500キロが限界だった。確実性をとって二重の系統を用意すると、他の観測機器を下ろさないといけない。結果的に設計に無理があったかもしれない」と語っていました。

 

こうした「無理」は日本の「お家芸」ともいえるもので、冗長性を無視してあれもこれもと要求、仕様を追加し、結果として元も子もなくなってしまいます。マニアックな例えですが、的川さんのコメントは、ロンドン海軍軍縮条約下で、小型艦船に過大な性能要求を課した結果発生した、旧帝国海軍の「友鶴事件」を思い起こさせました。

 

 

失敗を検証することから進歩がはじまる

 

研究とは失敗するものであり、失敗を検証することから進歩がはじまります。

 

マスメディアや科学コミュニケーションがしなければいけないことは、はやぶさの帰還を賞賛すると同時に、失敗がもつ意味をきちんと説明することです。あえて誤解を招きかねない言葉にすれば、「はやぶさ」は帰還すれども失敗だった、と語る方がよかったのではないかとすら思います。

 

科学は失敗をするものであること、そして失敗することが、決してたんなる予算の損失ではないことを市民に告げる機会であったはず。マスメディアとも共同し、それを理解してもらう言語や方法を模索していかなければ、いつまでたっても「一番じゃなきゃダメですか?」に応える方法はみつからないのです。

 

 

 

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