あやしい放射能対策

米のとぎ汁乳酸菌

 

自分でできる対策として最近流行りだしているのが「米のとぎ汁乳酸菌」である。

 

米のとぎ汁に砂糖と塩少々などを加えてペットボトルなどに入れて常温でおいておく方法が紹介されている。とくに培養前の器具類の殺菌もしていないし、特定の種菌も入れていないので、どんな菌が増えるのかあやしい感じだが、甘酸っぱくできたら成功だそうである。それを飲用したり、応用として米のとぎ汁に豆乳を加えて発酵させてヨーグルトとして食べたり、点眼したり、霧吹きして肺内に吸い込んだりすることで、培養された乳酸菌・光合成細菌・酵母によって放射性物質の毒出しをするそうである。あるブログでは離乳食にも使うと書いてあって驚いた。

 

微生物が放射性物質に効くというのは、EM菌からの流れのようである。

 

ツイッターで、「米のとぎ汁乳酸菌」による毒出しを実行している人のツイートに「昨夜、乳酸菌を顔にスプレーして、目にもちょっとふりかけて、今朝起きたら両目が真っ赤か!目やにもすごくてびっくり@@ 効いてる証拠って思っていいんですよね?」というのがあった。悪質な代替療法では、害が出ているのにそれは「好転反応」といって毒が出ている証拠だと誤魔化すことが多いが、まるでそれと同じ様子である。効いてる証拠なんていっていないで、眼科に急いで行くべきだろう。

 

作り方のレシピを見ると、色々なカビを含む雑菌が繁殖しそうである。それをまだ抵抗力の弱い子どもに放射線対策として与えでもしたらと想像すると、とても心配である。肺に吸入した場合、肺炎にならないかという心配もある。これが放射線に効くというのもかなり疑問だし、止めておいた方がいいのではないか。低線量被曝の害を避けようとして食中毒などになってしまえば本末転倒である。食中毒は命に関わる場合があり、その危険性は低線量被曝よりもずっと高い。

 

 

ホメオパシー

 

ホメオパシーはこの療法に縋ったことで何人かの死者を出して問題となった。このホメオパシーを推進する団体も、抜け目なく放射性物質の害から身を守るというレメディを宣伝している。「(原文ママ) 特に放射線物質の排出を促すレメディについては、体内に溜まった有害物質がレメディーをとることで体外へと排出されたことが検査結果によって数値で出たケースによって実証されました」と宣伝しているが、この実証されたという実験の詳細などは公表されていない。団体主催者によると「レメディーとってたら、被曝も大丈夫!!」なのだそうであるが、まったく大丈夫ではない。そして、『放射線に対するホメオパシーの防御と治療』という本が出版されており、急性の放射線中毒に対するレメディまでもが記載されているが、内容はどれも信用できない。ホメオパシーのレメディに薬効がないことは、すでにきちんと証明されている。

 

 

◇warblerの日記「ホメオパシー・レメディには薬効が無いってホント?」

http://d.hatena.ne.jp/warbler/20110221/1298291420

 

 

ペクチン

 

林檎ペクチンが放射性物質を排出させるとして宣伝されているが、それに関する効果を確認したという研究報告を調べてみると、いずれにも重要な不備があり、実際にはその効果は期待薄である。

 

 

◇IRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)-Evaluation of the use of pectin in children living in regions contaminated by caesium

http://www.irsn.fr/EN/news/Documents/pectin_report.pdf

 

 

気になるのは、この報告書の中でペクチンによって必要なビタミンやミネラルが吸着されてしまい栄養欠乏になる副作用の懸念が指摘されていることである。放射線対策としてとくに子どもや妊婦にペクチンを摂らせすぎるのは心配である。

 

 

スピルリナ

 

スピルリナは藍藻の一種である。スピルリナの”放射能を排出する”効果は、学会発表が中心で正式な論文が出されておらず、効果の検証はきちんとされていない。その他の効果についても、人で証明されたものはほとんどない。また、スピルリナ類は細菌や重金属類(水銀、カドミウム、鉛、ヒ素)などを含むことがあり、ミクロシスチン(藍藻毒の一種で肝毒性を持つ)が含まれるものもあるので用心した方がいい。国立健康・栄養研究所の『「健康食品」の安全性・有効性情報』で調べると、スピルリナ含有製品摂取との因果関係が疑われる健康被害副作用が色々と報告されている。とくに子どもや妊娠中・授乳中の女性は、スピルリナ製品の摂取は避けておいた方が無難だろう。

 

 

◇国立健康・栄養研究所の『「健康食品」の安全性・有効性情報』-スピルリナ

http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail86lite.html

 

 

(参考)今年7月12日に「人体から放射能を排出するのに効果的」などと効能をうたって「スピルリナ」を販売した人物が、埼玉県警サイバー犯罪対策課と狭山署によって薬事法違反容疑で逮捕されている。

 

 

◇時事ドットコム:「放射能排出」と宣伝し販売=健康食品340万円分、男逮捕-埼玉県警

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201107/2011071200673

 

 

健康食品に対する記事がFOOCOM.NETから出されているので、そちらもぜひ読んで頂きたい。

 

 

◇「健康食品で解毒」を信じてはいけない

http://www.foocom.net/column/editor/4494/

 

 

この記事を書いた松永和紀さんは、『科学的な検証を確認せずに、「あれがいい」「これがいい」と報道し、それを信じてしまうのは、特定の業者の利益につながるだけだ。報道機関の倫理が問われている。その事実に、消費者も早く気がついてほしい』と訴えている。

 

他にも、怪しげな放射線対策が色々と出回っている。健康食品に関しては、動物実験などでその効果が証明されたとして宣伝されているものも少なくないが、人で実際に有効性がきちんと確かめられていないと信頼性は低い。もし、本当に高い効果が証明されているのならば、医薬品や治療法としての公的な認定を受けているはずである。健康食品のままであるということは、医学的に効果があると確かめられていないということでもある。健康食品の場合は副作用についてもきちんと調べられていないものが多く、思いもよらない害が出る恐れもある。

 

人々の不安につけ込んで、さらに不安を煽りつつお金儲けをする「不安商売」をする人たちが、この原発事故を背景とした状況を格好の商機とみなして暗躍している。大切なお金と時間と労力を無駄にするだけだし、何よりも健康を害する恐れがあるので、気をつけた方がいい。また、あやしい業者が反原発や放射線の害を警告する団体などを通じ、善意の衣に隠れて怪しい商品などを広めるケースが最近多くなっている様子なので要注意である。まったく油断も隙もない。

 

*本稿は、個々のあやしい情報の発信者や業者に対する批判が目的ではないので、ここではその個人名を出さないことにした。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.273 

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