人はなぜ宇宙へ飛び立つのか――187億年の旅への誘い

「宇宙」に話題が及ぶと、「夢がありますね」とよく言われます。特に「宇宙飛行士」ともなるとタカラヅカ級の「憧れ」の対象となってしまいます。筆者が宇宙の世界で業を得てすでに40年近くになりますが、この状況が歯痒くてなりません。本稿では、この状況に風穴を開けることを目論みます。

 

まず、質問を一つ。

 

「古今東西のすべての人間を対象とした戸籍調査を行うと、職業種で最も少ないのは何でしょう?」この答え、わかります? かなり独断と偏見に満ちた推定ですが、筆者は「宇宙飛行士」が答えだと思っています。その数は、2011年6月の情報で528人、2014年3月時点では550人程度でしょう。

 

世界の人口が2011年10月末の時点で70億人に達したと伝えられています。人類史上の累計ではこの10倍程度の700億人とインターネット情報は伝えます。この数字と比較すると、これまで僅か500人程度が達成した「有人宇宙飛行」、この希有な人間活動について考えてみましょう。

 

人はなぜ宇宙にあこがれるのか。宇宙飛行はどのように進化してきたのか。そして、今後なにが期待できるのか。本稿で見ていきたいと思います。

 

 

宇宙飛行の経緯:人類初の宇宙飛行、そして月へ

 

まず、これまでの宇宙飛行の経緯を見てみましょう。

 

有人宇宙飛行の先達は旧ソビエト連邦の空軍パイロットのユーリ・ガガーリンです。当時は、「死の可能性」を包含する活動に従事するのは軍人だけでした。

 

今から50年前の1961年4月にガガーリンは地球を1周して、「空は非常に暗かった。一方、地球は青みがかっている」とのメッセージを地上に伝え、地上の人々の宇宙への好奇心をいやがおうにもかき立てました。

 

帰還の2日後、ガガーリンはクレムリン宮殿前の赤の広場で凱旋将軍のように絨毯を歩いています。当時、米ソが熾烈な宇宙開発競争を繰り広げていたせいか、全世界、とりわけ米国に衝撃を与えました。その後、ガガーリンは国宝級の処遇を受けて、「危険な宇宙飛行」に二度と携わることは無かったのですが、航空機での訓練中に事故死してしまったのは残念です。

 

一方、米国では陸海空の三軍の綱引きの結果、海軍がロケット開発を主導していましたが、ソ連との技術力の差が大き過ぎました。それを解消すべく、米国大統領アイゼンハワーはアメリカ航空宇宙局(NASAの前身)を設立します。その後、ケネディ大統領が「60年代に月に人間を送る。そして、安全に帰還させる」と議会でアポロ計画の推進を宣言しました。

 

アポロ計画に計上された予算は約250億ドルで、現在の価値では1,350億ドル相当になります。当時の日本国家予算を大幅に上回る予算を投入する大プロジェクトでした。

 

 

「Kennedy Giving Historic Speech to Congress - GPN-2000-001658.jpg」 http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kennedy_Giving_Historic_Speech_to_Congress_-_GPN-2000-001658.jpg

「Kennedy Giving Historic Speech to Congress – GPN-2000-001658.jpg」
http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Kennedy_Giving_Historic_Speech_to_Congress_-_GPN-2000-001658.jpg

 

 

しかしながらその後も、ソ連の勢いは止まらず、初の女性宇宙飛行士、初の宇宙遊泳とソ連の宇宙開発の先行は続きました。しかし、サターンロケットの開発でのトラブルやアポロ宇宙船の火災事故など紆余曲折はあったものの圧倒的な物量作戦が功をとおし、ケネディ大統領の宣言どおり、60年代の最終年1969年7月に、人類は月に到達しました。アメリカの技術力と経済力、そして、気概に脱帽するしかありません。

 

アームストロングの第一声、「“That’s one small step for man, one giant leap for mankind.”(私にとって小さな一歩だが、人類にとっては大きな跳躍だ)」は秀逸ですね。筆者には「この一歩が人類活動に繋がる」との意にも聞こえ、この言葉を気に入っています。

 

余談になりますが、アポロ11号着陸の8ヶ月前、アポロ8号の月周回ミッションで撮影された月の地平線から昇る藍色の地球「アースライズ」写真は、月の岩石382kgと並び得るアポロ計画の成果と賞賛されています。「地球の出の画像」と「月の岩石」、どちらが地球の人々に強い印象を与えたか評価がわかれるところですね。

 

 

「AldrinFootprint.jpg」http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/55/AldrinFootprint.jpg/594px-AldrinFootprint.jpg

「AldrinFootprint.jpg」http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/5/55/AldrinFootprint.jpg/594px-AldrinFootprint.jpg

 

 

 

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