STAP細胞の問題はどうして起きたのか

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これは、特殊な事例なのか?

 

組織内でのチェックが不十分であったこと、問題発覚後の理研の対応が後手後手に回ってしまった事などは、すでに他の多くの人達からも指摘されています。ここでは、

 

 

1.教育の不備

2.権威のある共同研究者の名前で信用されてしまう

3.科学の手続きで大事な「再現性」の確認が軽視されがちである

 

 

以上3つのポイントについて取り上げましたが、これらは理研以外の研究機関でも共通して起きる可能性があります。

 

これらの科学の実践に関わる問題の中、3番目の「再現性」が軽視されてきた背景として、最先端の研究では特殊な装置が必要であったり、追試だけに終わる研究は評価され難いという問題の側面があります。また、複数の研究者で分業して研究をするケースが増えていることで、全ての実験を把握することが難しくなってきている状況もあります。

 

しかし、STAP細胞の場合は、その研究室にしかない特殊な実験装置は必要なく、その分野の人なら誰でも追試に挑戦できたにも関わらず「小保方氏しかできない」という不自然な状況でした。

 

過去の捏造問題を振り返ると、他の人ができない実験を難なくやりこなす「黄金の腕」「神の手」等と賞賛された「凄腕の研究者」が実は不正を行っていたというケースが、しばしば社会を騒がせる大事件に発展しています。

 

興味のある方は、ジョン・ロング事件(1979年)、マーク・スペクター事件(1981年)、ヘンドリック・シェーン事件(2002年)などを調べてみて下さい。

 

これらの事件との類似性は、STAP細胞の問題が一通り明らかになってから、記事として改めてまとめたいと考えています。

 

上述した問題の3つのポイントの共通点は、身近な人達の間で防ぐことができたのに、それができなかったということです。問題が深刻化する前に、何度も周囲が気付くチャンスがあったのに、それがずっと見過ごされてきたのです。自分の事だけに関心があり、隣の人が何をしているのかは無関心で、互いに干渉するのを避けていたのではないでしょうか。大学院生の博士論文の剽窃などは、研究室の中で気付かれていた可能性が高いと思われます。同じ大学の教員の間ではどうだったのでしょう。小保方氏の共同研究者である権威ある人達は、どうして不適切な行為に気付かなかったのでしょうか。周囲の研究者達も小保方氏の研究に干渉するのを避けていたのではないかと思われます。あるいは、順調に成果を上げている人に対して疑念を示せば、周囲から妬んでいると思われるのではないかという抑制も働いたかもしれません。

 

科学者どうしの間で自由に意見を交わして相互にチェックし合うことは科学の世界で奨励されてきたことです。相互チェックにより、科学の品質管理がなされてきました。本来は、不適切な行為は周囲の身近な人達がいち早く気付いて問題がまだ小さく深刻化していないうちに修正すべきところですが、今回の様に最近ではネット上の第三者達によるチェックにより不適切な行為への指摘がなされるケースが多くなっています。ただし、ネットで指摘される時にはかなり不正が深刻化していたり広がってしまった後です。

 

不適切な行為を初期のうちに止めるには、やはり身近な周囲の人達がチェックできる体制が必要です。科学者の間で培われてきた健全な相互チェックを補強する体制が必要ではないかと考えています。

 

大きな不祥事があると厳しい罰則を設けて管理を強めるという動きになりがちですが、 厳しい罰則が作られると互いに指摘し合うのをさらに遠慮してしまう空気ができてしまうのではないかと懸念しています。新たな罰則よりも、科学者同士の自由な相互チェックをサポートする制度を設ける方が建設的だろうと思います。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.264 

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