襲撃されるホームレス――聞き取り調査からみえてきた襲撃の実態

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当事者へのインタビュー

 

向井 まずは台東区で野宿されている方にお話を伺います。最近経験した暴力についてお話ください。

 

野宿者A ここ3カ月は、花火ですね。花火や爆竹の被害が多いです。突然あらわれて、爆竹を繰り返し投げてきます。

 

あとは水道用のパイプをもった3人組の子どもが振り回しながらやってくることがありました。黙ってやられるわけにもいかないので、恐怖なんて乗り越えて、私も覚悟して立ちあがって。そしたらパトカーが2台くらいきていたんですよね。どうやら余所から追ってきていたみたいです。たぶん捕まったんじゃないですかね。運が良かったです。

 

向井 爆竹もやはり子どもが投げてきたんですか?

 

野宿者A 子どもですね。中学生か高校生のはじめぐらいの子が二人くらい。

 

向井 通りがけに投げていくんでしょうか?

 

野宿者A いや、ずっといて、こっちの隙を伺うんですよね。投げたら自転車で逃げていくんです。パイプを振り回してきたのも中学生くらいでした。

 

向井 続いて墨田区で野宿されている方もいらっしゃるので、お話を伺います。直近で襲撃があったのは春休み前後ですかね?

 

野宿者B はい。

 

向井 やはり子どもたちでしょうか?

 

野宿者B はい、そのとおりです。

 

向井 何時くらいにきて、どういうことをされたのかお話いただけますか?

 

野宿者B そのときは、ちょうど小屋の外にいたので、来るのはわかっていたんです。なぜなら子どもの話し声が聞こえていましたし、すぐにロケット花火を打ち込んできましたから。

 

時間はだいたい12時くらいでした。だいたいそのくらいが多いんですね。人数は5、6人だったと思います。3、4人では襲撃に来ないですね。こっちはなんていったって大人なので、向こうも怖がっていますから。少なくても5人~8人。だいたい景気づけにロケット花火を打ってから、もってきた石を投げてきますね、交代で。

 

投げる石を用意してきたこともありましたね。縁石を割った角ばった石でした。夜で見えないので、石がなくなるまでは小屋の陰でみんなで待機していました。

 

向井 石が終わるまで何十分も小屋の外で待っていることが多いんですね。

 

野宿者B はい。

 

向井 そのときに中学生の子どもたちは言葉をいったりすることはありますか。

 

野宿者B むこうも怖がっているのかわかりませんが、絶えず連絡をとりあって、こちら側の悪口を言いますね。「乞食野郎」とか、「泥棒野郎」とか、あと必ず「死ね」って言いますね。

 

向井 墨田区では2人の野宿者が殺されていることがあるので、危険な状況だと考えざるを得ないと思うんですよね。

 

野宿者B 毎日不安なんですよね。夜が来るたびに、今晩来るんじゃないかって。ノイローゼになってみんな眠れなくなっちゃって。

 

向井 今年は夏休み前に墨田区で全小学校高学年と中学校全学年に対する野宿者襲撃防止プログラムが行われたのですが、夏休みに入ってどうでしたか?

 

野宿者B まだきません。

 

向井 もしかしたら教育の効果がでているのかもしれないませんね。

 

野宿者B まだわかりません。お盆あけて、夏休みが終わるまでは気を緩められません。

 

向井 ありがとうございます。

 

 

野宿者は襲撃されて仕方ないのか?

 

大西 最後に補足させてください。ホームレス問題の授業作り全国ネットが、95年以降の襲撃の実態をまとめています。それによると東京都では10名が未成年の方による襲撃で亡くなっているそうです。

 

裁判や報道で死因などがわかっているのですが、内臓破裂、外傷性ショック死、出血性ショック死、頭蓋内損傷、出血多量など、かなりショッキングな死因で亡くなっている。一方で、そういった犯行にいたった子どもたちが、いきなり殺害に及んだかというと、いくつかの裁判で明らかになっているように、からかいなどから始まったものが、ちょっとずつエスカレートしていって襲撃にいたっているようです。

 

国の統計では、襲撃を受けたことのある野宿者はたった12.6%でした。この数字は、150ページある報告書の中の、1ページの隅っこにちらっと書かれている。襲撃の実態についてはその程度の認識しかまだされていないということです。

 

私たちは、日々の活動の中で、野宿者やその周辺の方に接する中で、「こういうことされた」「怖かった」という話はよく聞きます。正直にいって、今回の40%という数字は、支援に携わっている身としては少ないと思っています。先ほどお話いただいたように、皆さん最初は「なにもされていないよ」とお答えになる。これは、暴力とか嫌がらせを受けることを、仕方ないことだって思ってしまっている方が多いということなんです。

 

これは社会が、野宿者は暴力や嫌がらせを受けても仕方ないんだという意識も持っていて、当事者の方もそうした認識を持たされているからなのだと思います。だからこそ、まずはわれわれの調査をきっかけに、この問題が、子どもが襲撃してしまうということだけでなく、大人の、社会の問題でもあるということを知っていただきたいと思っています。

 

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

vol.269 

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