自然エネルギーの過去、現在、未来についての考察

私にとって2014年は、自然エネルギーの驚異的な成長の10年の終わりと、自然エネルギー開発の新たな段階のはじまりを象徴するものとなりました。この新しい段階は、過去10年とは著しく異なるものになります。そのため、私はこの分野での25年の経験をもとに、自然エネルギーの過去、現在、そして未来について考察する良い機会だろうと思いました。

 

このような視座をもつことの重要な理由のひとつは、現在の自然エネルギー市場、技術、そして政策状況は比較的新しく、また、急速に変化し続けるため、自然エネルギーの現在の状況と今後向かうであろう方向についての私たちの思考が現実とともに時代遅れになってしまうからです。多くの人々は、いまだに1995年もしくは2000年ごろの自然エネルギーについて考えています。しかし、それらの年代は自然エネルギーの「フロッピーディスク」時代を象徴するものです。私たちの思考は現実に追いつく必要があるのです。

 

現代の自然エネルギーの起源は、エイモリー・ロビンスによる1976年刊行「ソフトエネルギーパス」に見ることができるでしょう。1970年代後半から1980年代の間、特に米国における技術開発や電力市場政策に牽引され、自然エネルギー技術は一定程度の商業化とコスト削減を達成し、これは現代の自然エネルギー時代のはじまりを象徴するものとなりました。例えば、米国のPURPA法は、特にカリフォルニア州で、風力発電開発の大幅な急増につながりました。(世界の風力発電の90%がカリフォルニアに導入されていた時期のことを覚えている人はほとんどいないでしょう)

 

 

1992年〜2003年 商業化から主流化へ

 

自然エネルギーを商業化から「主流化(Mainstream)」の道筋にのせるため、1990年代に多くの政策が登場しました。米国の生産税額控除は1992年にはじまり、いくつかの州が自然エネルギー固定枠政策を制定しました。日本は太陽光発電の商業展開のため1993年に独自の「サンシャインプログラム」と補助金制度を開始しました。そして、1991年にドイツで電力の固定価格買取制度が世界初の固定価格買取制度として導入され、多くの国での自然エネルギーの支援政策への広がりのはじまりを表すものとなりました。1990年代を通じて、デンマーク、イタリア、インド、スペイン、スウェーデン、スイスなどを含む一部の国々でも固定価格買取制度が制定されました。(ドイツからはじまった固定価格買取制度は、2013年までに世界の80の国と19の州/地方を含む99件が立法されています。)

 

この期間中、中国や他の発展途上国では遠隔地での太陽光発電やバイオマス技術による自家発電市場が立ち上がっていましたが、依然として世界市場においては単なる脚注扱いに過ぎませんでした。

 

中国は事実上、系統に接続された太陽光発電市場はなく、主に二者間援助を通じて資金調達された多数の小規模なプロジェクトによる風力発電市場が存在するという状況でした。1990年代後半には、世界銀行や地球環境ファシリティが発展途上国における自然エネルギーの「市場開発」活動や投資プロジェクトに対する助成金や資本提供をはじめました。加えて、数多くの援助提供機関が、発展途上国での実証と商業化プロジェクトを実施しはじめました。インドは風力発電の主要な市場となり、農村部での系統非接続の太陽光発電への関心を高めていました。しかし中国、インド、南アフリカおよびその他の途上国での市場の発展は、まだ10年遅れている状況でした。

 

1990年代後半には、自然エネルギーのビジョンやシナリオがより頻繁に現れはじめました。石油会社のシェルは1999年に「持続的な成長」のシナリオを発表し、2050年までに世界のエネルギーの50%が自然エネルギーによって供給されるという内容は人々に衝撃を与えました。長い間、自然エネルギーに対する評価について保守的と考えられてきた国際エネルギー機関(IEA)は、2003年の報告書「2050年までのエネルギー:持続可能な未来のためのシナリオ」を発表し、自然エネルギーのシェア35%という「持続可能な開発」のシナリオを描きました。(2013年に達成した実際のシェアは19%でした。)

 

2003年には世界的な自然エネルギーへの投資が約250億ドルへに達し、1995年の約60億ドルと比較して4倍となっていました。(Martinot, Renewable Energy World 7(5), 2004)2003年には、世界の風力発電は40 GW、系統接続型太陽光発電は1.1 GWあり、1年間に導入された系統接続型太陽光発電設備は「信じられない」ことに365MW追加されました。(2003年の市場は、その後数年間におこる年率50〜60%の成長の始まりをあらわしていました。今日では、2003年1年間に導入されたものと同量の365MWが世界中で80時間毎に導入されています。)そして、世界の約40カ国は自然エネルギーを支援する政策を制定し、それらの中には市場拡大のさらなる後押しをはじめるものがありました。これらの政策は、急速な技術コスト削減、主流投資家による受容、先進国での商業市場拡大、そして、途上国での商業市場の出現へとつながりました。

 

 

2004年〜2013年 主流化から多数派へ

 

2004年〜2013年の間に、化石燃料と原子力と比較して、自然エネルギーは年間投資額と年間導入設備容量に関して「主流(Mainstream)」から「多数派(Majority)」となりました。

 

ドイツ政府は2004年に「ボン自然エネルギー国際会議2004」という 100カ国以上から3,000人の参加者や代表者が参加した大規模な会議を開催しました。これを自然エネルギーの高速成長期のはじまりと捉えることができます。2003年から2012年にかけ、自然エネルギーへの世界の年間投資額は250億ドルから2,500億ドルへと10倍に増加しました。そして、風力発電容量は40 GWから推定320 GWへと8倍に増加しました。(2013年の最終データは本稿執筆時点で保留)太陽光発電容量は45倍に増加し3 GWから推定140 GWに達しました。バイオマス(電力と熱)、太陽熱(熱利用)、地熱、水力にも大きな成長が見られました。コストは急激に低下し、特に太陽光発電技術における低下は著しいものでした。そして、自然エネルギーを支援する政策を持つ国の数は現在、2003年と比較して3倍の120カ国以上になり、その多くが途上国のものでした。(この節のほとんどの統計は過去と現在のREN21「自然エネルギー世界白書」 からの引用)

 

2004年から2013年の間に、特にヨーロッパおよび米国の主要金融機関によるビジネスとしての自然エネルギーの受容は大幅に拡大しました。リスクは十分に理解され、プロジェクト·ファイナンスが通常のものとなりました。電力会社自身もバランスシート上で自然エネルギー事業への資金投下を大幅に増やしました。2012年には世界の自然エネルギーへの年間投資額は化石燃料や原子力発電資産の年間投資額を超えていました。

 

2011年と2012年の両方で、世界的に追加された自然エネルギー電力設備容量は化石燃料や原子力の発電設備容量に等しかったのです。そして、これは2013年の最初の10ヶ月間、中国でもそうでした。一方、欧州では、自然エネルギーは2012年に追加された設備容量の70%が自然エネルギーとなり「多数派(Majority)」となっていました。2012年には、世界の自然エネルギーによる発電量は 原子力発電の2倍程度のレベルに達しました。(BP Statistical Review 2013)ちなみに中国では、2012年に風力発電が原子力発電と同等の発電量を生み出しました。これらの重要な出来事は、近年の現実の転換点をあらわしています。

 

この期間中、中国とインドは自然エネルギーの主要な市場となりました。中国は、2005年に固定価格買取制度を含む自然エネルギー支援政策を立法しました。(私は当時北京に住んでいたため、この法律がいかに重要な役割を果たしたのかを覚えています)法の施行は2006年に開始され、その後の成長はご承知の通りです。2012年までに、中国は風力発電事業や太陽光パネル製造など、自然エネルギー投資の世界的リーダーとなっていました。2003年から2009年まで、中国の総風力発電設備容量は文字通り毎年倍増し350 MW(2003年)から750MW、1.5 GW 、3 GW 、6 GW 、12 GW そして25 GW(2009年)と成長しました。その後、国内の系統接続型太陽光発電設備容量も同様に2010年から2013年にかけて1 GW(2010年)、3 GW 、7 GW から15 GWと発展していったのです(2013年は推定)

 

中国以外にも、途上国は2004年から2013年の10年間自然エネルギーの強力なリーダーとして浮上した。これは、農村地域での系統費接続型事業と都市部の系統接続事業の両方にみられました。2013年までに138の国が自然エネルギーに関する導入量もしくは導入割合の政策目標を設定しており、それらの大半は発展途上国であった。近年、農村部での系統非接続型「住宅用太陽光発電システム」の利用は1,000万件以上を記録し、農村バイオガスシステムも数千万件が導入されています。(その他多くの農村部の注目すべき開発については「自然エネルギー世界白書」第5章を参照)

 

2005年は、私が最初のREN21「自然エネルギー世界白書」を書きはじめた年でした。当時はまだ市場、政策、投資の世界的な概要を提供する他の出版物はありませんでした。そして、自然エネルギー世界白書はその後数年にわたり世界的な数値やトレンドに関する1次データの役割を果たしたのです。自然エネルギーが以前と変わってきていることをすべての世代が意識し、「全体像」を理解した上で取り組むことができるように自然エネルギー世界白書を役立てよう、と私は考えていました。

 

2000年代半ばには、他にもいくつかの重要な出版物が定期的な発行をはじめており、国際エネルギー機関の「エネルギー技術展望(初版2006年)」や、グリーンピースと欧州自然エネルギー協議会による「エネルギー革命シナリオ(初版2007年)」などがあります。この時期に自然エネルギー市場が力強く成長し続けたように、自然エネルギーの将来についての理解と展望もシフトしました。多くのシナリオで、長期的な自然エネルギーの割合は30〜50%と描かれ、なかには50〜80%を描くものもありました。(その他のシナリオや詳細については、REN21「世界自然エネルギー未来白書」第1章を参照、また近年のシナリオ50件については参考資料2を参照)【次ページへつづく】

 

 

 

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