自然エネルギーの過去、現在、未来についての考察

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2014年〜2025年 多数派から優勢へ

 

私は、自然エネルギーが今後数十年間で確実に成長し続けることは明らかだと考えています。それはREN21「世界自然エネルギー未来白書」の執筆に費やした2年間が私に確信させました。( 詳細は同書の「エピローグ:個人としての考え」参照)自然エネルギーはもはや経済や技術の問題ではなく、金融、ビジネスモデル、新たな政策や電力部門の規制、そして建物、輸送、電力網などの複合的な課題をどのように統合して解決していくかという問題なのです。(同書の第2章「統合」参照)

 

新たな転換の徴候は至る所で確認する事ができます。例えば、2013年8月のファイナンシャル·タイムズにはシティグループのスポークスマンが次のように述べています。

 

 

「我々は現在、補助金によってではなく、冷徹で堅固な経済システムによって需要が駆動されるような時期に突入しており、これは大きな転換である」(8月8日、「Renewables: A rising power」)

 

 

これは、年金基金や保険基金といった新たな資金供給源が現れつつあることを裏付けています。(「世界自然エネルギー未来白書」第3章参照)また、これは過去10年間の市場成長の主な原動力となった補助金や固定価格買取制度といったコストに対する支援政策が、今後10年間においては必ずしも主な原動力となるわけではないことも示しています。今後はさらに多くの自然エネルギー事業は補助金なしで収益をあげることができるようになるでしょう。(「世界自然エネルギー未来白書」第6章参照)しかし、それは政策支援が不要になるという意味ではありません – ただその形式を変えていかなければならないということです。

 

今後数年間で、私たちは全く新しい世代の自然エネルギー支援政策を見ることになるでしょう。私はこれらを 「自然エネルギー統合政策」と名付けたいと思います。これには、集中/分散型供給と柔軟な需要調整方法(デマンドレスポンスや蓄電を含む)を組み合わせ、公正かつ効率的な基盤を提供するための電力市場や規制を再構築する政策が含まれています。つまり、電力市場で新たに生まれつつある明確な特徴は、需要と供給の両面で「柔軟性」に非常に大きな市場価値がおかれるということです。そして、市場構造と規制は、P2Pや地域規模のエネルギーサービス事業が、新たに生まれつつある機会から収益をあげることができるような新たなビジネスモデルの競争市場を作っていかねばなりません。(「規制」という言葉にうんざりしている人々へ、電力には自由市場は存在しません。全ての電力市場は、経済性、勝者/敗者、また発電コストそのものさえも規定する基礎的なルールや系統運営の実践に影響を受けているのです。)

 

実際に、高価な蓄電設備がなければ風力や太陽光の変動に対処できないという俗説が常にあります 。これは真実ではありません。自然エネルギー電力の割合が高くなることで照明が消えるわけではありません。蓄電池を利用することなく、より安価ですでに活用されている多数の選択肢が世界中にあり、それらを利用することで変動する自然エネルギーを電力系統上でバランスすることができるのです。(「世界自然エネルギー未来白書」第2章参照)

 

もっとも良い例は、2013年の昼間ピークの電力需要の60%を太陽光発電や風力発電で供給したドイツです。2013年10月のグリーンテックメディアの記事では次のように述べられています。

 

 

「ベルナルド・シャボー氏の分析によると、今月初め、ドイツではピーク時で電力の59.1%を風力と太陽光発電で供給している … それは非常に風の強い晴れた10月3日の正午でした … また、ピーク時61%という記録もあり、さらに今年初めに59% … その日全体では太陽光と風力で発電量の36.4%を占め、特に太陽光発電に関しては11.2%を供給しています。」(Eric Wesoff、 2013年10月30日)

 

 

スペインとデンマークも電力系統上で日常的に自然エネルギーの割合を高く維持し、照明が消えることもなく対処できている国の例としてあげることができます。

 

「自然エネルギー統合政策」は、自然エネルギーを建築物へ統合させる政策も意味しており、新たな自然エネルギー統合型建材を使った建築や建設、冷暖房需要を最少に抑えることができる低エネルギー建築物やゼロエネルギー建築物の設計の実践と学習を促進します。また、統合政策は地域の充電インフラの拡充や(柔軟な需要調整方法としての)自然エネルギー電力と電気自動車の統合といった電気自動車支援政策にもおよびます。

 

私たちはすでに国、州/地方、地域レベルで電力系統、建物、輸送のための統合政策や市場枠組みの多くの例を見ています。私は、今後数年間でこれらの動向をとらえ、文書化したいと考えています。

 

未来について、私は4つのことを懸念しています。まず、喫緊の懸念は2008年以降消え去ることがなく、世界的に進行中の金融危機です。 私たちは根本的に問題を解決せず、問題点を後回しにしています。近いうちに自然エネルギーは金融市場の混乱による影響を受け、金利上昇によるマイナスの影響を被る可能性があります。一方、今日その他の数多くの既存のペーパー資産と比較して、自然エネルギーには「保証されたリターン」と「インフレ耐応」という特性があることから、年金基金はますます自然エネルギーに投資しています。私は、自然エネルギーへの投資がリスク軽減とインフレヘッジ手段として幅広く保有されるようになってゆくと強く信じています。(「世界自然エネルギー未来白書」第3章「投資」参照)

 

2つ目の懸念は、既存の主要なエネルギー企業が自然エネルギーの系統への圧倒的な流入にどのように反応するかという問題です。これは、世界自然エネルギー未来白書「重要な論争6」で「電力事業者は先導するか、追随するか、先送りするか、消滅するか?」と述べたものです。その議論は次のようにはじまります。

 

 

「自然エネルギーの増加により、多くの既存のエネルギー企業のビジネスモデルや収益源は、脅威もしくはストレスにさらされている。それらの企業は市場シェア、収入を失い、活動を継続するのに必要な利益さえも失うことになると、多くの専門家が考えている。将来の自然エネルギー開発は、既存の電力会社(「既得権益」と呼ばれることもある)がどのようにそのストレスに応答するかにかかっている」

 

 

そして、自然エネルギーによる既存のエネルギー企業の収益への脅威がこれまでのように_ごく小さなものに留まらず、本格化しはじめるにつれて、彼らが押し返す事例も多く見られるようになりました。実際に私は、脅威と認識された自然エネルギーに対するバックラッシュがより増えている状況を追跡しています。この「押し返し」はますます頻繁に報告されはじめています。最近、Oilprice.com では「電力会社にとってクリーンエネルギーは「完璧な嵐」となる」という記事で次のように述べられています。

 

 

「UBSの新しいレポートには、自然エネルギーや蓄電技術が大電力会社には「完璧な嵐」として現れている。太陽光発電やエネルギーの効率化、電気自動車などのコスト低下が集中型発電をひっくり返すように脅かし、既存のエネルギー事業を危険にさらしている」(Nick Cunningham、2013年12月22日)

 

 

しかし、大手の「既存事業者」の市場シェアと収益性が失われるということ、また、彼らの「行き詰まった資産」をどのようにあつかうのかという本当の議論を隠すため、自然エネルギーの問題点を指摘する他の議論が進められています。(例えば「系統の安定性」など)

 

一方で、いくつかの電力会社はこの動きを牽引しているか、もしくは適応しています。最近の Greentech Media の記事では「脅威の下で、ドイツ第2位の電力会社は新しい「プロシューマービジネスモデル」を作成すると発表」とあります。また、RWEは「私たちは、自然エネルギー事業を可能にし、運営し、システムを統合する者として私たち自身を位置づけていきます」とあり、記事は次のように述べています。

 

 

「私たちは電力産業で史上最も劇的な変化を目の当たりにするかもしれない… 押し寄せる分散型自然エネルギーの波と収益の大幅な下落により、欧州最大の電力会社のひとつであるRWEは伝統的な電力供給者から自然エネルギーサービス提供者へと完全に遷移を予定している… 電力会社の新しい理念は:適応するか — もしくは衰え無くなるかのどちらか、である。」(Stephen Lacey、2013年10月23日)

 

 

将来への3つ目の懸念は、主要メディアが自然エネルギーと気候変動をしっかりと関連づけて取り上げ続けていることです。これによって「気候懐疑派」も自然エネルギーに反対することになってしまいます。一般の人々の認識の中で自然エネルギーが気候変動と完全にリンクされたままである限り、「気候変動は起きていない」または「深刻な問題ではない」という意見は「自然エネルギーは必要ない」という意味を含んでしまいます。私は近年、マスコミが行う「自然エネルギーバッシング」の多くは、主に「気候変動バッシング」というますます加熱された政治的な議論の間接的な形であると考えはじめています。今後、メディアによる自然エネルギーと気候変動の「分離(decoupling)」を期待しています。自然エネルギー導入にはいくつかの明確かつ重要な理由があり、そのひとつである気候変動の脅威を仮に完全に取り除いたとしても、他の理由はまだほとんど認識されていないままなのです。(「世界自然エネルギー未来白書」前書き参照)

 

そして、私の4つ目の懸念は原子力産業の世界的な復活である。自然エネルギー、エネルギー効率化、および原子力発電は、二酸化炭素排出量を削減するための3つの主要な選択肢です。(ガスへの燃料変換、実証されていない二酸化炭素回収貯留も選択肢に含まれるという議論もありますが )炭素排出量を削減するための政治的圧力が増加し続けるほど、原子力産業はますます炭素中立な解決策として自らを位置づけるようになり、「自然エネルギーが必要である」という認識を弱めるのです。しかし、自然エネルギーは原子力発電と同等の信頼性とサービスをより安価に提供できるという十分な証拠が存在します。私には、核廃棄物と汚染負荷の倫理的な問題を未来世代に残していることは、なによりも大きな問題であると感じられます。10,000年もかかる試験を行うこともなく、必要とされる数万年の間、廃棄物を安全に環境から分離できるという技術者の主張は傲慢であると感じます。(技術者とは試行錯誤によって設計を行うものであり、多くの場合、1度目は失敗します。例えば、1969年の月面着陸の成功には7回の設計と試験の反復を必要としました)もちろん、事故や核物質の拡散の脅威も現実の問題です。

 

一方で、懸念していないのは安価なガス、特にシェールガスです。多くの人がシェールガスはどのように自然エネルギーに影響するのかと私に尋ねますが、長期的には、ガスと自然エネルギーはどちらも集中型電力網を補完する分散型解決策として中立的な協力関係にあると私は考えています。電力と熱、もしかしたら輸送についても、ガスと自然エネルギーのサービスを組み合わせた新しいビジネスモデルが同じ会社の中で現れることになるでしょう。そのため、安価なガスは長期的に自然エネルギーを助けることができるのです。短期的には、競争圧力が生じるでしょうが、すぐに相補性が常識になると確信しています。

 

今後数年間は困難に直面するでしょうが、私は楽観的なままです。なぜならトレンド、要請、および利益は、明らかに自然エネルギーが大勢を占める未来に向かっているからです。多くのトレンドや要請がある中で、多くの道が開かれています。私は世界自然エネルギー未来白書の要旨に書いたように、「自然エネルギーの将来は基本的に選択の問題であり、技術や経済の動向予測であらかじめ定められた結果ではない」のです。私たち次第なのです。

 

元記事:Renewable Energy Futures to 2050, ”Reflections on Renewable Energy Past, Present, Future”(2014年2月26日掲載)著者許諾のもとISEPによる翻訳

 

オリジナル掲載:Energy Democracy, 自然エネルギーの過去、現在、未来についての考察(2014年11月28日掲載)

 

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