食品偽装を引き起こすもの 

外国からうなぎを輸入した会社が、その輸入元を隠すことを条件として転売していたというニュースがしばらく世間を賑わせた。

 

 

常態化する食品偽装問題

 

その少し前には、やはり外国産うなぎの産地を日本に偽装した事件が取りざたされ、さらにさかのぼれば、菓子の消費期限の偽装や事故米の食用米偽装等、およそ食品にかかわる偽装問題をまったくみない時期はないというほどに、食品の偽装問題はつねに問題となっている。

 

消費者の側も、このような問題に強い関心を示すようになっており、実際に問題を起こした企業に対して強い拒否反応を示すようになってきている。

 

しかし、消費者の拒否反応にもかかわらず、食品偽装事件は依然として発生しつづけている。たとえば、消費者庁の資料から、JAS法にもとづく食品の表示基準違反に対する改善指示の件数をみても、H17年度に68件、H18年度63件、H19年度84件、H20年度118件、H21年度91件、とうなぎ昇りとはいえないが、着実に増えている。これは一体なぜなのだろうか?

 

 

情報の非対称性?

 

ひとつの答えは企業の儲け主義である。

 

もう少し細かくいえば、食品の品質や安全性に関する情報を生産者のみが保有しており、消費者は簡単にはそれを知ることができないという状況(経済学では情報の非対称性と呼ばれる)を背景として、そのような状況を企業が利用して利益を得ようとすることから、上のような問題が発生するということである。

 

たとえば、菓子などで消費期限をすぎてしまうと、値引き販売をしなくては売れないだろうが、消費期限をすぎているかどうかは、見た目からはなかなか判断できない。そうであれば、企業は消費期限を偽装することで値引き販売を回避し、利益をあげることができることになる。

 

しかし、この説明は現在の状況を十分説明できるとはいいがたい。

 

というのは、ここしばらく食品偽装事件がつづいたことで、企業は消費者の拒否反応や内部告発などにより偽装行為が発覚する可能性の高さを学んでいるはずであり、ゆえに食品偽装事件は減少傾向にあってもよいはずである。しかし、このような事件はむしろ増加している。

 

 

顧客から隔離されて成り立つ生産現場

 

そこで考えられるもうひとつの答えとして出てくるのは、生産者である企業の実際の生産現場と、消費者とのあいだの認識のギャップである。

 

もともと、企業はその内部を外部からある程度切り離すことによって、それ自体の仕組みを安定的に維持する、という側面をもつ。単純な話、何かを生産するときにすべての顧客の、すべてのリクエストに答えていたら、安定的な生産は成り立たないだろう。

 

これを逆からみれば、企業が安定的な生産をするためには顧客の意向や考え方を生産から切り離し、生産現場を顧客からいわば隔離する必要があることを意味する。この場合、顧客の考え方は生産現場には伝わらず、逆に生産現場の考え方や情報も顧客には十分伝わらないことになる。

 

その結果、生産者の側が儲け主義に走らなくても、生産現場と消費者とのあいだで本当に必要な情報が共有されないために認識のギャップが発生し、このギャップが偽装を引き起こすということが起こりうる。

 

 

 

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