性は、体やベッドの上の話だけではない。人生そのものだ。――『セクシュアル・マイノリティQ&A』

【シノドスに参加しよう!】

▶メールマガジン「αシノドス」

 https://synodos.jp/a-synodos

▶セミナー「シノドス・サークル」

 https://synodos.jp/article/20937

▶ファンクラブ「シノドス・ソーシャル」

 https://camp-fire.jp/projects/view/14015

弁護士・行政書士・司法書士・税理士などの法律家による「LGBT支援法律家ネットワーク」の出版プロジェクトが、2016年7月に『セクシュアル・マイノリティQ&A』(弘文堂)を出版しました。66個のQ&Aに加えて、本の最後には、「相談機関一覧」と「おすすめの本・ホームページ」を掲載。また、セクシュアル・マイノリティ当事者も執筆しているコラムには、さまざまな葛藤や苦悩とともに生きてきた半生が綴られていて、当事者の本音を垣間見ることもできます。

 

このように読者の皆さん自身の問題を解決するあらゆる手段をまとめた『セクシュアル・マイノリティQ&A』の中から、法科大学院生がゲイであることを友人にばらされて亡くなったことなどを理由に遺族が損害賠償を求める訴訟を起こしたという事件にも通じるQ&A「アウティング・『ばらす』と脅されている」と、特にトランスジェンダーに関して深刻であり、誰もが日々利用しているトイレについてのQ&A「本来の性別のトイレを使ってもよい?」の2つをご紹介します。(LGBT支援法律家ネットワーク出版プロジェクト)

 

 

アウティング・「ばらす」と脅されている

 

Q 1年前、親しい友人に自分がゲイであることを打ち明けました。その友人は、私のカミングアウトに対して理解を示してくれたので、話してよかったと思って信頼していました。ですが、先日、その友人とケンカをして、絶交してしまいました。ケンカの最中に、「ゲイであることをばらすぞ」といわれてしまい、「それはやめろ」といったものの、本当にばらされるかもしれないと思うと、不安です。どうすればよいでしょうか。

 

A 個人の性的指向や性自認を、本人の了解がないのに他の人に話すことは、プライバシー権の侵害です。脅迫、恐喝、名誉毀損などになる場合もあります。

 

 

●アウティングとは

 

アウティングとは、本人が了解していないのに、オープンにしていない性的指向や性自認などをばらすことをいいます。つまり、誰を好きになるのか、また自分の性がどういうものなのかについて、本人の許可なしに別の人が勝手にしゃべってしまうことをいいます。

 

残念ながら、自分が同性を好きになること、自分の心の性別が体の性別と違うことを、自由に他の人に自分から話すこと(カミングアウトすること)は、依然できにくい社会です。目に見えての差別は昔に比べては減ったのかもしれませんが、「ゲイであること」、「レズビアンであること」、「トランスジェンダーであること」によって、周囲からおもしろがって見られたり、また嫌悪されたりすることは、決して少なくないと思います。

 

だからこそ、性的指向や性自認については、個人の秘密として守られなければなりません。あなたの性的指向や性自認について、あなたの了解がないのに、勝手にしゃべられてしまうことは、あなたのプライバシーの権利を侵害するものとして、許されないのです。

 

あなたの話を聞いたA君が、「B君はいい奴だから、絶対に差別しないだろう。だからB君に話そう」ということを考えたとしても、あなたがB君に話そうとまだ思っていないならば、A君はあなたのプライバシーを侵害したということにもなりえます。

 

 

●ばらすぞと脅されている

 

それにもかかわらず、あなたは今、「ゲイであることをばらすぞ」と脅されていて、とても困っているということですね。

 

先ほども書いた通り、あなたの性的指向や性自認などを、あなたの了解がないのに他の人が話すことは、あなたのプライバシーを侵すことになります。もしも、あなたが嫌がっているにもかかわらず、あなたの性的指向や性自認などをばらしてしまう人がいるとすれば、あなたはその人に対して、プライバシー権を侵されたとして、心が傷ついたことによる慰謝料請求をすることができます。

 

また、ゲイであることが他の人に知られると、あなたの名誉が侵されてしまうと考えるのであれば、その人の言い方次第ではあなたに対する脅迫罪にあたる可能性もあります。さらには、ばらされたくなければお金を払えなどといってきたとすれば、恐喝罪にあたる可能性もあるでしょう。

 

ですから、あなたが性的指向や性自認などをばらされそうになっているのだとすれば、すぐに弁護士に相談して、弁護士の名前で相手に警告文を出しましょう。相手の性格にもよりますが、弁護士の名前で警告文を出せば、収まることが多いです。

 

また、警察に相談することも1つの方法です。被害届だけではなく、その人に刑罰を与えてほしいという内容の告訴状を出すことも考えられます。

 

 ●もうすでにばらされてしまった

 

一方、すでにばらされてしまった場合はどうでしょう。そのときは、1人では対応せずに、まずは相談窓口や弁護士に連絡を取ってください。また、インターネット上でばらされてしまった場合には、削除依頼を行うことも必要です。

 

 

●「ばらす」がなぜこわく感じるか

 

残念ながら、今の社会では、「性的指向や性自認などをばらしてやるぞ」という言葉は、あなたにとって脅威になってしまうことは否定できません。もしも、性的指向や性自認などを外部にオープンにしても、何もマイナスにならない社会であれば、この言葉は大きなプレッシャーや脅威にはならないでしょう。

 

アウティングが社会問題になる背景には、性的指向や性自認などをオープンにされると何か不利な扱いをされるのではないか、変な目で見られるのではないかという不安があるからともいえます。オープンにすることが不利にならないとセクシュアル・マイノリティが感じられる社会になれば、アウティングは問題にならなくなるはずです。(加藤慶二)【次ベージにつづく】

 

 

519ZJuZ4YiL._SX342_BO1,204,203,200_

 

1 2
シノドス国際社会動向研究所

vol.266 

・山本昭宏「平和意識の現在地――〈静けさ〉と〈無地〉の囲い込み」
・田畑真一「【知の巨人たち】ユルゲン・ハーバーマス」
・吉田徹×西山隆行×石神圭子×河村真実「「みんながマイノリティ」の時代に民主主義は可能か」
・松尾秀哉「【学び直しの5冊】〈現代ヨーロッパ〉」
・木村拓磨「【今月のポジだし】活動を広げよう――不登校支援」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(10)――「シンクタンク2005年・日本」自民党政権喪失後」