「若者ホームレス白書」を読み解く ―― ビッグイシュー基金の挑戦

雑誌販売を通じてホームレスの人たちの自立を支援する「ビッグイシュー」を母体に設立された、認定NPO法人「ビッグイシュー基金」で『若者ホームレス白書』が発行されている。2007年以降、若い販売者が増加したことをきっかけに、その実態を探るための調査が行われた。それを踏まえて、専門家や支援団体がセーフティネットを構築するための解決策を議論しまとめた報告書『若者ホームレス白書2』が、2012年4月より無料配布されている。若者ホームレス問題とは何なのか。ビッグイシュー基金スタッフの長谷川知広さん(28)に訊いた。(聞き手・構成/宮崎直子)

 

 

彼らは「見えにくい存在」

 

―― 「若者ホームレス」の定義についてご説明ください。

 

40歳以下でホームレス化している人を「若者ホームレス」と私たちは定義しています。一般的に日本で法的に定められているホームレスの定義は狭く、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」というもの。

 

実際には、ネットカフェやファーストフード店などで寝泊まりしたり、ドヤと路上を行き来したりしているような人がいますが、その人たちはこの定義に含まれていません。ですので、私たちは路上で生活をしている人に加えて、不安定な住居状態を経て、徐々に路上に近づいていく人たちも含めて呼んでいます。

 

つまり、ホームレス=路上生活と考えるのではなく、そこに至るプロセスすべてを視野にいれ、予防や支援をしていくことを課題としています。NPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」理事長稲葉剛さんの著書『ハウジングプア』で提唱されている概念に基づき、「屋根がない状態(ルーフレス)」「屋根はあるが家がない状態(ハウスレス)」「家はあるが、居住権が侵害されやすい状態」と、住まいの不安定性を多様なレベルで見て、ホームレス状態と定義しています。

 

 

「若者ホームレス」はなぜうまれるのか

 

―― 『若者ホームレス白書』(2010年)では、若者ホームレス50人の聞き取り調査によって、彼らに共通する特性などが明らかになっています。若者はなぜ、ホームレスになってしまうのでしょうか。

 

人それぞれですが、共通していえるのは、家族のサポートや金銭的な余裕がないことが要因の一つとしてあります。

 

養育者についての調査結果では、半数が両親に育てられている一方、3人に1人は片親です。両親の離婚、育児放棄など理由はさまざまですが、児童養護施設で育った人も50人の調査のうち6人いました。

 

 

023a4ed9

 

 

学歴は相対的に低く、中卒(含高校中退)の割合が4割と高くなっています。職歴を見ると、派遣社員経験がある人が約7割。半数以上が転職を5回以上経験しています。働こうと思ったときには学歴がなく、仕事のスキルも身につかない。さらに、解雇・倒産を経験した人は4割を超え、過去の仕事でさまざまなトラウマを抱えていたりする。仕事に対するポジティブな感情を持てず、働きたくても働けないというのが現状です。

 

 

6832de14

 

 

557d3f31

抑うつ的傾向にある人も約4割います。これは判断が非常に難しいのですが、「死のうと思ったことがある」「もうどうなってもいいと思う」といったコメントをした人のみをカウントしています。また池袋でホームレス支援をしているNPO法人「TENOHASI」と世界の医療団が2009年に行った調査では、路上生活者の6割以上がうつ病や統合失調症など何らかの精神疾患を抱えているという結果も出ています。

 

 

537ee85e

 

また、路上のみで過ごす人は少数で、大半の人がネットカフェ、マンガ喫茶、ファーストフード店、コンビニなど、終夜営業店舗と路上の行き来を繰り返しています。

 

「食事や寝床より身なりが気になる」「路上で寝るのが怖い」「ネット、携帯電話は欠かせない」「炊き出しに行くとホームレスに見られるから嫌だ」といったことも特徴として見られます。彼らは路上にいるとは限らないし、普通の若者とほとんど変わらないため、他人からホームレスとは気づかれにくいでしょう。

 

 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

・打浪文子「知的障害のある人たちと「ことば」」

・照山絢子「発達障害を文化人類学する」
・野口晃菜「こうすれば「インクルーシブ教育」はもっとよくなる」
・戸谷洋志「トランスヒューマニズムと責任ある想像力」
・濵田江里子「「社会への投資」から考える日本の雇用と社会保障制度」
・山本章子「学びなおしの5冊 「沖縄」とは何か――空間と時間から問いなおす」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(6)――設立準備期、郵政民営化選挙後」