性教育をアップグレードしよう!――自分自身のからだを守り、人生を選択できる力を育むために

あなたは自分の受けた性教育を覚えているだろうか?

 

「ほとんど覚えていない」

「女子と男子が分かれ、女子のみ月経の手当を教えられる」

「教科書の生物学的な内容をさらっと学ぶ程度」

「家庭では性の話題はタブー」

 

若者たちからは、そんな声を聞くことが多い。

 

そして、実は保護者向けの性教育講演でも、性教育についての記憶を聞くと、同じような答えがほとんどだ。ここ数十年の間に、日本の性教育は大きな進化を遂げていない。

 

筆者は中高生を主な対象として、大学生や若手社会人が身近な立場から性教育講演を行うNPO法人ピルコン(以下、ピルコン)を運営している。

 

2016年、講演依頼を受けた高校の対象生徒約4000名に性の知識を問うアンケートをしたところ、「膣外射精は有効な避妊法である」(答え:×)、「月経中や安全日の性交なら妊娠しない」(答え:×)などの避妊についての正答率は、3割程度にとどまる結果となった。驚くほど日本の高校生に、科学的な性の知識が定着していないことが分かった。

 

 

 

 

「性交」「避妊」がNGワード!?  繰り返される「性教育バッシング」

 

そんな中、2018年3月、都内のある区立中学校にて行われた性教育の授業が、都議会にて「不適切」だとする自民党古賀俊昭都議の発言があった。東京都教育委員会も調査・指導を行うと答弁を行った。

 

都教育委員会は、今回の授業では文部科学省が定める学習指導要領にない「性交」「避妊」「人工妊娠中絶」を扱っており、中学生の発達段階に応じていないという点を問題視。「学習要領を超える内容は、例えば事前に保護者全員に説明し、保護者の理解・了解を得た生徒を対象に個別やグループ指導を実施すべき」だとた。すべての区市町村の教育委員会に再発防止を周知するともしている。

 

一方で、区の教育委員会は、「10代の望まぬ妊娠や出産を防ぎ、貧困の連鎖を断ち切るために、地域の実態に即して行われた」授業だと反論。性教育の専門家団体“人間と性”教育研究協議会も、「教育への不当介入だ」と強く抗議している。

 

そこで筆者は、4月に東京都教育委員会と文部科学大臣宛てに、性教育の学習指導要領を見直し、「中高生が自分自身のからだを守り、人生を選択できる力を育む」内容にしてほしいと求める署名キャンペーン(https://www.change.org/adachi-karada)を立ち上げた。5月現在、約1万7000名以上の賛同者が集まっている。

 

生徒や地域の実態に即した性教育を行おうとする動きに対し、「不適切」と議員や都教育員会が断じた事件は、じつは今回が初めてではない。

 

2003年、都内の都立七生養護学校(現・七生特別支援学校)で行われていた性教育を都議が問題視し、メディアも「過激な性教育」とセンセーショナルに取り上げた事件がある。その結果、七生養護学校に関わる教育関係者が処分され、その後も性教育バッシングが続いた。

 

この事件の結果、日本の学習指導要領では小・中学校で、「受精に至るまでの過程(分かりづらいのだが、すなわち性交・セックスを指す)は取り扱わない」という歯止め規定ができ、中学校保健体育の教科書では、「性交」ではなく「性的接触」という言葉が使われるようになった。

 

一方で、七生養護学校の教諭らは、性教育を不当に批判され精神的苦痛を受けたとして、都議ら3人と都などに損害賠償を求めた訴訟を起こした。裁判では、都議らと都教育委員会が「教育の自主性を阻害」するなど「不当な支配」を行ったと裁判所に認定され、原告である教員らに賠償金を支払うこととする判決が確定した(2013年最高裁)。

 

その過程で、「学習指導要領は、おおよその教育内容を定めた大綱的基準であり、記載されていない内容を子どもたちに教えることが、ただちに違法とはならない」という点も確認されている。

 

ところが、その事件にかかわった、まさに同じ都議と都教育委員会が、2018年の今、またしても「学習指導要領にない」と言って「待った」をかけているのだ。【次ページにつづく】

 

 

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