言論空間における「関係性の明示」について

告知協力しようしようと思っているうちに期限が来てしまって内心申し訳なく思っているのだが、今私が関わっている、WOMマーケティング協議会(略称「WOMJ」)が、「WOMJガイドライン」改訂に関する意見募集を行なっていた。

 

 

「WOMJガイドライン改訂への意見募集を行なっています(5月30日~6月9日まで)」

http://womj.jp/news/2012/05/womj53069.html

 

 

口コミマーケティングにおける「関係性明示の原則」

 

いわゆる口コミマーケティングの事業者や関心を持つ個人などが集まっているWOMJは、口コミマーケティング(「WOMマーケティング」ともいう)を実施する際に事業者が守るべきルールをガイドラインとして定めている。その中心となっているのは、「関係性明示の原則」と呼ばれる以下のようなものだ。

 

 

WOMマーケティング事業者は、どのような関係性において、WOMマーケティングが成立しているかについて、消費者が理解できるようにしなければならない。関係性とは、原則として金銭、物品、サービスの提供とする。http://womj.jp/overview.html#anchor05

 

 

一般に口コミマーケティングでは、消費者による自発的な情報発信を喚起しようとするわけだが、その際、口コミの起点となる情報を発信する消費者に対して、金銭、物品、サービスなどの提供を行う場合がある。典型的には、レビューを書いてもらうためのサンプルや、ブロガーイベントなどに参加する権利、あるいはイベント会場までの交通費等の提供が挙げられる。これらの「関係性」がある場合にはその旨を、情報発信を行う消費者が明示するように、事業者として必要な措置を講じるべきだというのが、WOMJのいう「関係性明示の原則」だ。

 

このガイドラインは、2009年に発足した当初のWOMJが、まだ口コミマーケティング業界が今よりもずっと混沌としていた中で、多様な事業者が合意できる最大公約数として定めたものであり、そのためあえて抽象的な表現になっている。何がOKで何がダメかを細々と議論するより、望ましい方向性を掲げ、そこに近づくよう努力していく方がよい、というアプローチだった。

 

当時はこれでよかったのだが、業界が育ってくるにつれ、あいまいでわかりにくいといった声が挙がるようになってきた。折しも、昨今のステマへの批判の高まりもあって、もっと実効性のあるルールとすべくガイドラインを見直そうという動きが出ている。私が所属するWOMJガイドライン委員会でいろいろ情報収集や議論を行なっているところだが、同時にWOMJ会員や一般からの意見を求めようとしたのが冒頭の意見募集だったというわけだ。

 

改訂検討の中でこれまで挙がった論点は、主に「関係性明示の原則」の具体化に関するものだ。どの範囲で、どのような明示を行うか。その実行をどうやって担保するか。変化の速い業界でもあり、すべてを決めておくことはできないにせよ、ある程度は決めておかないと、現場で「使えないルール」となってしまう。また、これと併せて、「口コミ」とは厳密には言いにくい、Facebookの「いいね」ボタンを押す行為などについてもこのガイドラインの守備範囲に入れ、口コミでないものを口コミと誤解させるような偽装行為を行わない、といったルールを新たに定められないかなど、検討を続けている。

 

細かい論点はいろいろあるが、基本的な発想はシンプルだ。一般的な消費者が、口コミマーケティングによる情報発信に接したときに、その発信をした消費者が事業者とどのような関係にあったのかは、消費者の判断に影響を与えうる。であればそれは、あらかじめ明示されるべきである、という考え方だ。たとえばブロガーが、事業者から無料のサンプルをもらったり、イベントに招待されたりするなど、便宜をはかってもらったのであれば、そのブロガーが当該商品やサービスを推奨したとしても、その言説は便宜供与に影響されている可能性がある。しかしそのことは開示されなければわからず、結果として消費者が判断を誤るおそれがある。

 

もちろん、事業者がマーケティング活動として、サンプルを提供したり、ブロガーイベントを行ったりすること自体は何ら恥ずべきことではなく、正当な事業活動の一環だ。しかし、そうであればこそ、そのことは堂々と開示すべきだ。また、単に開示しないというだけでなく、積極的に隠蔽して、あたかも一般人が自然に抱いた感想であるかのような口コミをさせたとすれば、それは消費者を「騙す」行為であるといわざるを得ない。そのような「恥ずべきマーケティング活動」は、行うべきではない。そういう考え方だ。

 

 

 

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