日本のプラスチックごみの行方を知って、冷静な議論を

マテリアルリサイクル

 

「マテリアルリサイクル」の例として、代表的なものはペットボトルのリサイクルである。ふたたびペットボトルになるほか、ほかの工業原料や素材になる。ただしペットボトルを含め廃プラの「マテリアルリサイクル」は、手放しで称賛されるわけではない。新たにプラスチック製品に加工するときリサイクルされた樹脂のほかに、新しい樹脂を混ぜて使用する必要がある。これは「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」に比べて、エネルギー使用量や二酸化炭素の排出を減らす効果が高いとは言えないとされているからだ [8]。

 

これまで海外に輸出されていた100~150万トンの廃プラは、主として「マテリアルリサイクル」用途であったとされる [3]。輸出できなくなった廃プラが国内で不法投棄された事例は、現時点では確認されていない [9] ものの、この少なくない量を、今後国内で処理する必要が出てきた。ここで、無理な「マテリアルリサイクル」には慎重になった方がよい。すでに述べたようにエネルギー使用量の観点からは有利とはいえないからだ。

 

 

ケミカルリサイクル

 

エネルギー使用量や二酸化炭素の排出を減らす効果がもっとも高いとされる「ケミカルリサイクル」[8] では、様々な廃プラを処理可能である。化学工場が必要で、容器包装リサイクル法に基づく廃プラを処理できる工場は全国に8か所あり、処理能力は合わせて44万トン(2019年)である [3]。容器包装由来の廃プラが400万トン程度であるから、すべてを「ケミカルリサイクル」することは難しい。しかも、リサイクルして作った再生原料を使う先がないと現実的に量を増やすのは難しい。廃プラを工場まで輸送する距離が長いと、輸送のエネルギーや費用もばかにならない。これらの折り合いをどうつけるかは課題である。

 

 

サーマルリサイクル

 

廃プラの処理方法で現在もっとも多いのは、焼却して熱回収される「サーマルリサイクル」だ。世界的には「エネルギー回収」と呼ばれている。プラスチックは熱量が大きいことから、焼却して熱回収し、その熱を有効に使う方が、総合的に得られるメリットが大きいためである [8]。

 

さらに、様々な組成の樹脂が混じった廃プラは「マテリアルリサイクル」が一般には難しい。その理由は、原料としての品質が安定せず、ごく限られた用途にしか使えないからである。選別や洗浄を行うにしても、多くのエネルギーや人手(費用)がかかる。このような様々な樹脂が混じった容器包装をできるだけ使わないという考えもありうるだろう。しかし、これらの容器包装は、食品を衛生的に鮮度よく保つなど、現代の生活を安全で快適なものにするため重要な役割を果たしているものも多く、これらをゼロにするわけにはいかない。

 

廃プラの「サーマルリサイクル」は、日本で主流の「ごみは焼却して熱回収」という流れとも合致し、熱回収の効率を上げる技術開発もセットで進められてきたなかで優位になっている、という事情もある。効率の良い熱回収やごみ発電ができる設備があるかないかは、自治体によって違う。ない場合は、一般のごみと一緒に焼却炉で燃やした方が良い。余談になるが、この点が、プラスチックごみの分別方法が自治体ごとに違う理由の一つだ。住んでいる自治体の廃プラの処理ルート [10] や、ごみ発電炉の効率などを調べてみるのも面白いだろう。

 

 

ごみ問題はエネルギーと処理コストの問題でもある

 

このように、廃プラをいかに処理するかという問題は、エネルギー有効活用や二酸化炭素の排出の問題と切っても切れない関係にある。プラスチックをプラスチックにもう一度戻すのが必ず正しいとは限らない。

 

さらに、廃プラの回収・処理費用は、税金やメーカーが商品価格に上乗せして得た費用で賄われていることも忘れてはいけない。お金をかけて行ったリサイクルが、却ってエネルギーの使用量や二酸化炭素の排出を増やしていたとすれば、それは受け入れられないだろう。また、エネルギー使用量が減ったとしても、それに見合わない莫大な費用が掛かっていたとすれば、納得できる税金の使いみちとは言えないだろう。

 

 

まとめ:対策の方向を見誤らないために

 

日本の現状のごみ処理では、使い捨てプラスチックを減らしても、海に排出されるプラスチックの量に変化はほとんどないことを述べた。また、プラのレジ袋や包装を紙に置き換えることは、どちらも焼却されることを考えると、ごみのたどるルートに差はなく、これも海洋プラスチックごみとはほとんど関係ないことも推察できる。つまり、日本のプラスチックごみの発生抑制政策や、廃プラのリサイクル政策は、海洋プラスチック問題と分けて考えたほうがよい。

 

まずは、日本のプラスチックごみが現状どのように処理されているかを知ること。廃プラのリサイクルについては必要なエネルギーとのバランスで、最適な手段を選ぶこと。ごく当たり前のことであるが、これらの冷静な議論が必要である。

 

 

参考文献

[1] Jambeck JR, Geyer R, Wilcox C, Siegler TR, Perryman M, Andrady A, Narayan R, Law KL (2015). Plastic Waste Inputs from Land into the Ocean, Science 347(6223), 768 – 771. 日本の数値は本文中には出てこないので、付録のエクセルファイル(https://science.sciencemag.org/content/suppl/2015/02/11/347.6223.768.DC1よりDATA S1)を参照.

[2] 環境省HP. プラスチックを取り巻く国内外の状況 参考資料集. http://www.env.go.jp/council/03recycle/y0312-05/s1.pdf

[3] 一般社団法人プラスチック循環利用協会(2019). プラスチックリサイクルの基礎知識. 2019.https://www.pwmi.or.jp/pdf/panf1.pdf

[4] 国立環境研究所HP. 知ってほしい、リサイクルとごみのこと. 

https://taiwa.nies.go.jp/colum/recycling.html

[5] UNEP (2018). SINGLE-USE PLASTICS: A Roadmap for Sustainability. https://www.unenvironment.org/resources/report/single-use-plastics-roadmap-sustainability.

[6] UN Comtrade database https://comtrade.un.org/data

[7] 環境省 (2019). プラスチック資源循環戦略https://www.env.go.jp/press/files/jp/111747.pdf

[8]一般社団法人プラスチック循環利用協会HP. プラスチックとリサイクル8つの「?」. http://www.pwmi.or.jp/pdf/panf3.pdf

[9]環境省環境再生・資源循環局(2019).外国政府による廃棄物の輸入規制等に係る影響等に関する調査結果~平成30年度下期~(概要版)令和元年5月. https://www.env.go.jp/press/files/jp/111667.pdf

[10] 日本容器包装リサイクル協会HP. わたしのまちのリサイクル~分けた資源はどうなるの?~. https://www.jcpra.or.jp/Portals/0/resource/special/mytown/index.php

 

 

謝辞

本稿の執筆にあたり、東京都環境科学研究所 中村豊氏より情報をいただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。

なお、本稿の記載内容の責任は筆者本人にあり、所属する機関の見解ではないことを付記します。

 

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