国だけでは、もはや日本という社会は支えられない

病気にかかったり、その回復期にあって保育園・幼稚園での集団保育が難しい子どもたちを一時的に預かる「病児保育」は、共働き家庭にとっては欠かせない施設。しかし日本には、その整備がまったく追いついていない現状がある。そうしたなか、社会起業家として病児保育に取り組んできたのが、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さん(32)だ。

 

NPO法人フローレンスは東日本大震災後、その事業経験を生かしてさまざまな被災地支援にチャレンジしている。12月8日には、外でなかなか遊べない福島の子どもたちのため、屋内で安心して遊ぶことのできる施設「ふくしまインドアパーク」を立ち上げた。社会問題を解決するため、積極的に事業を立ち上げつづけていく駒崎さんに、3.11以降のNPO、社会起業家のあり方について伺った。(聞き手・構成/宮崎直子)

 

 

屋外活動ができない福島で、子供が遊べる場所を

 

―― 「ふくしまインドアパーク」を立ち上げようと思ったきっかけは。

 

震災直後から放射線の影響で、子どもたちが外で遊べない状況がつづいています。福島県出身の妻の友人たちが嘆いているのを知り、これは何とかできないかと思いました。そこで、フローレンスは「病児保育」事業を軸に、待機児童問題を解決する小規模保育サービス「おうち保育園」や、不動産会社とともに「子育て支援マンション」をつくる事業を行なってきたのですが、東京都・勝どきの施設内で運営していたインドアパークを被災地でもやれないかと思ったんです。

 

場所を探しはじめたところ、ツイッター上で西友の副社長から「われわれに何かできることはありますか」というメッセージをいただき、さっそく話を進めていくことになりました。半年間の苦労を経て、製薬会社グラクソ・スミスクラインや孫正義氏の寄付によって設立された「東日本大震災復興支援財団」などからの寄付を活用し、12月8日に郡山市最大のショッピングセンター「ザ・モール」内に「ふくしまインドアパーク」を設立しました。乳幼児が安心して遊べるように創意工夫をしています。子ども同士でコミュニケーションをとりながら遊べる、ちょっと変わった遊具を海外から取り寄せています。

 

 

―― 乳幼児にとっての「遊び」とは。

 

乳幼児の「遊び」は人格を形成するために欠くことのできない要素のひとつなんですね。発達心理学では遊びは心をかたちづくる行為といわれています。たとえば子どもは「ごっこ遊び」をしますが、これは想像力を養うプロセスで、コミュニケーション能力の土台となります。相手の行動にどう反応すればいいのかを遊びを通して学んでいきます。子どもにとって遊びは「心の栄養」なんですね。とくに0~6歳の未就学児が外で遊べないというのは死活問題。そこをきちんと手当するような場がいくつも必要です。今後は郡山を皮切りに福島県内の他の都市にも広げていきたいと考えています。

 

 

 

岩手、宮城、福島の中高生800人に「進研ゼミ」を提供

 

―― 子どもの貧困問題にも取り組まれていますね。

 

病児保育事業では、ひとり親の方に病児保育を安価に提供することをずっとやってきました。たとえば、ひとり親の世帯では子どもの学校外教育費用を払えません。とくに都市部では学校と塾がセットで受験の勉強が成り立つようになっています。親がお金を払えないことによって子どもの将来の可能性が狭められ、また子どもの収入も下がるというような、ある種の貧困の社会的遺伝が起きてしまいます。

 

震災後は失業率が高まり、失業保険が切れると一気に貧困に陥ることになります。当然、子どもの教育のチャンスもなくなります。そこで、ベネッセコーポレーションと共同で、岩手、宮城、福島の中学生、高校生を対象に「希望のゼミ」事業を立ち上げ、定員600人を上回る800人に進研ゼミを無償で提供しました。基本的には低所得世帯の子どもたちに対して行なっています。

 

 

―― 現地の雇用を生み出すということもつねに視野に入れていますね。

 

12月4日に、宮城県石巻市で地元の塾と提携して無償学習室を開きました。「希望のゼミ」の受講者を対象に、生徒からの質問に答える学習支援スタッフを常駐させ、生徒の自習をサポートしています。スタッフはハローワークで現地の人を雇いました。ある種のキャッシュ・フォー・ワークとして、地元経済の復興を支える雇用への貢献も目指しています。先の「ふくしまインドアパーク」でも被災地の保育士を雇っています。

 

 

―― 「希望のゼミ」を受けた生徒からはどのような反応がありましたか。

 

生徒一人ひとりに夢を書いてもらっているのですが、あのとき自分を助けてくれた人のようになりたいといった、震災を経験したからこそ描ける未来というものを得た子どもたちが多いんですね。それはすごく本質的なことだと思います。子どもたちはもうすでに前を向いて歩き出している。それをわれわれが「助けてあげる」のではなく、一緒になって走っていくようなイメージで活動していますね。

 

 

 

 

 

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