東京電力福島第一原発の何が問題だったのか 検証その2

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無責任の体制か

 

福島第一原発1号機の気密試験データをめぐって、東電は90年代のはじめ、検査を請け負った日立製作所グループの社員に偽装工作をさせていたようである。そのような報告書が2002年12月、保安院に提出された。

 

また、2002年の東電トラブル隠し(29件)で、保安院は、16件が「問題あり」と結論づけたものの、その後浮上した11件の疑惑――東電、東北電力、中部電力の再循環ポンプ配管溶接部の損傷隠し疑惑――については、安全に重大な影響を及ぼさないという電力会社の言い分を、「おおむね容認できる」とした。その際に保安院は、これらの疑惑については、国への報告義務があったのかどうかさえ、「さらに検証する必要がある」と報告している。こうした保安院の対応に、問題はなかったのだろうか。

 

どうも原発をチェックする体系が、あいまいなまま放置されてきたのではないか。

 

当時の勝俣恒久副社長は、トラブル処置については、「発電所の長に全責任があり、本社はアドバイザー的機能を持っているだけだ」と説明した。ところが損傷隠しについては、発電所員が「本社に相談した」という。これに対して本社幹部は、これを「覚えていない」と証言しているのだが、これでは東京電力という組織が、「無責任の体制」のようにもみえてくる。

 

その後、東電の社外弁護士調査団は、2か月かけて聞き取り調査をした。ところが東電社員のなかには、「詳しいことは思い出せない」とする者が多く、だれがどう指示したかについては、詰めきれなかったという。ある東電幹部は、犯罪行為なのに忘れるという罪悪感のなさに、驚いた。「ほかに同じような不正があっても不思議ではない」と病巣の広がりを心配した。

 

 

放射性物質汚染があった

 

2002年10月23日、大阪の市民団体が内部告発文書を発表した。それによると、1979年から1981年にかけて、福島第一原発の1、2号機共通の排気筒から、アルファ線を出す放射性物質が、1立方センチあたり最大11ナノベクレル(ナノは10億分の1)放出されたという。検出されたとすれば、ウランかプルトニウムだった可能性がある。東電側は、「そういう文書はあるが、放出は基準値以下だった」としている。

 

市民団体の小山代表は、アルファ線を出す物質が、主として、燃料棒の破損で漏れ出したプルトニウム239だと考えた。氏は、国の指針にもとづいて計算した結果、最悪の場合、敷地境界濃度が規制値の約8倍になる、と主張している。

 

 

コンクリ検査で偽造

 

2004年8月、ある内部告発が明らかにされた。それによると、東京電力の福島第一原発と第二原発の建設に使われた砂利や砂に、コンクリートを弱くする有害成分が含まれていたという。ところが試験結果は偽造され、「無害」と報告されていた。内部告発をしたのは、砂利採取会社の元社員男性。この男性は、中部電力浜岡原発でも、同様の告発をしている。

 

偽造とされるのは、コンクリートにひび割れを生じさせ、はがれ落ちたり鉄筋を腐食させたりして強度を失わせる「アルカリ骨材反応」を起こす成分を調べる試験。第三者機関に試験を依頼する際に、砂利をすりかえたりして、結果を偽造していたという。

 

 

使用済み核燃料プールから少量の水漏れ

 

2005年8月、宮城県沖を震源とする地震の影響で、福島第一原発の2号機と6号機、および、福島第二原発4号機では、使用済み核燃料プールから少量の水漏れがあった。漏れた水量は、第一原発2号機で約12リットル、同6号機で約11リットル、第二原発4号機で約1・5リットルであったという。

 

 

トリチウム漏れ

 

2006年8月、東京電力の福島第一原発4号機で、放射性物質のトリチウムが周辺の海水などに漏れた問題について、市民団体「脱原発福島ネットワーク」は、東電の勝俣恒久社長に対する抗議文を同原発側に手渡した。トリチウムの漏出について、東電は「原因がはっきりしない」として、漏出から7日間も公表していなかったという。

 

 

信頼の根幹が揺らぐ

 

2006年末から2007年初めにかけて、東京電力は、データ改ざん問題に揺れた。同社の原子力発電所では、77年以降、延べ199回の定期検査に関するデータ改ざんがあったという。

 

原発の非常用炉心冷却装置のポンプの故障を隠して検査を通したり、放射能の測定値を低くごまかしたりした悪質なものもあった。不正のほとんどは、2002年のトラブル隠し発覚後の総点検でも、見過ごされていた。福島第一原発1号機では、1979年から1998年にかけて、計28回にわたって、蒸気の流量を監視し、弁を作動させる装置を正しく設定せずに検査を受けつづけていたという。

 

これを受けて、東京電力の築舘勝利副社長は、「この4年間の努力が十分でなかったと言わざるを得ない。企業風土、組織体質の問題ととらえていく」と陳謝した。

 

朝日新聞はこの問題をめぐって、次のように批判している。「放射線モニターや非常用炉心冷却装置は、いずれも原発の安全性や地域の安心を確保する上で欠かせない重要設備の一つ。国の検査をごまかしたり、外部への放射能の放出を示す観測データを勝手に書き換えたりしていたことは、原子力を扱う電力会社の信頼性の根幹に触れる問題だ」と。

 

 

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シノドス国際社会動向研究所

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