東京電力福島第一原発の何が問題だったのか 検証その2

保安院は多忙?

 

2007年7月、原発の工事などに対する国の認可への「行政不服審査」に対して、保安院は、最長26年間も処分を決めずに放置していたことが判明した。保安院は「忘れていたわけではないが、事故の対応などに忙しかった」と弁明している。

 

東京電力福島第一原発などにおけるプルサーマル計画については、2000年に、不服申し立てが行われた。この不服審査をめぐって、当時、聴取会が2件開かれた。申立人の1人で「福島原発市民事故調査委員会」の山崎久隆さんは、「行政の怠慢だ。プルサーマルはすでに福島、新潟の両知事が受け入れの撤回を表明しており、今さら何を聴くのか。怒りを覚える」と話した。

 

なお、行政不服審査法は「簡易迅速な手続きによる国民の権利利益の救済を図る」としているが、処分決定をする期限は特に定めていない。

 

 

被爆者への労災、認められず

 

福島第一原発などにおける仕事で70ミリシーベルトの被曝(ひばく)をし、労災認定を受けた元プラント建設会の社員が、2004年、東京電力に対して訴えを起こした。ところが結局、その訴えは認められなかった。

 

訴訟の判決は、2008年5月23日、東京地裁であった。松井英隆裁判長は「鎖骨などの病変は、骨髄のがん化した細胞の増加によるものではない」と指摘、また「国際基準による200ミリシーベルト未満の放射線被曝と疾患の因果関係は認められない」として、請求を棄却した。これに対して原告側は、控訴する方針だという。

 

原告は、がんの一種の多発性骨髄腫になり、2007年に82歳で死亡した。原告を支援してきた関西労働者安全センターの片岡明彦事務局次長は、東京地裁の判決に対して、「労災認定の判断を覆した、極めて異常な判決」と批判している。

 

 

廃炉しないという方針

 

2009年6月、東京電力の株主総会で、283人の株主から、「福島第一原発3号機でのプルサーマル計画を実施せず、1~3号機までの廃炉を求める」との要求があったが、否決された。

 

2010年3月、東京電力は、来年で40年を迎える福島第一原発の一号機を、さらに10年運転することができるという主旨の評価書を提出した。評価書では、配管の減肉や腐食の監視、溶接部の超音波検査などをすれば、60年間の運転を仮定しても、安全性に問題はないとしている。

 

これを受けて保安院は、2011年1月、今後10年間の運転継続を妥当と判断し、40年以上の運転継続を認めた。近く、内閣府の原子力安全委員会に報告するという。

 

40年超の運転は、国内では日本原子力発電の敦賀原発1号機、関西電力の美浜原発1号機に次いで、3番目になるという。

 

 

まとめ

 

この他にも問題はたくさん生じているが、重要だと思われる問題の一端を検討してきた。整理すると、東京電力福島第一原発は、(1)1978年に臨界事故を起こしていた。(2)大丈夫とされた震度4にも耐えられなかった。(3)別の地震では、使用済み核燃料プールの水が漏れた。(4)コストを気にして、多くの損傷を隠してきた。(5)国も偽装に関与していた。(6)下請け業者に偽装工作させていた。(7)チェック機能が長期にわたってマヒしていた。(8)内部告発によってはじめて、放射性物質漏れが発覚した。(9)コンクリートの強度は弱められていた疑いがある。(10)データの改ざんは、2002年以降も繰り返され、企業風土の問題となっていた。また保安院は、(11)行政不服審査に対して十分な対応をせず、(12)40年をこえる原子炉の稼動を認めていた。

 

こうしてつまり、東京電力にも保安院にも、さまざまな問題があったことが分かる。誤りを繰り返さないために、いま何が必要なのか。組織、制度、倫理など、あらゆる面における点検と改革が求められているように思われる。

 

 

推薦図書

 

検証 東電原発トラブル隠し (岩波ブックレット)

検証 東電原発トラブル隠し (岩波ブックレット)書籍

作者原子力資料情報室

発行岩波書店

発売日2002年12月20日

カテゴリー単行本

ページ数70

ISBN4000092820

Supported by amazon Product Advertising API

 

原発事故は、どんなにお金をかけても、防げるわけではない。あるいは、法律でどんなに縛りをかけても、どんなに厳しく管理しても、最後は結局、現場の技術者に依存しているのだろう。だから問われるべきは、技術者の倫理だということになる。技術者の倫理について、外部から市民的に検討していこうというのが本書のスタンスで、本書は2002年に起きた一連の東電トラブル隠しについて、分かりやすくまとめている。政府・企業・官僚に問題を任せないで、市民意識を高めていく。そのような市民的リテラシーのための、基本書である。

 

 

 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.256 

・熊坂元大「「道徳教育」はこうすれば良くなる」
・穂鷹知美「終の住処としての外国――スイスの老人ホームにおける 「地中海クラブ」の試み」
・徳山豪「アルゴリズムが社会を動かす」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(1)――シンクタンク創設への思いとその戦い」