稼ぐインフラ ―― 人口縮小社会における公民連携事業

本コラムでは、人口縮小、産業衰退にともなう地方自治体における財源の枯渇と、公共インフラ全般の更新問題について取り上げる。現在主流となっている「縮小する財政にコスト削減によって最適化して」という方法論だけでなく、とくに近年見られる「公共インフラの一部を民間で利活用することによって稼ぎを生み出し、その収入で公共サービスを支える」という方法論について検討したいと思う。

 

従来の公共観念からすれば、公共資産の一部で稼ぐということはタブー視されてきているが、一方で収入がこれ以上見込めないからすべて削減していくという方法しか考えられない公共のあり方では、財源の枯渇によって「提供すべきサービスも提供できない」という論理しか展開できずにいる。

 

今後は、従来の公共インフラに対する考え方を再検討し、新たに「稼ぐ機能」を公共インフラの一部に付随させることによって公共サービスを充実させることが一つの方法論である。実際に、道路の利活用から、学校施設の活用などさまざまな公共資産が新たな方法で活用され、その収入の一部が公共に還元されている。

 

 

財源の枯渇と公共施設更新のダブルパンチ

 

地方普通会計における道府県の歳入のピークは、1998年の48.9兆円であった(総務省自治財政局財務調査課「地方財政統計年報」)。その後、交付税などで政府によって地方自治体の経営を下支えしているものの、全体として財源が減少していくトレンドは変わっていない。それに対して社会保障費は増加しており、財政は極めて切迫しているのは長らく言われている問題である。

 

このような状況下で問題となっているのが、既存公共インフラの更新問題である。東洋大学根本祐二教授が『朽ちるインフラ』(日本経済新聞出版社)で指摘したように、現在我々が利用している、学校をはじめとした公共施設、道路などの公共インフラは戦後高度経済成長期以降に作られ、すでにその多くが更新時期を迎えようとしている。単純計算で現在の公共インフラを維持しようと考えれば、年間約8兆円、総額330兆円のインフラ等の更新費用が必要となる。

 

財源が減少するにもかかわらず、膨大な更新費用が必要となってくる。しかしどう想定しても、得られる税収と公共インフラの維持・更新費用との乖離は大きく、従来通りに公共インフラを更新することは無理である。だからこそ、公共インフラの今後の更新を”どのように”行うか、というのに注目が集まっている。

 

 

減少する収入に合わせるか、稼ぐ策を考えるか

 

まず、現在いくつかの自治体では公共施設の今後の更新費用に関する維持管理・更新計画を策定している。総務省も「公共施設及びインフラ資産の将来の更新費用の試算」という指針と計算用アプリケーションの提供などを行っている。これによって公共インフラの統廃合などを実施するべき基準が見込めるのである。

 

これは将来の予想される税収をもとに維持可能な公共インフラ規模を逆算するという方式であり、コストベースで公共施設を考え、税収に合わせてコストをカットしていくという考え方である。しかし計算をした上で示される、「公共インフラ30%を削減すべし」といったような目標数値や、それに基づく公共インフラの統廃合などの具体的実施に関しては、当然ながら政治行政的なプロセスを必要とするため、簡単には計画を執行できない現実がある。

 

他方として、まだ多くは聞こえないが「稼ぐ公共インフラ」という考え方も出てきている。

 

その1つが、公共インフラ自体に商業機能などの稼ぐスペースを生み出すことによって、従来はフルコストであった公共インフラの一部をマネタイズする方法である。図書館にカフェを併設したり、道路上に商業施設を建設するといったケースは全国各地で生まれている。

 

もう1つは、インフラシステムそのものを海外などに輸出して稼ぎ、その収入で地元のインフラを支えるという考え方である。日本でも上下水道や地下鉄などのインフラをアジアなどの新興国に売り込み、そこからの収入を得ていこうとする取り組みが始まっている。

 

減少する収入に併せてコストを削減していくやり方と、新たな収入を生み出してその分でサービスを充実させていくという考え方の2方向で公共インフラの更新問題の解決に向けた取り組みは展開され始めている。

 

 

 

シノドスのコンテンツ

 

●ファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」

⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

●電子メールマガジン「αシノドス」

⇒ https://synodos.jp/a-synodos

 

●少人数制セミナー「シノドス・サークル」

⇒ https://synodos.jp/article/20937

 

 

 

 

1 2 3 4 5
シノドス国際社会動向研究所

vol.2019.4.15 

・打浪文子「知的障害のある人たちと「ことば」」

・照山絢子「発達障害を文化人類学する」
・野口晃菜「こうすれば「インクルーシブ教育」はもっとよくなる」
・戸谷洋志「トランスヒューマニズムと責任ある想像力」
・濵田江里子「「社会への投資」から考える日本の雇用と社会保障制度」
・山本章子「学びなおしの5冊 「沖縄」とは何か――空間と時間から問いなおす」
・鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(6)――設立準備期、郵政民営化選挙後」