コミュニティデザインを考える 

「つながりをデザインする」 —— 地域住民が自分たちの手で自分たちのまちを築いていくために必要なものとは何か。まちづくりワークショップ、市民参加型のパークマネジメントなど、全国で50以上のコミュニティづくりにかかわる山崎亮さんへのインタビュー。(構成/宮崎直子)

 

 

コミュニティデザインとは何か

 

古屋 本日はわたしと大野さんで、山崎さんに「コミュニティデザイン」についてお伺いしたく思います。大野さんは到着が遅れているようなので、まずわたしから自己紹介をさせてください。わたしは大学ではドイツの環境政策などを学んでいました。卒業後、自然エネルギー、再生可能エネルギーについて、もっと深く勉強したいと思い、国内の大学院に入学すると同時に、環境エネルギー政策研究所(ISEP)でインターンをはじめました。

これまでISEPは、政策の研究・提言活動に加え、地域の人たちが風力発電や太陽光発電などの事業などを起こすための支援活動をおこなってきました。そうした事業開発の現場に直接/間接的にかかわってトレーニングを積んだ後、三年間ほどデンマークのオールボー大学に留学しました。

 

ヨーロッパでは、70年代から、原発に頼らず化石燃料も減らしていくことに取り組んできた国があり、とくにデンマークは協同組合で風力発電事業を行っているケースがとても多い。電力の20パーセントくらいを風力でまかなっているのですが、そのうち85パーセントが協同組合を通じて地域の人たちによって所有されています。住民たちが事業計画をつくって出資を募り、そして稼働させて収益をシェアする。こうした「ビジネス」が当たり前に行われてきた社会的な背景を調査し、3.11後に帰国しました。

 

帰国後は日本のエネルギーをめぐるいろいろな新しい動きにかかわってきましたが、その中でも環境省の支援事業で、地域の人たちを中心に再生可能エネルギー事業計画をつくるというのがあり、ISEPは全国15地域をサポートする事務局を担当しています。実際に担当地域に足しげく通い、コーディネーターの方たちや協議会のメンバーたちと相談したり、あるいはセミナーやワークショップを開催しながら、住民参加によるプロジェクトづくりを支えるのがわたしのいまの仕事です。

 

これまでのような大規模集中型の開発ではなく、小規模分散型で地域の人たちが参加し、彼ら彼女らがオーナーシップをもって、しかもそのことが地域のメリットになるような「分散型エネルギー社会」のあり方を模索しつつ実践しています。山崎さんのお仕事とはすごく近いので、本日はぜひ勘所のようなものをお伺いしたいなと思っています。

 

コミュニティデザインと聞いて、すぐにわかる方はそれほど多くないかと思いますので、まずは簡単に、山崎さんがなさっていることをご説明いただけますか。

山崎 ぼくたちは、地域の課題を地域の人たちが発見し、解決するためのお手伝いをしています。いろいろな地域をたずね、そこに住む人たちの話をとことん 聞きながら、その人たちの想いを引き出していきます。その中で、地域の人たちが自分たちの力で、楽しみながら課題に取り組んでいくきっかけや仕組みをデザインする仕事をしています。

 

危機感を共有する


古屋 山崎さんは先日、中公新書から『コミュニティデザインの時代』を出版されました。そこでもお書きになっていますが、これから人口が減少していくなか、中央と地方との関係も変わっていかなければなりません。いままで専門家や行政にまかせていた問題に住民自身が向き合い、自らが解決の担い手になっていく必要があります。そこでは住民たちの意識のあり方が重要になってきます。住民の意識変革を促しながら地域が自立する方向に社会の仕組みを変えていく、という困難な仕事を、山崎さんはどのように実践なさっているのでしょうか。

 

山崎 おっしゃるとおり、外から専門家がやってきて、手取り足取り面倒を見てくれる、という意識自体をかえなくてはいけません。本人たちが立ち上がらないかぎり、外部の人間ができることなどほとんどありません。ところが、ある市で記者会見をしたときの話ですが、翌日の新聞がこぞって「地域再生の救世主きたる!」みたいな記事を書いちゃうんですよ。そうなると住民はお客さんになってしまいます。

 

「皆さん自身が動き出さないと、何ひとつ変わりませんよ」ということをいかに伝えるか。いくつか手法があるかと思いますが、ひとつは危機感を共有することですね。古屋さんのお仕事でいえば、「このまま、このようなエネルギーのつくり方、使い方をしていてはいけない」というところを共有する。そして、自分たちが参加しないかぎり地域のマネジメントはできないと、社会構造の変化を共有することですね。

 

そこで、ひとつ注意が必要なんですが、ある程度の信頼関係ができたら、「ぼくはこの地域がどうなろうと知ったことではないんです」ということを伝える必要がある。「ぼくはここに住んでいるわけでも、ここで働いているわけでもない。だから、皆さんがやる気を出すのなら、最大限応援したいと思いますが、やる気がないのであれば、別にそれを叱ろうとも思わない。美しく消えていくのもひとつの選択肢ですよ。でも消えるときには、こんな地域もあったんだと、きっちりアーカイブ化して、伝統や文化はWEB上に残しましょう」というようなやり取りを住民と真剣にやります。

 

そこで、よく話すのは次のようなことです。「ぼくらは隙あらばサボろうとします。地域に来ないように、来ないようにします。皆さんにできることをどんどんやっていただいたら、ぼくらのやることは少なくなっていく。行政の委託費がどんどん下がって、いずれぼくらは地域にいなくてもよい存在になっていく。一年でぼくらの知識や経験をすべて伝えるつもりです。皆さんにどんどん動いてもらって、できないところだけをぼくらはやるようにしたいと思います」。

 

このように専門家というものの概念をずらしておかなくてはいけない。そうしないと、住民が待ちの姿勢になってしまいます。

 

古屋 そのとき、山崎さんがお書きになっている「質問力」というのが、すごく大事になると思います。専門家が一方的に話すのではなく、ぼくであれば、「皆さんはコミュニティって何だと思いますか?」と問いかけてみたりする。もちろん、最初はよくわからないという反応なのですが、そこでデンマークの事例を話したりすることで、住民の想像力を少しずつ広げていく。あくまで主役は皆さんなんですよ、というかたちのコミュニケーションのあり方が、ここ一年半くらいの模索でようやくみえてきた感じです。

 

山崎 おっしゃるとおり、質問力いりますよね。

 

 

山崎亮氏(左)

山崎亮氏(左)

 

 

 

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