日本がバイオマスを利用するには新しいやり方が必要だ

日本人にはバイオマスは向いていない?

 

バイオマスエネルギーは、世界の最終エネルギー消費量の内の1割以上を占め、再生可能エネルギーの中でもおよそ半分のシェアを持つ点で量的に重要なエネルギー源である。将来的な再生可能エネルギー社会においても、重要なポジションを占めることは間違いない。

 

ところが以下に述べるユニークな特徴を持っている点で「バイオマスは本当に『グリーン』か?」という疑念がつきまとい、適切な利用のためには熟慮が必要である。そして、日本においても、本格的な再生可能エネルギー時代を迎えるに当たり、この問題から目を背けることができなくなってきている。

 

バイオマスの特徴の一つ目は、「電気」ばかりが注目される中で、「熱」利用をメインとするエネルギーであることである。二つ目は、樹木等の植物を燃焼させてエネルギーを得るので、やり方によっては持続可能ではなくなってしまうという点である。また、三点目は燃料の生産者・販売者が存在し、地域への経済波及効果が大きい反面、サプライチェーンの構築に時間がかかることである。

 

欧州では、上記のようなバイオマスについての的確な理解に基づき、順調にその利用を伸ばしている。他方、日本では2000年代前半から政策的に導入が推進されてきたが、必ずしも上手くいっていない[*1]。その理由を明らかにすることが本稿の目的である。

 

[*1] 例えば、2002年からは農林水産省を中心に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定され、政策的な推進が図られてきた。しかし、2011年に行われた総務省の行政評価では、これまでつぎ込まれてきた税金・事業の多くが失敗であったことが明らかになった(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/39714.html)。

 

そんな中、2012年に導入されたFIT制度が混乱に拍車をかけている。2014年4月現在、全国で50ヶ所以上(発電容量60万kW以上)のバイオマス発電の計画が立ち上がっていると言われているが[*2]、単純には喜べない状態である。

 

[*2] NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク資料

 

最大の課題は、大量に必要とされるバイオマス燃料を本当に集めることができるのか、集めることができたとしても、自然環境に悪影響を及ぼすことなく持続可能に収集することができるのかという点である。また、廃熱利用が義務付けられておらず、20数%程度の低い発電効率を容認している点も国際標準から逸脱している。そのため、国内外の森林等の生態系に対する悪影響が懸念され、これでは、バイオマスが本当にグリーンか、という疑問の声が上がりかねない。

 

このような事態が生じている背景には、バイオマスへの本質的な理解を欠き、長期的・総合的な戦略と現場のリアリティーを欠いたまま進む日本の政策と事業者の問題がある。ただし、これは日本社会でしばしば繰り返される構造的な問題であり、かなり根深い問題である。

 

現場の問題については、筆者自身も木質バイオマスの熱利用についての事例調査を行い、先進事例と呼ばれる事例の課題が共有・解決されないまま、導入が推進されている実態に衝撃を受けた[*3]。日本で現代的なバイオマスの熱利用の導入が始まって10年以上が経つが、未だに、ボイラーの価格は、公共施設への導入が中心であることもあって、高止まりし、加えてバイオマス燃料とのミスマッチ等により、燃焼時のトラブルが絶えない。このままでは、民間に自発的に広まっていく展望を描くことはできない。他方、太陽光等の他の再生可能エネルギーの分野では、構造的な問題に棹さしながら「地域主導」と呼ばれる新しいアプローチを発展させつつある[*4]。本稿では、バイオマス固有の特徴を的確に理解しつつ、同じ過ちを繰り返さないための新しいアプローチを提案したい。そのために、少し遠回りになるが、まずは2つの「そもそも論」にお付き合いいただきたい。

 

[*3] 「木質バイオマスボイラー導入・運用にかかわる実務テキスト」第8章 http://www.f-realize.co.jp/w-biomass/data/upfile/12-5.pdf

 

[*4] 古屋将太「地域の自然エネルギーを創り出す ―― case.1 小田原」 https://synodos.jp/fukkou/371

 

 

 

シノドスをサポートしてくれませんか?

 

誰でも自由にアクセスできる本当に価値ある記事を、シノドスは誠実に配信してまいります。シノドスの活動を持続的なものとするために、ぜひファンクラブ「SYNODOS SOCIAL」のパトロンをご検討ください。⇒ https://camp-fire.jp/projects/view/14015

 

無題

 

・人文・社会科学から自然科学、カルチャーまで、各界の気鋭にじっくりインタビュー
・報道等で耳にする気になるテーマをQ&A形式でやさしく解説
・研究者・専門家たちが提案する「こうすれば●●は今よりもっとよくなるはず!」

・人類の英知を伝える「知の巨人」たち
・初学者のための「学びなおしの5冊」

……etc.  

https://synodos.jp/a-synodos

1 2 3
シノドス国際社会動向研究所

vol.246 特集:「自己本位」で考える

・福田充「危機管理学」とはどんな学問か

・山本貴光「「自己本位」という漱石のエンジン」
・寺本剛「高レベル放射性廃棄物と世代間倫理」
・高田里惠子「ちゃんとアメリカの言うことを聞いたら「大学生の教育」はもっとよくなる」
・絵:齋藤直子、文:岸政彦「沼から出てきたスワンプマン」