リベンジポルノの削除と処罰――法規制の現状と新法の方向性

2月27日、「リベンジポルノへの対応策を検討する特命委員会」の初会合が開かれたということが報じられました。

 

そもそもリベンジポルノという言葉を知らない人もいるかもしれません。リベンジポルノとは、恋人や配偶者との関係が破たんした際、腹いせに、交際中に撮影したわいせつな写真・動画などを、もっぱらインターネット上に公開することを指す言葉です。

 

リベンジポルノは、昨年10月に起こった三鷹女子高生事件で一気に注目を浴びることになりました。これまでもインターネット上に元恋人のわいせつ画像を公開するという事例はありましたが、この事件が注目された理由はいくつかあると思います。

 

まず、被害者が女優の卵だったという被害者の属性が挙げられます。次に、被害者がわいせつ画像・動画を公開されただけではなく、殺害されてしまったという衝撃的な結末となってしまったという点。さらに、折しも、10月1日、ときを同じくして米国カリフォルニア州においてリベンジポルノ法が施行されたことが挙げられるでしょう。

 

 

被害の実例

 

私は弁護士としてネット中傷対策などの案件を多く手がけていることから、リベンジポルノ絡みの相談を受けることがあります。この手の相談は最近増えたという感触はなく、数年前から継続的に存在しています。

 

たとえば、出会い系サイトで知り合った人物に下着姿や半裸の写真を送信していたものの、しばらく連絡をとらないようになったところ、その写真をネット掲示板に掲載されてしまったという事例。交際を申し込まれたが断ったところ、自分の写真と裸の画像をコラージュされた画像をネット掲示板に多数投稿されたという事例。交際終了後に半裸の写真や就寝中の写真を当時やり取りしていたメール、氏名や住所もネット掲示板に投稿されたという事例などがあります。

 

相談に来られる方は20代後半から30代後半くらいの方までが多いように感じます。報道を見る限り10代の被害も相当程度ありそうですが、10代の方が弁護士に頼もうという意識を持つことは少ないと思われるため、ほとんど10代からの相談はないのではないかと想像しています。

 

 

現行法下ではどのような罪になるのか

 

日本には、米国カリフォルニア州のようなリベンジポルノ法といったものがあるわけではありません。そのため、リベンジポルノに対する法整備を進めようという議論が起こり、冒頭でも紹介したように、「リベンジポルノへの対応策を検討する特命委員会」によって議論が進められています。

 

しかし、そもそもリベンジポルノに対する法整備は本当に必要なのでしょうか? 現行法を使って取り締まることはできないのでしょうか? そこでまずは現時点においてどのような対応を取れるのかを説明したいと思います。

 

 

■わいせつ物公然陳列罪

 

まず思いつくのは、わいせつ物公然陳列罪(刑法175条1項)です。この罪には、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金という法定刑が定められています。

 

一見すると、リベンジポルノはこれで全て取り締まることができるのではないかとも思えるかもしれません。しかし、「わいせつ」といえるには、「いたずらに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義に反する」ことが必要とされ、少なくとも現在の日本においては、性器が写り込んでいるといった事情がなければ、これに当たりません。

 

リベンジポルノでは、たとえば胸の画像が公開されているとか、性交していることはうかがえるものの性器は写っていないというケースも多かろうと思われ、本罪はリベンジポルノに対し万能ではありません。

 

 

■児童買春・児童ポルノ禁止法違反

 

被写体が18歳未満の場合、その画像等が、性交等をしているなど、性欲を興奮させ又は刺激するものであれば、児童ポルノ公然陳列罪(同法7条4号)に当たります。この罪は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金と定められています。

 

一見するとわいせつ物公然陳列罪と類似しているように思われますが、この罪は児童の権利を擁護する目的の法であるため、必ずしも性器が写り込んでいなくても、性欲を興奮させ又は刺激するものであれば成立し得ます。そのため、18歳未満の者が被害者であれば、適用範囲は比較的広いといえます。

 

 

■名誉毀損罪

 

人の社会的評価の低下をもたらす事実摘示をした場合に成立する罪(刑法230条1項)であり、法定刑は3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金とされています。

 

名誉毀損というと、文書等で誹謗中傷された場合に成立するというイメージがあるかもしれませんが、画像等であっても人の社会的評価の低下をもたらせば成立する可能性があります。たとえば、性的な画像等を撮影させていたとなれば、「特殊な性癖を持っている」とか「性的にルーズ」といった形で社会的評価が低下させられたとして、名誉毀損が成立することになります。

 

 

■ストーカー規制法

 

ストーカー規制法では「その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと」(2条7号)や、「その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置くこと」(2条8号)が規制されています。

 

これは、まさにリベンジポルノの問題に当てはまるものです。しかし、この罪は6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金とされており、それほど重いものではありません。【次ページにつづく】

 

 

 

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