シノドス・トークラウンジ

2022.03.19

2022年6月15日(水)開催

財政赤字は悪なのか?――現代貨幣理論(MMT)を批判する

徳永潤二 国際通貨・金融論 ホスト:橋本努

開催日時
2022年6月15日(水)20:00~21:30
講師
徳永潤二
ホスト
橋本努
場所
Zoom【後日、アーカイブの視聴も可能です】
料金
1500円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

MMTは何が間違いなのか? 進歩主義的なマクロ経済政策の可能性

ジェラルド・A. エプシュタイン(著),徳永潤二,内藤敦之,小倉将志郎(翻訳)

昨年12月、日本の国債発行残高が1,000兆円を超えるという報道がありました。額の大きさもさることながら、日本政府の債務残高は現在、対GDP比で256.2%となっています。これは諸外国と比較してダントツに高い値です。ちなみに米国は132.8%、英国は107.1%、ドイツは70.3%、フランスは115.2%です。

日本の過剰な国債発行は、財政規律を大きく逸脱しているのではないでしょうか。長期的な視点でみると、経済的にも望ましくないように思います。しかしそれでもいまは積極的な財政政策をすすめるべきである、というのが「現代貨幣理論(モダン・マネタリー・セオリー、略してMMT)」の主張です。この考え方は、日本ではアベノミクスの一部でもあり、現在の岸田政権の方針を支えてもいます。

MMTは、ポスト・ケインズ派の貨幣理論の一つであり、例えば、ミルトン・フリードマンのような新自由主義者の理念とは真っ向から対立するものです。しかしいまや、MMTは世界各国の財政政策を導く理論として君臨しています。米国のバイデン政権も例外ではありません。私たちはこの支配的となったMMTの思想に対して、何を警戒すればよいのでしょうか。例えば日本政府の現在の財政政策に対して、どのような批判をすることができるのでしょうか。

ジェラルド・エプシュタイン著『MMTは何が間違いなのか?』(徳永潤二/内藤敦之/小倉将志郎訳、東洋経済新報社)は、こうした問題に対して、新しい進歩主義的な視点から応答しています。エプシュタインによれば、MMTは理論的に無理な想定をしています。例えば「政府と中央銀行が統合されている」という非現実的な想定です。またMMTは、これを実施すると、国際通貨の地位喪失、バブル発生、金融不安、インフレ発生をもたらす可能性があります。こうした問題を私たちはどのように評価して、具体的にどのような財政政策や金融政策を構想すべきなのでしょう。

トークラウンジでは、訳者の一人である徳永潤二先生をお招きして、MMTとこれに代わる進歩主義的なマクロ経済政策の可能性について語り合います。財政赤字は、子や孫の世代に対するいわば「ツケ」です。放っておくと、膨らんでいきます。現状でよいのでしょうか。皆様、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

徳永潤二国際通貨・金融論

1969年生まれ。獨協大学経済学部教授。マサチューセッツ大学アマースト校客員研究員(2011年度と2019年度)。専門は国際通貨・金融論。博士(経済学)。主著は、Money, Finance, and Capitalist Crisis, Routledge, 2022.(共著)。“The Endogenous Finance of Global-dollar Based Financial Fragility in the 2000s: A Minskian Approach”, Review of Keynesian Economics, 6 (1), 2018.(ジェラルド・エプシュタイン氏との共著)。『バブル・リレー』岩波書店、2009年(共著)。『アメリカ国際通貨国特権の研究』学文社、2008年など。訳書には、ジェラルド・A・エプシュタイン著『MMTは何が間違いなのか?進歩主義的なマクロ経済政策の可能性』東洋経済新報社、2020年(共訳)がある。

この執筆者の記事