シノドス・トークラウンジ

2022.05.25

2022年6月8日(水)開催

フランス政治の深層を旅する――吉田徹『居場所なき革命』を読む

吉田徹 ヨーロッパ比較政治 司会:中村督

開催日時
2022年6月8日(水)20:00~21:30
講師
吉田徹
司会
中村督
場所
Zoom【見逃しアーカイブ配信もあります】
料金
1500円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

居場所なき革命 フランス1968年とドゴール主義

吉田徹

「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」という曲があります。ムッシュかまやつの手によるこの楽曲は、語り尽くせぬ魅力をもつ名曲ですが、歌詞がまた独特です。ゴロワーズ(Gauloise)とはフランスでもっともポピュラーなたばこの銘柄のことです。原義は「ゴールの女性」、そしてゴール(Gaule、日本ではガリアと呼ばれる)はフランスの古い地名を指しますので、その意味からしても、まさに国民的なタバコだといえます。歌詞によれば、ゴロワーズを吸うと、一瞬にして、サンジェルマンやシャンゼリゼといった目利き通りに「トリップ」し、フランスの深層を味わえるのだと。

この4月に出版された吉田徹『居場所なき革命』は、「ゴーリズムを知っているかい」と問いかけてきます。ゴーリズム(gaullisme)とは、その名もシャルル・ド・ゴールの政治思想を意味する言葉です(本書ではドゴール主義といわれます)。ド・ゴールといえば、ナチス・ドイツからフランスを救い、解放後に臨時政府首班を務め、それから第五共和政を成立させ、アルジェリア戦争を終結に導いた、20世紀を代表する政治家です(ド・ゴールのゴールは「Gaulle」と綴り、上のゴール「Gaule」とはちがうのですが、発音が同じで、この辺りからも彼がいかにも国民的な政治家であるかのような印象を受けます)。しかしながら、ド・ゴールの思想自体が政治や社会のなかで実際にどのような機能を果たしたのかはあまり論じられてきませんでした。ド・ゴールあるいはゴーリズムという言葉を通じて、本書はフランス政治の深層に迫っています。

くわえて本書が重要なのは「1968年」を対象としている点です。フランス全土を揺るがしたこの出来事が生じたまさにそのとき大統領だったのがド・ゴールでした。しかし、五月革命は、多くの社会的領域で変革をもたらしたとされるものの、政治史的な位置づけはいまいち判然としないものがあります。本書は、ゴーリズムと「1968年の政治」という、難しい二つのテーマを一挙に解き明かそうとする野心的な試みの成果でもあります。

吉田徹さんといえば、最近では、『アフター・リベラル』(講談社現代新書、2020年)や『くじ引き民主主義』(光文社新書、2021年)など広くデモクラシーの理解に資するご著作を出されてきました。しかし、最初はフランソワ・ミッテラン論からキャリアを始められた政治学者です。今回は、「ゴーリズムと1968年の政治」にくわえて、フランス政治のもつ面白さについて紹介してもらいます。

「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」は、聞く者を、散々、幻想的なパリに誘ったあと、執着の意味と限界に触れることで最後は我に返らせます。やはり、吉田さんには、今日の政治や社会において、ゴーリズムが有する意味と限界についてお聞きしたいと思います。

プロフィール

吉田徹ヨーロッパ比較政治

東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学博士課程修了、博士(学術)。現在、同志社大学政策学部教授。主著として、『「野党」論』(ちくま新書・2016年)『感情の政治学』(講談社・2014 年)、『ポピュリズムを考える』(NHK 出版・2011 年)、『民意のはかり方』(編著、法律文化社・2012 年)、『ミッテラン社会党の転換』(法政大学出版局・2008 年)など。

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