シノドス・トークラウンジ

2022.07.15

2022年8月17日(水)開催

啓蒙の限界プロジェクト「第7回 気候民主主義――温暖化を阻止する市民会議の作り方」

三上直之 環境社会学、科学技術社会論 司会:橋本努

開催日時
2022年8月17日(水)20:00~21:30
講師
三上直之
司会
橋本努
場所
Zoom【後日、アーカイブでの視聴も可能です】
料金
1500円(税込)
※高校・大学・大学院生は無料です。

対象書籍

気候民主主義 次世代の政治の動かし方

三上直之

2018年にスウェーデンのグレタ・トゥーンベリさんが「気候変動のための学校ストライキ」を始めたのは、彼女が15歳のときでした。その翌年から、ヨーロッパの国や自治体では、「気候市民会議」と呼ばれるミニ・パブリクスが盛んに開かれるようになっています。くじ引きによって、できるだけ多様な市民に集まっていただき、議論を通じて、最終的に温暖化対策に必要な政策を提案します。この試みは、私たちの代表制民主主義を補う試みとして、あるいはまた、代表制民主主義よりもうまく機能する「直接制民主主義」の試みとして、いま政治的に注目されています。

日本でも2020年に、「気候市民会議さっぽろ2020」が開催されました。この会議は日本で初めての気候市民会議の取り組みとして、大いに注目を集めました。シノドス・トークラウンジの「啓蒙の限界」では、この企画を担った運営者の一人である三上直之さんをお招きして、氏の近著『気候民主主義――次世代の政治の動かし方』(岩波書店、2022年5月刊)をめぐって議論します。三上さんはこれまで、例えばゲノム編集作物をめぐる市民の話し合いなど、環境と市民社会をめぐるフィールドワーク研究をご専門とされてきました。本書では、ヨーロッパでの気候市民会議の動向を詳しく紹介し、また札幌での市民会議の運営方法とその成果について伝えています。

例えばイギリス政府は2019年に、国全体の温室効果ガス排出量を2050年までに実質ゼロにするという目標が法制化しました。これを受けてイギリスでは「気候市民会議」が開催され、約100人の市民が議論を繰り返して、130項目の提案書を政府に提出しました。ところが政府からの応答は、この中の30%の提案に対してのみだったそうです。政府は例えば、食肉・乳製品の消費削減や、生産から消費・廃棄に至るまでに排出される温室効果ガス量の表示(カーボンラベルの導入)については、何も応じませんでした。

このように市民会議を開催しても、その提案がそのまま政府の政策に採用されるわけではありません。むしろ否定される部分の方が多いでしょう。それでもこうした「くじ引きによる市民会議」をたくさん開催して、世論を動かしていく道はあるかるしもれません。

ブラジルのポルトアレグレでは、1989年に「参加型予算」と呼ばれる制度を導入しました。地域における直接制民主主義の仕組みを制度化して、これを代表制民主主義のなかに取り入れる仕組みです。このような取り組みは、いま世界中の国や地域に広がっている、と三上さんは指摘します。では市民会議を活かして政治を変えるには、どんな知恵が必要でしょう。また地球温暖化を阻止するためには、私たちにはどんなライフスタイルが必要で、どんな政策提言が必要なのでしょう。例えば札幌市の二酸化炭素排出量の37%は、家庭部門によるものです。これを2050年までにゼロにするには、どうすればいいのでしょうか。途方に暮れる問題ではありますが、トークラウンジでは、三上さんといっしょに議論を深めたいと思います。みなさま、どうぞよろしくご参加ください。

プロフィール

三上直之環境社会学、科学技術社会論

北海道大学高等教育推進機構准教授、同大学大学院理学院准教授。東京大学文学部卒、同大学大学院新領域創成科学研究科博士課程修了。博士(環境学)。北海道大学CoSTEP特任准教授などを経て、2008年から現職。専門は環境社会学、科学技術社会論。無作為選出型の市民会議(ミニ・パブリックス)を、環境政策や新たな科学技術の問題に応用する可能性を研究している。2020年には代表を務める研究プロジェクトの一環として、札幌市などとともに国内初の「気候市民会議」を開いた。著書に『気候民主主義―次世代の政治の動かし方』(2022年、岩波書店)、『リスク社会における市民参加』(2021年、放送大学教育振興会、共編著)など。

この執筆者の記事