シノドス・トークラウンジ

2023.02.22

2023年3月22日(水)開催

【トーク】世界最先端の哲学研究で読み解く――身近な悩みから世の中の不思議まで

長門裕介+遠藤進平 ホスト:吉良貴之

開催日時
2023年3月22日(水)20:00~21:30
講師
長門裕介+遠藤進平
ホスト
吉良貴之
場所
Zoom【アーカイブ動画での視聴も可能です】
料金
1980円(税込)

トーク内容(アーカイブ動画での視聴も可能です)

『世界最先端の研究が教える すごい哲学』は、表紙をパッと見た感じ、やけに軽そうです。哲学といいつつ、実際はよくある安易な自己啓発本とかビジネス本ではないかと思われるかもしれません。中身を見てみても、

「プレーオフの優勝決定戦に納得がいかないのはなぜか?」
「小説を読むことで人はやさしくなれるのか?」
「不良が更生したことを称賛してはいけないのか?」
「質問をしただけなのに怒られるのはなぜか?」
「幽霊は存在するのか?」

といった変な「問い」がたくさん並んでいます。面白そうではありますが、ちゃんとした「哲学」の雰囲気とはどうも違います。哲学というのはもっと、カント先生やヘーゲル先生はこれこれについてこんなふうに論じているとかいうのであって、超越論的統覚!とかそういうありがたい言葉が並んでいるのではないでしょうか。

とはいっても本書は、面白げな問いをゆるふわに論じるようなものではまったくありません。本書で論じられているのは、本物の哲学です。それもタイトル通り「世界最先端の研究」です。それぞれの記事に参考文献がつけられていますが、そのほとんどはこの数年以内に哲学の一流ジャーナルに載ったものです。その内容を、いま紹介したような身近な問いを考えるための素材として見事に使っています。カント先生も出てくるんですが、そこでの問いは「企業がリモートワークを導入しないことは悪いことなのか?」だったりします。

哲学者というのは日頃からこれでもかとむちゃくちゃなことを考えていますが、それを身近な問題に当てはめるとこんなに面白いことが言える、ということを本書は示しています。なかにはけっこうな極論もありますが、いやいやそれはちょっとどうか、と反論してみたくなったら、あなたはすでにこの本にどっぷりはまっているといえます。

最先端の研究をこんなふうに身近な話題にあてはめるためには、ふだんから膨大な量の研究をチェックして、何か面白いことに使えないかな?とアンテナを張っていないといけません。この『すごい哲学』には25人の若手の哲学研究者が執筆していますが、みなさん日本だけでなく世界レベルで活躍している(あるいは、これから確実に活躍する!)方々だからこそ、これだけの本ができたのだといえるでしょう。

トークイベントでは、執筆者から長門裕介さん、遠藤進平さんをお呼びし、本書の面白いところをたくさん紹介してもらいます。それからやはり、こういうまったく新しいタイプの哲学書を出すには、けっこうな勇気も必要だったことでしょう。そこらへんの思いもぜひ語ってもらいたいと思います。

プロフィール

長門裕介倫理学・社会哲学・新規技術のELSI

1987年東京生まれ。大阪大学社会技術共創研究センター特任助教。慶應義塾大学大学院文学研究科を単位取得退学後、高崎経済大学非常勤講師などを経て現職。倫理学に関係することならなんでも興味がありますが、あまり他のひとがやらなそうなことや日常的な(Twitterで話題になるような)話題から議論を始めるのが好きです。最近は新規技術が社会実装される際に生じる倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues、通称ELSI)の探求と実践に取り組んでいます。最近は転売の倫理学(なにがそもそも問題視されているのか?)や自主規制(とは何か?どうあるべきか?)といった問題にも関心があります。

この執筆者の記事

遠藤進平哲学的論理学・形而上学・言語の哲学・哲学方法論

三重県津市に生まれ、おおむね愛知県名古屋市で育った。慶應義塾大学文学部人文社会学科哲学専攻を卒業し、アムステルダム大学科学部論理学修士課程(Master of Logic)修了した。2023年3月時点では、一橋大学社会学研究科博士後期課程およびThe University of SydneyのPhDプログラム(Philosophy)に所属している。曖昧性や様相といった伝統的な哲学のトピックから、冗談や脅迫、挨拶のようなコミュニケーションの(ときに哲学分野では非標準的なありかたとして放置されがちな)諸相に関心がある。業績など:https://researchmap.jp/shimpei_endo

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